キャッシュレス率は上昇するが、政府の思惑通りにいかない理由
こんにちは、Taikiです。
現在QRコード決済の種類は増えていますが、日本のキャッシュレス率はまだ20%程度です。
そもそもキャッシュレスを普及させたい理由は何でしょうか。またクレカや電子マネーなど既存のサービスがありながら、QRコード決済が出てきたのはどうしてでしょうか。そして、キャッシュレス率が90%の韓国と日本とでは何が違うのでしょうか?
今回はそれらを考察し、キャッシュレスの行く末に迫りたいと思います。
目次はこちらになります。
キャッシュレスを普及させたい理由
政府の狙い
政府にとって、キャッシュレス普及の狙いとは何でしょうか。それは主に安全性とコスト削減、財源の確保にあります。
- 安全性の強化:強盗や偽札、脱税やマネーロンダリング防止
- コスト削減:ATMや現金輸送、現金の鋳造コスト削減
- 財源確保:脱税防止とインバウンド需要拡大に伴う税収アップ
近い将来、国内の景気は冬の時代に突入すると予想していますが、その前にキャッシュレスを普及させたいのが政府の本音です。キャッシュレスを急ぎたいインバウンド需要の具体例はこちらになります。
今後日本は少子高齢化に伴い、雇用や消費の面で、他国への依存が強くなりますが、外国人の受け入れを円滑にするためには、キャッシュレスを拡充することが求められます。
例えば、中国人の殆どはQRコード決済を利用し、韓国人や欧米人もクレカを利用しています。中国の2017年のモバイル決済金額は約3450兆円、同国の主要なキャッシュレス決済サービスであるAlipayは9億人の利用者がいます。この巨大市場のインバウンド需要は無視できません。
また、外国人労働者もデジタルマネーで給与を支払ってもらえれば、帰国後もそのまま使用でき日本の往来も活発になることが期待されます。
https://www.dir.co.jp/report/asia/asian_insight/20181228_020557.pdf
企業の狙い
では、キャッシュレスサービスを提供する企業はなぜ普及させたいのでしょうか。それは主に収入源の確保や情報収集、ノウハウの確立にあります。
- ストック収入:入金手数料、決済手数料
- 情報の収集:消費者の属性や行動パターン
- ノウハウ確立:キャッシュレス技術の確立
企業として、安定した収入はもちろんのこと、情報の収集やノウハウを得ることで、新しいビジネスチャンスが生まれます。
消費者の情報とキャッシュレスという決済方法、更に5Gなどの技術を組み合わせれば、今までにないビジネスが形成されるでしょう。楽天やソフトバンク、au、Docomoの通信会社がもれなくキャッシュレスサービスを展開する理由もここにあります。現在、各社はポーカーのように、強い役をだすために有利な手札を集めています。
では、クレカや電子マネーなど既存のサービスがありながら、QRコード決済が出てきたのはどうしてでしょうか。
まずは、経営者がキャッシュレス決済を導入していない理由をみてみましょう。
コスト面が特に目立ちますが、資本が少ない中小企業にとって、コストの増加や入金サイクルが長いことは財務的に良くありません。国内にある企業の大半は中小企業ですので、今後キャッシュレス率を向上させていくためには、中小企業に普及していくことが重要になります。
そこで、そのデメリットをカバーできるサービスを提供することで、登録店舗や利用者を囲みこみたいため、各社からQRコード決済がでてきました。種類は豊富にありますが、各社によってさまざまなメリットがあります。
更に経産省も、ボトルネックである中小企業を対象にキャッシュレス導入のための補助金政策を打ち出しています。
韓国でキャッシュレスが急速に広がった理由
少し話を変えて、キャッシュレス率が90%を誇る韓国の背景について、説明しましょう。
韓国では、1997年の東南アジア通貨危機をきっかけに、消費活性化と脱税を目的に、キャッシュレス化を国策としました。具体的に、クレジットカード利用額の一部所得控除や宝くじ権利の付与、店舗でのクレカ取り扱いを義務化し、急速に国内で広がりを見せました。
日本でも同じことをすれば普及すると思いますが、日本政府はそれを良しとしないでしょう。日本は強硬政策を嫌う傾向にあります。政策を強行し、店舗を廃業に追い込んだり、関係協会の反発を買えば、野党の攻撃材料となり与党の立場が危うくなります。以前も記事にしましたが、UberCarなど白タクを解禁しないのもそのためです。
今後のキャッシュレスの行く末
今後日本はキャッシュレス率を40%まで引き上げることはできるでのしょうか。
結論をいうと、目標である2025年までに達成できるかは不明ですが、いつかは達成できるでしょう。しかし先にあげた政府の狙いは中々思い通りにいきません。
確かに若年層にはキャッシュレスが広まり、徐々に利用率は向上していくでしょう。しかし政府の掲げる狙いの中で、特に重要なポイントは財源の確保です。すなわち、企業や個人のキャッシュフローの透明化を図り、脱税を防止し、税収をアップすることです。そのための重要課題は、割合の大きい中小企業と高齢者世帯にキャッシュレスを普及させることですが、それがうまくいきません。なぜでしょうか。
企業にとって、キャッシュレスは負担以外の何物でもありません。新たなキャッシュレスサービスを導入しても現金取引がなくなるわけではありません。ただ負担が増えるだけです。それはドン・キホーテの例をみても分かります。
また、中小企業にとって、キャッシュレスにすることは不利に働くことが多いでしょう。資本が少ない企業にとって、手元にキャッシュがないことは死活問題だからです。いざというときに、運転資金が途絶えると倒産の憂き目にあいます。
次に、資産を多く持つ高齢者はなぜキャッシュレスに消極的なのでしょうか。一番の理由はよく分からないからです。しかも日本ではキャッシュレスの種類が多すぎて、更によく分からなくなっています。ジャムの法則というものがありますが、、種類が多すぎると、逆に選択する意欲を失ってしまうのです。
また、高齢者はなぜタンス預金を好むのでしょうか。その答えは、高齢者が心配していることを想像するとよく分かります。一番の理由は健康です。高齢者はいつ健康を損なうか分かりません。認知症や痴呆などの診断が下りた場合、その銀行口座は凍結され引き出すことができなくなります。債務整理、相続、不正利用が凍結の主たる目的ですが、解除するには弁護士に依頼するなど煩雑な手続きが必要です。こういった事態に備え、タンス預金者は今も増えています。その結果、オレオレ詐欺にだまし取られる危険性が高くなり、政府の狙いの一つである、安全性の確保も難しくなります。
出典:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39300560S8A221C1CC0000/
こういった事情により、キャッシュレスは、全体の核となる中小企業や高齢者に遅々として普及が進まず、政府の目論見は中々思い通りにはいかないと考えます。
まとめ
政府にとって、キャッシュレスを最も普及させたい中小企業や高齢者は、根強い銀行不信や将来の不安のため、今後も手元から現金を離すことはないでしょう。そう考えると、政府の掲げる利用率40%の達成はまだまだ先になるのかもしれません。
【応用編】自己資本比率と収益性が必ずしも連動しない理由
こんにちは、Taikiです。
前回は、決算書を読み解くために抑えるべきポイントを紹介しました。
今回は、自己資本比率が収益性と必ずしも連動しない理由に迫ります。企業の特性や財務体質を理解する上で大事な視点かなと思いましたので、ぜひご覧ください。
あくまで個人の見解ですので、ご承知おきください。
目次はこちらになります。
ある業種の自己資本比率が高い理由
前回の記事で、自己資本比率の定義をこう設定しました。
自己資本比率:返済不要なおカネの比率
では自己資本比率の高い業種とは何でしょうか。
業種の平均をみると、医薬品、鉱業、情報・通信、精密機器、化学などが高めです。特に自己資本比率の高いアンジェスという医薬品会社をみてみましょう。同社の業績を見ると、赤字が続きキャッシュフローをみても典型的な業績不振型です。
こちらは同社の損益計算書となります。
出典:https://www.anges.co.jp/ir/ir_library/_pdf/earning18_4q_i4pb.pdf
にも関わらず、なぜ同社は自己資本比率が高いのでしょうか。その理由は、新株発行予約で資金調達を行い、自己資本が潤沢にあるからです。株主からの資金が集まれば自ずと自己資本比率が上昇します。
では、業績不振な企業になぜ投資家が集まるのでしょうか。アンジェスは、次世代の医療として注目を集める遺伝子治療薬の研究開発を専門しています。医療は景気に左右されず長期的に安定を見込める市場です。そして、国内では少子高齢化、新興国でも経済の発展に伴い医療市場が拡大しています。新薬が発表されれば、国内だけでなく海外にも水平展開が期待され、そのロイヤルティ収入は莫大なものとなり、株価にも影響します。投資家はそれを期待しています。
加えて、アンジェスは主力のHGF遺伝子治療薬が、厚労省に条件付きで承認されました。もし正式に承認されれば国内で初の遺伝子治療になります。そして、HGF遺伝子治療薬とは、三大生活習慣病である糖尿病の治療にも効果が期待されています。
一方で、株主資本に頼らなくても、そもそも負債が少なければ、自己資本比率は高くなります。最近では、キーエンスやローム、村田製作所など特定の分野で高いシェアを持つ企業が上位に並びます。
株主から圧倒的な支持を得る企業、自力でキャッシュを稼ぐ企業、どちらも自社の強みを軸に自己資本比率を高めていることが分かります。
ある業種の自己資本比率が低い理由
では逆に自己資本比率の低い企業を見てましょう。銀行、電気・ガス、海運、保険などがあります。例えば、銀行はなぜ自己資本比率が低いのでしょうか。 銀行の企業活動をまとめてみると理解しやすいと思います。
- 資金調達:顧客に預金してもらう
- 投資活動:預貯金を原資にして融資する
- 営業活動:融資から金利を得る
銀行の投資活動には巨額の原資が必要です。その原資は顧客の預貯金であり、預貯金は銀行にとって負債となるため、預貯金が多いと自己資本比率が下がります。
バブルが崩壊し、北海道拓殖銀行や山一証券が破たんした結果、銀行業に必要な自己資本比率の基準が更に厳しくなり、貸し渋りが目立つようになりました。少し話は逸れますが、日本が貸し渋りの時代にアメリカではIT革命がおき、日米間で設備投資やイノベーションの差が生まれ、GAFA(Google, Apple, Facebook、Amazon)のような巨大IT企業が育つ下地ができたとも言われます。
さて、以前よりも融資が難しくなった銀行は、どういう行動を取るのでしょうか。例えばこんな行動を取るのではないでしょうか。
- 冒険しない:巨額の融資を控え、信用度の低い企業には貸し渋る
- 投資してもらう:預金ではなく投資商品にお金を使ってもらう
上記1の「冒険しない」の反面、企業間の出資が活発になりました。例えば、ソフトバンクは、ハイリスクなベンチャー企業やスタートアップ企業に積極投資を続けています。
そして、ソフトバンクの孫氏が、まだスタッフ10人、利益0の会社に20億円を出資しIPOで5兆円に大化けしたという例もありますが、それが中国EC大手のアリババだったことはあまりにも有名です。
上記2の理由はシンプルです。投資は融資ほど与信調査が不要で利益率も高いからです。三菱UFJフィナンシャル・グループ社の損益計算書をみると、役務取引等収益が貸出金利息の次に大きいため、銀行の大きな収入源になっていることが分かります。銀行の方が投資商品を勧めてくる理由もここにあるのではないでしょうか。
出典:https://www.mufg.jp/dam/ir/fs/2018/pdf/summary1812_ja.pdf
まとめ
話をまとめると、自己資本比率の決定要因として、大きく2つのパターンがあることがわかりました。
上記1は、先述したバイオ医薬品や銀行などがその例です。2は、自社の強みと特定分野で高いシェアをもつ企業、又はどこかの振袖レンタル会社のように債務超過のため突然仕事を放棄する企業などです。
自己資本比率が収益と必ずしも連動しない理由は、上記1のような企業が該当します。そして、自己資本比率をみると、銀行、電気・ガス、保険など社会にとって必要不可欠なサービスは、自転車操業にも似た、他人資本を回転させて事業が成り立っていることも垣間見えるのではないでしょうか。
【基本編】決算書を読み解くための判断軸
こんにちは、Taikiです。
株主や投資家はなぜ決算書を見るのでしょうか。利益を得るためだとすると、投資先の未来を予測しなければいけません。そのためには判断材料となる情報を集めますが、その一つが決算書となります。
では何を軸に決算書を見るのでしょうか。今回はこの点に迫りたいと思います。決算書の理解を深める一助にして頂ければ幸いです。
あくまで個人の見解ですので、ご承知おきください。
目次はこちらになります。
※長文で読みにくい方は、太字を中心に読み進めて頂くと良いと思います。計算式も掲載していますが、その求め方はさほど重要ではありません。
財務三表の役割
決算書の中でも最も重要となるのが、こちらの「財務三表」になります。
財務三表は、企業活動の流れと関連付けるとイメージしやすくなります。
まず企業は資金調達をした後に、投資活動をして建物や設備を購入し、営業活動をして売上や利益を出します。そして、その結果は財務三表に計上されます。
企業の活動と財務三表の関係が分かると、各々の役割も見えてきます。
貸借対照表について
貸借対照表には、右に資金調達で得たおカネが計上され、左に投資活動で購入したビルや設備が計上されます。つまり、どうやってお金を集めて何に使ったかを確認できます。
企業を評価する上で、お金をどう集めて何に使ったかを知ることが、なぜ重要なのでしょうか。
それは健全な財務体質かどうかを確認することができるからです。例えば、銀行の融資や社債の発行で集めたお金か、株主から集めたお金かで外部への財務依存度が分かります。また、お金の使い道が預金や有価証券などの流動資産か、工場や設備などの固定資産かで借金の返済能力を計ることができます。
損益計算書について
次に、損益計算書ですが、営業活動で発生した利益や費用が計上されるため、どれだけもうかったか、を確認することができます。
「どれだけもうかったか」では少し曖昧なので、具体的に説明します。「もうかった」の指標は利益で表すことができます。ここで注視すべきは、本業の利益となる「営業利益」になります。この販管費は、モノやサービスを売るために必要な経費や運営管理にかかる費用です。
ちなみに「経常利益」には、株式の配当金や不動産収入、借金の支払利息が含まれるため、投資や土地転がしに熱心だったバブル期はこの利益が重視されていました。
キャッシュ・フロー計算書について
最後に、キャッシュ・フロー計算書ですが、資金調達や投資活動、販売活動で発生したおカネの出入りが計上されるため、キャッシュ(現金)の増減を確認することができます。
企業を評価する上で、キャッシュの増減を知ることがなぜ重要なのでしょうか。
それは、「おカネ」の実態を知ることができるからです。例えば損益計算書は、実際にお金をもらっていない「つけ払い」でも計上することができますが、キャッシュ・フロー計算書には計上できません。そうやってお金の出入りをシビアにチェックできるため、損益計算書の弱点を補うことが可能です。
こちらは、企業のライフサイクルとキャッシュフローを表した表になりますが、キャッシュフローの状態で、会社の状況を知ることができます。
出典:キャッシュフローに着目する - 給与計算アウトソーシング・委託、経理事務代行、アメリカでの企業設立のための業務委託ならPASONA N A
①本業がまだ軌道に乗らず借金で資金繰りしている
②本業でキャッシュを生み、更に資金調達して積極的に投資している
③本業でキャッシュを生み、更に投資を行い借金も返済している
④過当競争下にいる
⑤本業が不振で、資産売却や謝金(財務が+)で資金繰りをしている
企業を評価するための基本的な判断軸
ある企業が将来生き残れるか、をどうやって判断できるでしょうか。私はこちらのポイントを軸に判断することにしています。
- 財務:競争下で経営体力を維持できる安定した財務基盤であること
- 業績:特定分野で競争優位性を持ち、実績に裏打ちされていること
- 戦略:自社の強みを軸足して市場ニーズに応えることができること
財務は、いかに外部に依存しない健全な財務体質ができているか、をみています。業績は、自社の強みを生かし、いかに少ない費用や資本で効率的にもうけることができるか、です。最後に戦略は、自社の強みを軸にして市場の構造に逆らわず事業を行えるか、がポイントになります。
企業を評価するための具体的な指標
上記の「財務」「業績」「戦略」を決算書の指標で置き換えてみましょう。
財務を表す指標
まず財務ですが、こちらの指標で財務の良し悪しを判断することができます。
自己資本比率について
自己資本比率は、返済不要なおカネの比率を表しています。貸借対照表にある「純資産合計」と「負債純資産合計」から求めることができます。
自己資本比率(%) = 純資産合計(=自己資本)÷ 負債純資産合計(=総資本)
自己資本比率をみることで、いかに外部に依存しない財務体質か、を確認することができます。
流動比率について
流動比率は、借金を返済する能力を表しています。貸借対照表にある「流動資産合計」と「流動負債合計」から求めることができます。
流動資産とは1年以内に現金化できる物、流動負債とは1年以内に返済する物を表しており、借金がすぐ返せるかどうか、を確認することができます。
無形固定資産比率について
企業がどれだけ買収に積極的かを表しています。貸借対照表にある「のれん及び無形資産(無形固定資産」と「資産合計」から求めることができます。
無形固定資産比率(%) = のれん及び無形資産(無形固定資産)÷ 資産合計(純資産)
この指標からわかることは、買収先の経営状況が悪化した際の影響がどれくらい大きいか、です。買収された企業の業績悪化などにより、減損が特別損失あるいは営業損失として計上されます。
「のれん」とは買収先企業の信用力やブランドといった、目には見えない価値に充てられた買収価格のことを言います。M&Aをした年には、一気に残高が膨らみます。近年では、大型買収を繰り返したソフトバンクの「のれん」が4倍以上も増し、以前は東芝や日本郵政が巨額ののれん減損を出しました。
業績を表す指標
次に業績ですが、こちらの指標で業績の良し悪しを判断することができます。
原価率について
原価率とは売上高に占める原価の割合です。損益計算書にある「売上原価」と「売上高」から求めることができます。
原価率(%) = 売上原価 ÷ 売上高
原価率の重要度は業種によって異なりますが、例えば、飲食店や食品業界にとっては、原価率を下げることがとても重要です。
営業利益率について
営業利益率は、本業でどれだけもうけたか、を表す指標です。損益計算書にある、「営業利益」と「売上高」から求めることができます。
営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 売上高
営業利益率で分かることは、原価だけでなく人件費や販売管理費も考慮されているため、より洗練された「もうける力」を知ることができます。
ROEやROAについて
ROAは、Return On Asset の略で、総資産利益率といい、全ての資産を使ってどれだけもうけたか、が分かります。分母は貸借対照表の「総資産」、分子は損益計算書の「当期純利益」を使い、求めることができます。
一方、ROEは、Return On Equityの略で、自己資本利益率といい、株主のおカネを使ってどれだけもうけたか、が分かります。こちらも分母は貸借対照表の「自己資本」、分子は損益計算書の「当期純利益」を使い、求めることができます。
ROAとROEは、どちらも経営効率がいかに高いかを表す指標ですが、総合的に判断すると、ROAを指標にした方が良いでしょう。なぜなら、ROEは、株主資本(=自己資本)で純利益を割った値になるため、主に投資家が使う指標になります。一方、ROAは、負債を含めた総資産で割った値なので、全体を評価した結果となり、経営者や投資家が使う指標になります。
また負債が大きく株主資本が小さい場合、ROEの数値は高くなるが、自己資本比率は低くなるという現象が生じます。下の表では、A社よりB社のROEが高いですが、負債が大きい分、B社の自己資本比率が低いという結果になります。一方、両社のROAは同じ結果になります。
売上高営業CF比率について
この指標は、企業がどれくらい現金を稼いでいるか、を表しています。分母は、損益計算書の「売上高」を、分子はキャッシュ・フロー計算書の「営業CF」を使用して求めます。
売上高営業CF比率(%) = 営業CF ÷ 売上高(=営業収益)
この指標で分かることは、その企業がどれだけ現金商売か、です。例えば、自動車や不動産など大きな買い物をする時に、買い手は即金で支払いができないとします。銀行でローンを組み少しずつ支払うことにします。そうすると、完済までに時間がかかります。その結果、融資した銀行の売上高営業キャッシュフロー比率は、どうしても低くなってしまいます。
戦略を評価する指標について
最後に戦略ですが、残念ながら、これを評価する指標はありませんが、相対的に評価することは可能です。その評価方法には、内部要因と外部要因に分かれます。
内部要因
内部要因とは、自社の強みを軸足にしているか、ということです。この点は、過去の記事をみて頂ければ幸いです。まさにRIZAPとワークマンの業績の差は、自社の強みを軸足にしているか、の違いでした。
外部要因
外部要因とは市場ニーズの変化を意味しています。
例を挙げると、自動ブレーキの技術が進むと事故率が低くなります。その結果、困るのは損害保険会社です。実際に、自動ブレーキ割引が開始され、搭載車は保険料が割安になります。損保ジャパンが介護事業を始めた理由も、損害保険の成長が今後見込めないと判断したからだといいます。
また消費税増税で外食産業の冷え込みが予想されます。スーパーの食品や弁当持ち帰りは軽減税率の対象ですが、外食は増税の対象となり、割高感が浮き彫りになるからです。こちらについても、過去の記事に掲載しています。
そして、環境配慮のため、すかいらーくグループやマクドナルド、スターバックスは、プラスチック製ストローの廃止を決めました。その決定を受けて、日本製紙やカネカは代替サービスを開発しています。プラスチック製品の射出成型事業が縮小し、紙による代替サービスの成長が予想されます。
こういった外部環境の変化に対応した戦略を打てる事が、その企業が生き残れるかを判断するポイントになります。
まとめ
最後に、これまでに挙げた、企業を評価するポイントを表にまとめました。
繰り返しになりますが、財務は、いかに外部に依存しない健全な財務体質ができているか、をみています。業績は、自社の強みを生かし、いかに少ない費用や資本で効率的にもうけることができるか、です。最後に戦略は、自社の強みを軸にして市場の構造に逆らわず事業を行えるか、がポイントになります。
次回はケーススタディとして、企業や業界によって見るべき指標をご紹介したいと思います。長文にも関わらず、最後まで読んで頂きありがとうございました。
高齢者が運転を続ける理由と事故を減らすための施策
こんにちは、Taikiです。
池袋の悲惨な事故を受けて、高齢者ドライバーの是非が問われています。
加齢により動体視力や判断力が衰え、運転に影響が出ることは周知の事実です。
にも関わらず、なぜ高齢者はハンドルを握り続けるのでしょうか。そして、高齢者の事故を防ぐためにはどうしたら良いでしょうか。今回は、その2点を考察します。
あくまで個人の見解ですので、ご承知おきください。
目次はこちらになります。
なぜ高齢者は運転を続けるのか
なぜ危険を承知で高齢者は運転するのでしょうか?まずはこの理由に迫りたいと思います。
身体能力の衰え
加齢に伴い、動体視力や判断力もそうですが、筋力や足腰など身体的にも衰えが見えます。また身体的な衰えは日常生活に直接影響します。
高齢者が運転免許を返納しない理由をみると、買い物や旅行、荷物の運搬など身体への負担が大きいものが中心にあります。
出典:https://www.google.co.jp/amp/s/www.sankeibiz.jp/business/amp/180613/prl1806131002013-a.htm
ライフステージの変化
定年を迎えた人は次に何をしたいと思いますか?
首都圏在住の30歳~69歳の男女を対象としたアンケートを見てみると、定年退職後にやりたいことのトップは「国内旅行」です。おそらく車の利用機会も増えるでしょう。自由な時間が多い分、乗車率も高いはずです。
経済的な理由
続いて年齢別の個人貯蓄残高をみると、やはり60歳以上であるシニア世代の貯蓄高が多いことが分かります。この財力が自動車の維持や車の買い換えを可能にしています。
出典:https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/urgency/report181213.pdf
一方で経済的に不安を抱える高齢者も、仕事のために車を運転する傾向にあります。配送用の軽トラックやバンを運転する高齢ドライバーをよく目にしますが、その背景にあるのは運送業界の人手不足です。
運送業界は、宅配取扱数の増加や高い離職率のため、慢性的な人手不足です。そのため、シニア世代を積極的に採用しています。また求職する高齢者にとっても仕事を選べる立場ではないため、運送会社への就職を決めます。今後も運送業で働く高齢ドライバーは増えていくでしょう。
なぜ高齢者の事故が問題なのか
近年、報道により高齢者の事故がよく目につきます。
警察庁の統計をみると、実際にはシニアより若い世代の事故件数が多めです。
出典:https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/H29zennjiko.pdf
しかし事故の深刻さは高齢者が上です。
こちらのグラフを見ると、確かに10代後半から20代前半の事故数は多いですが、75歳以上の死亡事故数は群を抜いています。
事故を減らすための施策
どうすれば高齢ドライバーの事故を減らすことができるのでしょうか。
内閣府の統計をみると、今後75歳以上の運転免許証保有者は増加の一途をたどっています。したがって、高齢者の事故を減らすための対策は急務となります。
出典:https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h29kou_haku/gaiyo/features/feature01.html
2014年の改正道路交通法により、75歳以上の免許返納が進められています。免許返納は事故率低下につながりますが、先に紹介した高齢者の運転事情を考慮すると、中々進まないでしょう。また返納後は、交通手段の代替サービスを提供する工夫も必要になります。
安全運転サポート車(サポカー)の普及促進
仕事など経済的な理由で運転免許を返納できない高齢者も多いでしょう。更に、過疎地域で生活する人にとっては免許返納は死活問題です。
こういった理由を考えると、エコカー減税のようなサポカー減税を早期に開始し、サポカーへの乗り換えを推進することが急務になります。自動ブレーキ割引は既に始まっていますが、認知度の低さや金銭的メリットが不十分です。メリットを感じることができなければ、高齢ドライバーはいつまでも動かないでしょう。
交通手段の代替サービス
免許返納した後、「生活の足」を奪われた高齢者はどう生活すれば良いでしょうか。
免許返納を促進するためには、交通手段の代替サービスを提供するが必要です。いま議題にあるアイデアは、コミュニティーバスや乗り合いタクシー、公共交通機関の割引です。しかし共通の課題は、路線や運行時刻が決まっているため、自由度が低いことです。今後「生活の足」をなくした高齢者はさらに増加し、公共サービスで支えることは難しくなります。
以上を踏まえると、国はライドシェア解禁に動いても良いと思います。
ではライドシェアとタクシーは何が違うのでしょうか。米国のUberの例をみるとタクシーより料金が圧倒的に低いです。また一般人も配車サービスを行えるため、地域全体の配車カバー率が高まり、高齢者にとっても行動範囲が広がります。
気になるのは、運転者の「質」ですが、Uberのようにレビュー機能を付けると底上げが期待できます。むしろ、今のタクシー運転手の「質」にこうも個人差がある理由は、フィードバックや評価体制が不十分だからではないでしょうか。
現在、政府も「白タク営業」の規制緩和を進めているようですが、残念ながらタクシービジネスの延長でしかありません。
まとめ
ライフスタイルの変化や身体能力の衰え、経済的な理由により、高齢ドライバーは今後も増え続けるでしょう。
免許返納だけでなく、サポカー普及促進やライドシェア解禁など今後は高齢ドライバーをサポートする多角的な施策が求められます。
メルカリが福岡で割安なシェアサイクルを運営する理由
出典:https://fukuoka.mypl.net/chuo-hakata/mp/info_chuo-fukuoka/?sid=62533
こんにちは、Taikiです。
「merchari」(以下メルチャリ)というサービスをご存知でしょうか。メルカリが始めたシェアサイクルサービスです。
2018年2月頃から福岡市で試験的に開始し、利用者も増え、自転車の台数や専用ポート数も増加しています。
シェアサイクルやカーシェアをはじめとした、シェアリングエコノミーは今後も伸びていくでしょう。こちらは今後予想されるシェアリングエコノミー市場の推移になります。
出典:国内シェアリングエコノミー、2022年度に1386億円…最大はカーシェア、伸び率はシェアサイクル 矢野経済研究所が予測 | レスポンス(Response.jp)
ちなみに、以前紹介したUber Eatsもデリバリーフードのシェアリングサービスになります。
さて、メルチャリに話は戻りますが、気になるのは料金です。メルチャリは1分4円で借りることができます。自転車レンタルの相場からすると、1分4円は安いでしょう。ドコモのバイクシェアが30分以内の利用で150円になります。
メルチャリはなぜこの料金でサービスを提供しているのでしょうか。また福岡でサービスを開始した理由は何でしょうか。今回はその理由に迫ります。
あくまで個人の見解ですので、ご承知おきください。
目次はこちらになります。
メルチャリの料金設定は採算度外視?
メルチャリの料金設定がどれだけ安いかを考察するために、メルチャリの売上を試算したいと思います。前提となる条件として、1台当たりの年間利用回数、1台当たりの平均利用時間を仮設定します。
上記条件を前提とすると、メルチャリの年間推定売上はこちらになります。
2,000台 x 671回 x 12分 x 4円 = 64,416,000円 (約6千万円)
一方、同じ条件で見たドコモのバイクシェアの年間推定売上になります。
2,000台 x 671回 x 150円 = 201,300,000円(約2億円)
自転車の仕入や製造、販売活動費や人件費などは不明ですが、同じ条件で比較しても、売上金額はドコモの3分の1以下になります。
儲けが少なくてもメルチャリを運営したい理由
では、なぜメルカリはシェアサイクルを始めたのでしょうか?
シェアサイクルは、本業のフリマビジネスとは異業種です。
その点について、ソウゾウ代表の松本氏はこう語ります。
「メルカリでは買って所有する世界から、買って売る世界に変えたいと考えている。これはあらゆるものが循環して無駄がなくなるということ。メルチャリでは、自転車を買って乗る体験から、皆で利用する、使いたいときに使う形になる」
こういった企業理念は、事業を始める目的にはなりますが、勝算なくして事業を始めることはできません。メルチャリにはどういう勝算があったのか、その戦略に迫ります。
ブランド戦略
メルカリとメルチャリのロゴを比較してみてください。英字だけみると一瞬見間違えませんか?
これが、メルカリがシェアサイクルを始めた理由の1つだと思います。名前が似ているため、特に宣伝しなくても勝手に話題が広がり、利用者の関心を集めることができます。
最近マクドナルドで「ビックマックジュニア」なる商品が販売されました。なぜビックマックなのにジュニアという名前を付けたのでしょうか。既出の商品名を踏襲することで、新商品よりも低いコストで同じ宣伝効果を得ることができるからです。メルカリもこの点に着目しました。
またシェアサイクルを駐車するポートという駐車場があります。ポートは福岡市内に点在し、移動する人の目に止まります。その性格上、宣伝や広告のコストをかけずに、ターゲットを絞って周知することができます。
こちらはメルチャリのアプリで見た、ポートの所在地です。博多駅と天神駅を中心にポートがたくさん設置されています。
出典:http:// https://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_sougou/article/404230/
料金設定の背景
ではなぜ1分4円でしょうか。シェアサイクルの強力なライバルは、地下鉄とバスだと思います。主要駅である「天神駅」と「博多駅」の料金を見てみましょう。
- 地下鉄 200円
- バス 100円
天神駅と博多駅の距離は、自転車で12分程度です。メルチャリを使うと48円ですみます。つまり公共の交通手段より半額以下で移動できます。
立地的な理由
ではなぜ福岡でしょうか。
東京や大阪、名古屋では、ドコモやソフトバンクのシェアサイクルが既に利権を得ています。残された主要都市は福岡です。福岡は立地的にも平地が多くシェアサイクルに向いています。
しかし、福岡には、ofo(オッファ)、mobike(モバイク)など、試験的な段階ですが、中国のシェアサイクル大手が参入していました。中国ではシェアサイクル文化が進んでおり海外にもビジネスを拡大していました。中国にとって、観光地の福岡は魅力的な市場です。
そして、福岡といえばソフトバンクです。ソフトバンクは中国大手のシェアサイクルと協業し、福岡や北九州の利権を間接的に得ようと考えていました。
こちらはシェアサイクル事業の構図です。
驚愕は、モバイクの料金です。30分50円!これはメルチャリの半分以下になります。
しかし、福岡市は、提案競技の結果、シェアサイクル実験事業の会社として、メルカリを選出しました。なぜでしょうか。
その理由は、安定した経営とアフターサービスの違いです。中国のシェアサイクル市場は、過当競争に陥り、価格競争が泥沼化しました。収益や品質ではなく、市場の寡占化を目指す中国ビジネスは、収益性や財務の悪化、自転車の粗悪化、運用のずさんさが目立ち、いつしか海外市場から見放されました。
その点、メルカリは、圧倒的な知名度に加えIPOも果たし、カスタマーサービスの拠点も福岡に置き、アフターサービスの強化にも余念がありません。結果、軍配はメルカリにあがりました。
今後のシナリオ
現段階では儲けが少ないと思うメルチャリですが、今後予想されるシナリオを仮説してみました。
- コストを落とし利用数を上げ、薄利多売で利益を拡大する
- 福岡のシェアリサイクル市場を寡占化した後、値上げして利益を拡大する
- 別の地域や事業に水平展開する
1は、市場シェアが拡大すると、ビジネスに係るノウハウなどの経験がたまるため、コスト面で有利に展開できるようになります。台数やポート数を増やし利用数を上げれば、利益を拡大できるかもしれません。
2は、福岡市だけを市場として考えた場合に有効な手段です。料金の低い間に、主要な場所をポートで埋めつくし参入障壁を高くした上で、値上げします。寡占状態であれば、値上げ後の料金も浸透しやすいでしょう。最近、仙台のシェアバイク「DATE BIKE」も値上げしています。
3は、競争優位をもって別の地域や事業に進出するケースです。技術が進めば、おそらく自転車の動態管理やステータス管理などを遠隔監視できるようになるでしょう。そういった技術は、他のビジネスにも応用できるかもしれません。また別の地域に進出するときにも大きな武器になるでしょう。
まとめ
シェアリングエコノミーの競争は外資系企業を巻き込み更に激化していくでしょう。常時監視下にないため、シェアリングエコノミーの難しさは、商品の品質維持にあります。先の中国企業のような品質の劣化は、顧客離れを意味します。利用者拡大とともに品質維持の効率化が求められます。
メルチャリでは、自転車の放置やパンクなどの故障を見つけた会員には、ポイントを付与するなどのサービスも始めています。品質を維持するためには、そういった仕組みづくりやテクノロジーの利用が不可欠となるでしょう。
小規模フィットネスの会員数が増加している理由
出典:1万人規模!『FEELCYCLE LIVE LUSTER® 2019』4月20日(土)からチケット一般販売開始!|株式会社FEEL CONNECTIONのプレスリリース
こんにちは、Taikiです。
FEELCYCLE(フィールサイクル)というフィットネスジムをご存知でしょうか。暗闇の中、音楽に乗せてバイクを漕ぐ今流行りの暗闇フィットネスです。そのFEELCYCLEが、1万人規模のLIVE「FEELCYCLE LIVE LUSTER」を開催します。
「フィットネスでLIVE?」最初はよく理解できませんでしたが、その経緯については後述します。
現在、FEELCYCLEやRIZAP、ANYTIME(エニタイム)、カーブスといった小規模なジムがフィットネス業界を席巻しています。
なぜ設備が充実した総合ジムではなく、設備が限定された小規模ジムが人気の中心になっているのでしょうか。フィットネス業界の「今」と小規模ジムが快進撃を続ける理由に迫ります。
あくまで個人の見解ですので、ご承知おきください。
目次はこちらになります。
総合ジムの売上が伸びない理由
現在フィットネス業界は好調です。しかし従来の総合ジムであるコナミスポーツはいまいち売上が伸びません。何故でしょうか。
過去リーマンショックや東日本大震災により、利用者の意識は大きく変わりました。経済が低迷し、会員は会費の高いジムを利用することに抵抗感を覚えたからです。
かつてのジムは、マシンやスタジオレッスン、プールにサウナなど至れり尽くせりの施設でしたが、全てを利用する会員はどれだけいたでしょうか。にもか関わらず、会費が高額なことに違和感を覚えていた会員は少なくなかったはずです。
こちらのグラフを見ると2008年のリーマンショック以降、売上高は堅調ですが、単価は下降していることが分かります。
小規模ジムの強み
そのような市場背景に着目し、余計な設備を排し適正な価格でフィットネス事業に参入したフィットネスジムがあります。成長志向型のRIZAPや24時間フィットネスのANYTIME、女性高齢者層をターゲットにしたカーブスです。
集中戦略
小規模ジムに共通する点は、特定層をターゲットにした集中戦略です。市場全体を相手にしても資本や設備に勝る総合ジムには勝てません。RIZAPはストイック層、ANYTIMEは若年層、カーブスは女性の高齢者層に照準を合わせ、独自のサービスを提供しました。
ちなみに特定層をターゲットにした集中戦略は、米国の経済学者マイケル・ポーター氏が提唱しているものです。
RIZAPの強みは「トレーナー」です。採用率3%のトレーナーは、トレーニングだけでなく人を喜ばせ持ち上げる能力にも長けています。過酷なトレーニングを行うためには、トレーナーとの絶対的な信頼関係が不可欠なのでしょう。
カーブスの強みは、「会員を大切にする」ことにあります。顔を見て、名前は勿論のこと、特徴や悩みを覚えています。また、1週間来ない会員には電話で様子を伺ったりして、会員の継続的な運動をサポートすることが退会数低さにつながっています。
ANYTIMEの強みは「24時間営業」です。夜はスタッフが帰り、ジムは無人化運営です。会費の安さと24時間のサービスで若い世代の会員数を取り込んでいます。
多店舗経営
集中戦略が成功すると、次にどういう行動に出るでしょうか。
成功した店舗のノウハウを標準化し、多店舗経営に乗り出すことが定石となります。
「一点突破・全面展開」という言葉があります。古くは孫子の兵法にあり、現代ではビジネスにおけるランチェスター戦略のキーワードとしても有名です。簡単に言えば、あれこれ中途半端に手を出すよりも、一つのものに集中したほうが成果が上がりやすいということです。そして、うまくいった一つをきっかけに他方にも展開していけます。
関係性の構築
小規模ジムには、大規模ジムが真似しにくい強みがあります。それは、会員数が少ないため、スタッフと会員の関係が構築し易いことです。
この点は、女性の高齢者層をターゲットにしたカーブスが良いお手本です。カーブスのスタッフは、会員の顔と名前を完璧に覚え、気さくに声をかけます。例えは悪いですが、老後施設のスタッフがお年を召した要介護者にやさしく声をかけるイメージでしょうか。
特に女性の高齢者はコミュニケーションを欲している上、横のつながりも強く、口コミで会員数が堅調に推移しています。その様子がこちらのグラフから見て取れます。
価値連鎖の強化
価値連鎖 (バリューチェーン)という言葉をご存知でしょうか。簡単に言うと、企業内部のさまざまな活動を相互に結びつけて価値を生む方法です。価値連鎖はこちらの3つで構成されています。
では実際の例に当てはめていきます。
ANYTIMEやカーブス、FEELCYCLEは海外発のため、海外の成功例と国内のニーズを結び付け価値を生み出しました(社内バリューチェーン)。
無駄な施設を廃し適正な価格で会費を設定し、小規模のため近い距離で会員と接することのできる価値を生み出しました(垂直バリューチェーン)。
成功した店舗のノウハウを標準化し、多店舗経営に乗り出し、別の地域でも同等のサービスを提供しました(水平バリューチェーン)。
ここでFEELCYCLEの成功例を紹介します。
FEELCYCLEは、暗闇フィットネスという独自サービスだけでなく、個性的なインストラクターが多数在籍しています。イケメンやスタイル抜群、そしてノリノリの性格など色々です。その結果、特定のインストラクターを追いかける会員が増え、お目当てのインストラクターが別店舗に移れば、会員もついていくという現象が生まれました。
したがって、人気インストラクターが集結すれば、先に紹介した、「FEELCYCLE LIVE LUSTER」という1万人規模のライブが開催できるということにつながります。これが、FEELCYCLEが持つ垂直バリューチェーンの強みです。
そして、FEELCYCLEのフィットネスには、多数の音楽ジャンルが用意されていることも人気の一つです。その人気からApple Musicでプレイリスト化するほどです。このような楽曲制作や楽曲販売も、フィットネス事業から音楽ビジネスへと水平展開した、水平バリューチェーンの見本ともいえます。
まとめ
小規模ジムは総合ジムより資本や設備は劣るものの、集中戦略と多店舗経営の結果、フィットネス市場で快進撃を続けています。また価値連鎖(バリューチェーン)の強化により、競争優位性を確保しています。
しかし、近い将来、国内経済には景気停滞という暗雲が立ち込めています。今後の環境変化に各社がどう対応するか、注目です。
4Gが健在な今、政府や企業が5G推進を急ぐ理由
引用:https://www.ilounge.com/news/apple-might-not-release-5g-iphones-until-2020
こんにちは、Taikiです。
世界中の企業が5G事業への参入に躍起になっています。
第5世代通信規格(以下5G)とは、ほとんど活用されていない高周波数帯を使い、超高速通信を実現します。現在の携帯通信と比べると、最高伝送速度は100倍の毎秒10ギガビットになると言われています。分かりやすくいうと、2時間の動画を3秒でダウンロード可能になります。
しかし、なぜ5Gがこうも騒がれるか、不思議に思いませんか。
4Gでもストレスなく動画を視聴することができます。そして、4Gの人口カバー率は99%を超え、当初あった「つながりにくさ」もかなり解消されています。
4Gが健在な今、企業が5G推進を急ぐ理由は何でしょうか。そして、5Gでしかできないことは何でしょうか。
今回は、企業が5G推進を急ぐ理由と政府や企業は5Gで何をしたいか、その意図に迫りります。5Gに少しでも興味がある方は見て損はないと思います。
あくまで個人の見解ですので、ご承知おきください。
企業が5Gを急ぐ理由
なぜ通信各社は5G事業を急ぐのでしょうか。
利益を取りたいからでしょうか。ユーザーを囲い込みたいからでしょうか。もう少し掘り下げて考えみましょう。
過去の歴史をみると、4Gの登場はユーザーが渇望していました。当時は、音楽や動画など4G向けのキラーコンテンツが数多く存在していたからです。
しかし、今現在5Gでないといけないコンテンツはどれだけあるでしょうか。日常に落とし込んでみるとすぐには思いつきません。なぜなら4Gで殆ど要件を満たしているからです。
現段階で、5Gが必要な理由はまだまだ薄いですが、5Gの技術によって、日常生活や経済活動は劇的に変化することは間違いありません。詳細は後述しますが、今後5Gの技術は不可欠になります。
「周波数」の争奪戦
そう考えると、企業は最初にどんなアクションを起こすでしょうか。
最初は経営資源の確保です。経営資源とは、資金や労働力、設備等のことですが、5Gサービス展開のために、必要な経営資源の確保を急ぐ必要があります。
では、5G導入に必要な資源は何でしょうか。1つ目は、「周波数」です。
総務省は4月10日、5Gの周波数について、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天の4社に割り当てました。
合計10枠の周波数のうち、スマートフォンに使いやすい6枠は、ドコモ、KDDIに各2枠に割り当てられました。ソフトバンクと楽天には各1枠しか割り当てられませんでした。なぜソフトバンクと楽天だけ少なく割り当てられたのでしょうか。
各社は投資金額などの計画を事前に総務省へ申請していますが、上位3社と比べると、ソフトバンクと楽天の予算が低かったためです。すでに5G資源の争奪戦は始まっています。
「スモールセル」の争奪戦
次に予想される5Gに必要な資源は何でしょうか。
それは「スモールセル」という小型基地局です。5Gでは、既存の「マクロセル」という基地局だけでは、カバーエリアが狭くなってしまいます。5Gのような高周波数帯は距離に制限があります。
そのため、「スモールセル」と呼ばれる基地局を細かく敷き詰めて、対応エリアをカバーする必要があります。目視で確認できるかはわかりませんが、そのうち電信柱に無数の「スモールセル」が設置されるでしょう。通信各社は、その「スモールセル」の機器や設置場所の確保を急がないといけません。
このように、5G時代到来に備え、通信各社は、経営資源の取り合いに血眼になっています。資源が不足しユーザーに十分なサービスを提供できない企業は、5G市場から撤退することになるでしょう。
5Gでしか実現できないサービス
では5Gでどんなサービスを提供できるでしょうか。
これを考察するためには、5Gの特徴を掴む必要があります。
引用:https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1903/26/news014.html
5Gの特徴は、 「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」の3要素です。この3要素を活用して、高品質のサービスが生み出します。
どんなサービスが生まれるか、具体的に想像できますか。
おそらく容易に想像できないはずです。それが5Gを身近に感じられない理由です。誰でもそうですが、身近にある、顕在的な商品やサービスを連想することは簡単ですが、潜在的な新しいサービスを想像することは困難です。総務書が5Gの活用方法を公募していることが何よりの証拠です。
私が考えるに、5Gでしか実現できないであろうサービスのポイントは3つあります。遠隔化、自動化、安定化です。1つずつ見ていきましょう。
遠隔化サービス
5Gの「超高速」「超低遅延」を活用すると、遠隔化サービスを飛躍的に拡充することができます。パソコンを遠隔で操作するようなレベルでありません。
例えば、難病の患者がいて移動が困難です。5Gであれば遠隔で手術ができます。「超高速」のネットワークを使い、8Kの高精細な映像で患部を見ながら手術が行えます。メスなどを扱う際には、「超低遅延」の通信により、遠隔操作の反応が遅れることなく、実際に手術をしているのと同じ感覚で操作できます。遠方にいる医者が遠隔で診察や手術をできれば最短で患者の命を助けることができます。つまり、遠隔化の狙いは、空間を越えて「コト」サービスを提供することになります。
自動化サービス
次に自動化です。KDDIと日本航空(JAL)では、5G通信の特長を生かした「タッチレスゲート」を開発しています。5Gで利用される28ギガヘルツ帯という周波数帯は、「電波が限られた場所にしか飛ばない」という特長があります。その特長を活用して、空港の搭乗ゲートの上から電波を飛ばすことで「5Gスマホにチケット情報を持っている人だけゲートを開ける」ということが可能になります。つまり自動化の狙いは、今後労働人口が少なくなることに備え、省人化や自動化を進めることにあります。
安定化サービス
最後は安定化です。安定化は、「多数同時接続」を活用し、有事の際にも大量アクセスに耐え得ることが狙いです。東日本大震災の時に、アクセスが集中し被災者は十分な情報を収集できませんでした。5Gであれば、アクセスが集中する環境下でも、安定的に通信を確立してくれます。
こちらの記事では、5G技術で端末2万台の「多数同時接続」に成功しています。
そして、IoTの普及にも「多数同時接続」は一役買います。現状、3G/4Gで接続できる台数はおよそ150億台と試算されている。しかし、もうすでに携帯電話は世界で約90億台あります。またIoTデバイス数がそれ以上になると、今のインフラでは対応できません。そこで必要になるのが5Gということになります。
5G関連の注目企業
ちょっと寄り道をして、5G関連で注目を集めるであろう企業を2つピックアップしました。村田製作所とアンリツという企業です。
村田製作所は、セラミックコンデンサーを得意とする製造会社です。セラミックコンデンサーは電気を蓄えたり、放出したりする電子部品でほとんどの電子機器に使われる電子部品ですが、スマートフォン1台に数百個も使われます。
その中のリーダー的存在である村田製作所は、卓越した技術力、自前の生産技術、すり合わせによる設計品質の高さ、高い品質管理能力といった伝統的な日本のものづくり企業の強みを持っています。世界シェアは30%を超えて世界一です。更に高パフォーマンスが要求される5Gスマホでは、4Gスマホ以上にセラミックコンデンサー数が搭載されるはずです。
次にアンリツという企業ですが、こちらは通信回線の計測器を得意とする企業です。今後5Gの回線が普及するにあたり、電波状況の計測は不可欠になるため、これも普及するでしょう。
私がこの2社に注目する理由は、こちらの3点です。
- 他社が真似しにくい技術優位性がある
- 海外の売上規模が大半を占める
- 財務基盤が安定している
いずれも上場企業ですので、今後の業績を追ってみると面白いかもしれません。
まとめ
企業が5G推進を急ぐ理由は、5Gが必要不可欠な時代に備え、経営資源の争奪戦に勝利したいからです。そして、今後は資源の争奪戦から、サービスやアイデアの争奪戦にシフトしていきます。
そして、政府が5G推進を急ぐ理由は、今後予想される労働人口減や景気後退の波に備え、自動化や省人化のインフラを拡充し、産業発展の原動力にしたいからでしょう。
5Gをはじめとする「第4次産業革命」の経済効果は132兆円と言われていますが、今後はビジネスやシステムに大きな変革が求められます。
外食離れが進む一方、Uber Eatsの利用が増える理由
Uber Eatsというサービスをご存知でしょうか。注文者と飲食店、配達員のマッチングを行う、オンラインデリバリーサービスです。2014年にアメリカでサービスを開始し、2016年に日本上陸しました。
今後外食離れが進む一方で、Uber Eatsの売上は伸びるでしょう。
今回はその理由とUber Eatsの事業戦略に迫ります。
あくまで個人の見解ですので、ご承知おきください。
目次はこちらになります。
今後外食離れが進む理由
昨今、外食の売上は伸びています。その理由は、訪日外国人と法人交際費の増加です。
ではなぜ今後、逆に外食離れが進んでいくのでしょうか。理由は2つあります。
消費税増税
1つ目の理由は、2019年10月から施行される消費税の増税(8%→10%)です。
2014年に施行された増税(5%→8%)を見ると、増税前の駆け込み需要と増税後の消費冷え込みが顕著に表れました。
こちらの図は、増税により体感物価の上昇から節約志向が強まることを表しています。
出典:
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/jp180907.pdf
そして2019年の増税は飲食店にとって更に厳しいものになるでしょう。
今回の増税は贅沢品が狙い撃ちだからです。当然その中には外食も含まれます。一方で、飲食料品や宅配、テイクアウトは軽減税率の対象となり消費税は据え置きです。この税金差が外食離れの強まりに変わります。
出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/01.pdf
2021年問題
「東京五輪が終わると景気が低迷する」こう予想する識者は多数います。
2021年問題と言われていますが、過去に遡ると、IMFの調査では、1988年のソウル大会から2008年の北京大会の6大会のうち、5つの開催国で五輪開催後に経済成長が鈍化したというデータがあります。
もし景気が落ち込むと何が予想されますか?
まず経費削減の機運が強まり、外食産業を支えていた法人交際費の予算減が考えられます。
そして、もう一つの懸念点は為替の変動です。
近年、平時には円売りで円安に振れ、景気後退や金融危機など投資家がリスク回避に殺到する有事の局面では円買戻しで円高に振れるというパターンが定着しています。
以前も、2007年夏に米国でサブプライム危機、そして2008年にリーマンショックによる金融危機と景気後退が起こり、世界中の株価が下落しました。株価の急落で大きな損失を抱えた投資家は、リスク許容度を急速に低下させ、円買戻しに殺到したため、急激な円高・ドル安が進みました。
以上の例を見ても、円高・株安、円安・株高は、非常に高い相関関係があることが分かります。
為替の考察にあたって、こちらの記事を参考にさせて頂きました。
出典:米国「景気後退」が始まると…円高・株安再来の足音が聞こえてきた(竹中 正治) | マネー現代 | 講談社(1/3)
景気後退の結果、為替は円高に触れると、外国人は日本に…来たがりませんよね。
つまり2021年問題は、内需外需の両方を減らし、外食産業の勢いを弱める恐れがあります。
Uber Eatsの利用が増える理由
では外食離れが進む一方で、なぜUber Eatsの利用は増えるのでしょうか。利用者とお店、配達パートナーの立場から、その理由に迫ります。
軽減税率の導入
前述したように、軽減税率の対象にデリバリーサービスが含まれています。つまり、外食よりもデリバリーを頼む方が得なので、Uber Eatsの利用者は更に増えるでしょう。
「所有から利用」への変化
飲食店にとって、デリバリー事業の収益化は大きな課題でした。配達員や車両、システムを含めたインフラの所有には高い維持費がかかります。
しかし、Uber Eatsの登場により、デリバリーのインフラは「所有から利用」に変わりました。お店側はUber Eatsに加盟しても初期費用や維持費はかかりません。配達回数に応じて手数料を払うだけです。
このように「所有から利用」へのシフトは、車のような「モノ」だけでなく、デリバリーのような「コト」にも広がりつつあります。
近年デリバリー業を開始するお店は増え、市場規模も拡大しています。
好きな時に好きなだけ働ける
料理を運ぶ配達パートナーも好きな時に好きなだけ配達できます。アプリ上でお店と届け先の住所を確認し、気が向いたら配達の仕事を引き受けます。Uber Eats側で自動決済するため、配達パートナー側は代金回収の必要がありません。
なぜこのような働き方でデリバリー業が成立するのでしょうか。
空き時間に働ける仕事は、誰にとっても魅力的だからです。人間関係やノルマなど余計なストレスを抱えずに働けることもメリットです。
加えて、配達した報酬額が直ぐアプリに表示されることもやる気を高めます。もし配達パートナーが見つからない場合は、注文者側にキャンセル通知が届くだけで誰にも迷惑がかかりません。
まとめ
今後増税が施行され景気の後退も予想されますが、飲食店はUber Eatsに加盟すれば、税優遇を受けることができ、初期費用も維持費もいらないデリバリーサービスを利用することができます。
しかし、Uber Eatsの手数料はお店にとって決して安くありません。今後も価格設定やメニューの差別化など、飲食店の販売戦略はますます求められるでしょう。
ヤクルトが国内で苦戦し、海外で好調を維持する理由
こんにちは、Taikiです。
先日中国・広東省にヤクルトの新工場が完成し、生産増強に乗り出すニュースが流れました。
調べてみると、 ヤクルトの国内業績は横ばいですが、海外では好調です。今回はヤクルトが海外で成功した理由とその戦略に迫ります。
あくまで個人の見解ですので、ご承知おきください。
目次はこちらになります。
国内で苦戦する理由
ヤクルトが苦戦する大きな理由は原材料高です。これはヤクルトだけでなく、食品業界で共通した悩みになっています。
なぜ原材料が高くなったと思いますか。
これは原油価格の高騰が関係しています。食品業界では、商品に使う包装や容器の生成に石油を使用しています。もちろんヤクルトの容器にも石油が使用されています。
ではなぜ原油は高騰しているのでしょうか。
これはトランプ政権のイラン産、ベネズエラ産原油の禁輸制裁が大きな原因です。米政権の強硬姿勢が強いため、価格高騰への懸念は根強く、原油は高騰を維持してます。これが食品業界の原材料を押し上げています。原油高騰の波は、食品業界だけでなくレストランやカフェなどのサービス業にも影響しています。
ヤクルトが苦戦する理由は他にもあります。それは他社との過当競争にあるのではないでしょうか。健康ブームが続く中、乳酸菌が注目を受け他社からも関係商品は多数販売されています。他社よりも良い商品を出すため、日夜研究や開発にかかる費用も無視できません。
海外で好調を維持する理由
ヤクルトは1960年頃から、海外に進出してまだ未踏の乳酸菌市場を開拓しました。台湾、ブラジル、新興国、中国、欧米などです。
進出するのは簡単ですが、成功するのは別の話です。どうやって海外に進出し成功を収めてたのでしょうか。
教育分野の開拓
1つ目に、教育分野の開拓があると思います。
乳酸菌が認知されていない海外で、いきないヤクルトを販売すると消費者はどういう反応をするでしょうか。おそらくコカ・コーラなど既存の清涼飲料水と同じカテゴリでみられます。当然コカ・コーラと同じ市場で勝つことは容易ではありません。ヤクルトは清涼飲料水市場と区別して乳酸菌商品を認知してもらう方法を取りました。
これはヨーロッパの例ですが、まず現地の研究機関と協力し乳酸菌が健康に良い事を立証しました。そして、乳酸菌の学会を創設し、乳酸菌の良さを啓蒙し、ヤクルトの知名度を上げました。
言い方は良くありませんが、ヤクルトは教育分野を青田買いして乳酸菌市場を形成し、ヤクルトブランドを刷り込み、将来にわたって利益を獲得することに成功しました。
似たようなマーケット戦略は異業界でも見ることができます。マイクロソフトのアカデミックパッケージです。学校法人や学生にマイクロソフト製品を学割販売し、若い世代にその良さを植え付け、将来彼らが大人になってからもリピータになってもらい利益を回収します。この長期的なマーケット戦略は、商品の宣伝効果だけでなくCSRの役割もあります。
ヤクルトレディの活躍
2つ目に、ヤクルトレディの存在です。
新興国を見ると、モールや大型スーパーなど巨大なお店は殆どありません。駄菓子屋のような小さなお店が路地裏などに散らばっているイメージです。無数に分岐した販路を一個ずつ確保することは相当労力のいる作業です。
もしヤクルトレディがいたらその状況をどう打開できるでしょうか。彼らは現地のメンバーで構成されています。土地勘や人脈、そしてフットワークの軽さで毛細血管のように張り巡らされた細い販路を次々と開拓します。つまり先進国のように大規模に広告や宣伝を打ち、大型スーパーへの営業を行うトップダウン式ではなく、地元の小さなお店から営業をかけて下流から上流を攻めるボトムアップ式の販売手法で成功を収めました。
同じような例はお菓子のブルボンの戦略にも見ることができます。ブルボンは地方店舗から販売を展開し、最終的には都市部に販路を拡大しました。これは地方の住民が次第に都市部に流れていく人口動態をうまく利用したボトムアップ式の戦略です。地方の子どもがブルボンのお菓子に慣れ親しみ、年月を経て進学や就職で都市部に移転した後も、昔懐かしのブルボンを買い続けます。結果ブルボンは都市部でも順調に売上を伸ばすことができます。
四季報でみるヤクルトの業績
直近の四季報でヤクルトの業績を見てみましょう。
今季の売上高 は、約418,000百万円(前年比+2.6%)が予想されます。企業規模は食品加工業界ではトップクラスです。直近5年の売上は5%近く堅調に推移していますので、間違いなく成長企業でしょう。収益性もかなり高めです。
事業別の売上はこちらです。注目するポイントは、海外売上は国内よりやや低いですが、営業利益は海外が圧倒的に上です。海外事業でヤクルトは高い収益性を維持できていることが見て取れます。
・飲料・食品: 47(8)
・海外の飲料・食品: 42(25)
・医薬品 6(5)
・他 5(5)
まとめ
原料高は悩みの種ですが、ヤクルトは早い時期から海外進出し成功を収めました。その成功のポイントは、教育分野の開拓から乳酸菌市場を形成したこと、ヤクルトレディの営業によりボトムアップ式に販路を拡大したことが挙げられます。そしてその成功を支えた背景には、「世界の全ての人たちの健康を守る」という、確たるヤクルトの企業理念があるのではないでしょうか。
ミスタードーナツが中国撤退し、ユニクロがなお中国で成功している理由
こんにちは、Taikiです。
先日ミスタードーナツ(以下ミスド)が中国から撤退するニュースが流れました。
一方でユニクロは中国でも順調に売上を伸ばしています。
今回は中国の内部環境の変化とユニクロの販売戦略にクローズアップしたいと思います。
あくまで個人の見解ですので、ご承知おきの上、お読みください。
目次はこちらです。
ミスドが撤退した理由
ミスドの撤退理由として、人件費高騰と競合他社との過当競争があげられます。
なぜ人件費が高騰したのでしょうか?
1970年代から中国では一人っ子政策が取られました。その結果、中国も少子高齢化の時代に突入し、高学歴化が顕著になりました。一人当たりの教育費が向上し、中国人の労働単価は高くなりました。これが人件費高騰の背景にあります。
また飲食業は比較的参入障壁が低いため、競合他社の新規参入により過当競争に陥りました。
収益を上げるためには、売上を上げるか、人件費を下げるかになりますが、ミスドは過当競争で売上が思うように上がらず、人件費高騰も止まらなかったため、撤退を余儀なくされたと推察されます。
ユニクロが成功を続ける理由
ユニクロの垂直統合型SCM
ユニクロは企画・計画・生産・物流・販売までのプロセスを一貫して行うビジネス モデルで、他社には真似のできない独自商品を次々と開発しています。
このようなビジネスモデルを垂直統合といいますが、このメリットはサプライチェーン全体でみたときに中間コストが大幅に削減できる点です。そのため利益確保や製品の安定供給が可能になります。デメリットは、すべての設備や人材を自社でまかなおうとするため、どうしても初期投資や固定費が大きくなってしまうことですが、それはファーストリテイリングの資本力がなせる技です。
生産拠点のシフト
ユニクロは、コスト抑制のために生産拠点を東南アジアにシフトしています。東南アジアは、中国の半分以下に人件費を抑えることができるため、中国一国に依存しない生産体制を整え、価格競争力を維持することができます。
ローカライゼーション戦略
中国では、日本以上にオンラインショッピングの利用率が高いです。
なぜでしょうか。
まず実店舗を最小限に留め販売できるという利点があります。次によく分からないお店で偽物や粗悪品を買わされないですみます。次によく分からないお店で買うよりアフターケアが充実しています。つまり中国では、実店舗があまり信用できない傾向にあります。また少子高齢化時代に突入し、高齢者にとってもオンラインショッピングは助かります。
こういった背景から、中国の大手企業はオンラインショッピングのサービスを提供しています。
ユニクロもデジタルマーケティングに早くから着手し、オンラインショッピングも充実しています。現地CEOは中国人を採用しています。中国の環境に順応し、現地企業のように経営するローカライゼーション戦略も成功理由の1つです。
業績について
四季報から簡単に直近の業績を紹介します。ミスドは国内でも苦戦していましたが、店舗整理で業績が好転しています。
ファーストリテイリングは、2018年8月期決算時点で連続最高益です。海外の売上高比率 47%、国内外ともに高い収益性を維持しています。
まとめ
人件費高騰により中国はもはや世界の工場としては機能していません。しかし中国は未だ消費大国です。パイオニアの買収で見るように、今後も中国企業の資本や人材は日本国内に入ってくるでしょう。
そして、中国の高学歴化は、その流れを一層後押しすることになるでしょう。