米中貿易摩擦の背景と今後のシナリオ

ã米中貿ææ©æ¦ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

出典:http://wedge.ismedia.jp/articles/-/16608

こんにちは、Taikiです。

米中の貿易協議は、一時は合意に至ると思われましたが、中国側の反発により、熾烈な貿易摩擦へと展開しました。詳しい経緯はこちらになります。

中国側は、国有企業に対する中央政府補助金制度の見直しについて、米国政府の要求を相当分受け入れたものの、最終段階で米国政府が地方政府による補助金の見直しも合意内容に加えることを要求し、それを受け入れることができなかったと説明している。地方政府による補助金は、景気対策や企業誘致など、貿易政策とは直接関係のない国内政策で多く利用されるためだ。米中貿易合意で、こうした国内政策が強く制限されることになれば、それは不当な「内政干渉」に当たると中国政府は考え、受入れを拒否しているのである。

出典:https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2019/fis/kiuchi/0516

そもそもアメリカはなぜ中国に一方的な合意を求めたのでしょうか。また制裁関税するアメリカの目的は何でしょうか。今後はどういう展開になるのでしょうか。

目次はこちらです。

貿易摩擦の背景

アメリカは他国との取引において巨額の貿易赤字を抱えています。中でも中国との取引のいて、大きな赤字が発生しています。元々アメリカは消費大国のため、安くて供給が安定している中国からの輸入が盛んです。中国は、アメリカから得た外貨を使って設備投資を増やし、その中国のGDPアメリカに迫りつつあります。

イギリスの金融大手スタンダート・チャータード(Standard Chartered)のデータによると、アメリカは早ければ2020年にも世界ナンバー1の経済大国の地位を失う可能性がある。

出典:https://www.businessinsider.jp/post-183133

こういった事情を背景に、アメリカは中国に通商交渉の合意を求めましたが、中国側からの反発を受け、制裁間税に至ります。間税措置は他国だけでなく自国の産業を悪化させる諸刃の剣です。例えば、高い間税をかけると部品の輸入が減り国内の生産量が低下したり、間税の分だけ価格転嫁が起こり国内製品の値上がりを誘発します。逆に中国側から報復制裁を受ければ米国の輸出も減ります。しかし米国はこういった事情を見越して関税措置を断行しました。何故でしょうか。

間税措置の狙い

アメリカの間税措置の目的は何でしょうか。

関税措置は米中合意に至るための手段になりますが、その目的は、来る2020年の大統領選でトランプ大統領が再選を果たすことにあります。

中国の自由経済

中合意の意図は、貿易収支の改善もそうですが、より大きな狙いは、中国の国家資本主義を崩し、米国と同じように中国を自由経済化することです。

米国の主張では、中国が菅民一体で、先端テクノロジーの内製化や低価格化を進め、米国の経済を圧迫しています。それを可能にしているのが先述した中国政府の産助金です。その制度を見直し、官民の癒着を断ち、中国を自由経済化することが米国の狙いです。

中国の知財管理の是正

米国が米中合意を求めるもう一つの理由は、中国の知財管理にあります。

中国のマーケットが巨大化するにつれ、技術移転の強要や技術盗用が問題視されるようになりました。加えて、手に入れた技術情報を自国の知的財産として囲い込み、国外企業を訴訟するようになりました。中国では、国家知的財産権戦略の実施に伴い、知的財産権の司法保護が顕著に強化されています。それに伴い、知的財産関連訴訟も増加の一途をたどっています。

更にファーウェイが5G製品を通じて、世界中にネットワークを張り巡らしバックドアを設けると、中国政府に情報が筒抜けになります。米国がファーウェイを排斥する理由もここにあります。ちなみに同社の創業者は人民解放軍出身で中国共産党と深い関係にあります。

以前スノーデンの告発により、大手通信会社のVerizonなどはNSAアメリカ国家安全保障局)の求めに応じて個人情報を漏えいしたことが明るみにでました。中国国内ではそれ以上の事が公然と行われていると考えらえます。このまま放置すると、中国の金盾(グレートファイアウォール)は、国内だけでなく世界のネットワークをも監視検閲できる脅威をはらんでいます。

その侵略に待ったをかけたのがトランプ政権です。そして、トランプ政権は、自由と平等を愛する国民から高い支持を受けています。

今後のシナリオ

中国政府は米中摩擦の長期戦を辞さない構えです。中国政府はこういったシナリオを待ち望んでいます。

米中貿易摩擦の激化→アメリカの景気冷え込み→トランプ支持率低下→トランプ落選

中国には米国の石油やガス、穀物、自動車を禁輸する手もあります。また米国の産業にとって、不可欠なレアアースの供給を止めるという切り札もあります。

一方の米国は、中国が合意しなければ第4弾となる追加間税をかける方針ですが、それを実行すると米中の経済は一気に冷え込みます。景気減速は大統領選の大きなマイナス要素にもなりかねません。とはいえ、米国にとっては、中国の体制を改めさせないと、いずれ米経済が中国に食われ、安全保障の地位も揺るぎかねないとしています。

 まとめ

米国は、トランプ政権の大統領再選を目的とし、米国にとって不利益となる産業補助金知的財産権保護などの体制見直しを要求しています。直近では、大阪のG20が最大の焦点となっています。

これは仮説ですが、今後中国がGDPで米国を追い越して盤石の地位を築くと、同じように米国を追い込むことになるでしょう。更に、金盾と巨砲とよばれる国家システムでGAFAをはじめとする米国企業の排斥を始め、その経済制裁を安全保障の切り札に使い、国家間の交渉を有利に進めることができます。

そう考えると、この貿易制裁は、トランプ政権の再選だけでなく、米国の未来をかけた一戦と捉えることもできます。日本としては、事態の早期収拾を祈るばかりでしょう。

東京オリンピックの明暗とその後のシナリオ

ãæ±äº¬ãªãªã³ããã¯ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

こんにちは、Taikiです。

今回は、20回目の記事という事で、東京オリンピックについて書きます。

先日、五輪チケットの抽選結果が発表されましたが、いかがでしたでしょうか。東京マラソンよりも高いとされる倍率の前で、涙をのんだ方も多かったのではないでしょうか。リセールサービスもあるようなのでまだチャンスはあります。希望を捨てずにいきましょう。

では本題の話をします。東京オリンピックの経済効果は、約32兆円と言われています。

では、その経済効果の内訳はどうなっているのでしょうか。オリンピックでどこが潤い、どこが困るのでしょうか。東京オリンピックが始まると、我々の日常生活にどんな影響があるのでしょうか。そして、オリンピック後はどういうシナリオが待っているのでしょうか。今回は、その疑問に迫ります。

目次はこちらになります。

オリンピックがもたらす利益と損失

東京オリンピックの経済波及効果は全国で約32兆円と言われています。そもそも経済効果とはどう定義されるのでしょうか。経済効果を割り出すためには、試算した需要増加額に、係数を入れて経済波及効果を割り出します。経済波及効果とは、Aという製品が生産されることでBという製品の生産を誘発することを指します。例えば、車を生産すると、タイヤや計器、バッテリーやセンサーなど別の部品も生産され、大きな経済波及効果を生みます。以前日産の村山工場が閉鎖した際、周辺の自動車部品工場もなくなし、武蔵村山市に大きな経済損失を与えました。

少し寄り道しますが、開催都市はなぜ東京なのでしょうか。実は、2008年の北京オリンピックには、開催都市に大阪市が立候補していました。大阪市が落選した理由は、交通の便と財政問題でした。当時視察にIOCが来阪しましたが、彼らを乗せたバスが何度も交通渋滞に巻き込まれるという不運も重なったようです。大阪は、開催地決定投票でわずか6票しか獲得できず最下位に終わったという苦い経験があります。つまり、交通アクセスや財政力など総合的に考えると、日本がオリンピックを招致するためには、東京以外に選択肢はなかったということです。

オリンピックで潤う業界

それでは、話を経済効果に戻すと、東京の経済波及効果は約20兆円、全国では約32兆円となっています。

f:id:vtaiki:20190614054012p:plain

出典:https://www.2020games.metro.tokyo.jp/9e1525ac4c454d171c82338c5a9b4c8a_1.pdf

経済波及効果には、直接的効果とレガシー効果というものがあります。

直接的効果は、オリンピック開催に直接関係するモノやサービスの需要です。例えば、競技場の整備やテクノロジー開発にセキュリティ強化、観戦者の入場料やプロモーションもそうでしょう。

レガシー効果とは、開催後にも効果が期待されるモノやサービスの需要です。施設の有効利用やテクノロジーの応用、観光需要の拡大です。

では、産業別にみたとき、直接的効果とレガシー効果の大きい業種はどれでしょうか。産業別の直接的効果を見ると、それは建設業とサービス業になります。

f:id:vtaiki:20190614064424p:plain

出典:https://www.2020games.metro.tokyo.jp/9e1525ac4c454d171c82338c5a9b4c8a_1.pdf

 更に、的を絞り、建設業の中で特にオリンピック需要の恩恵を受けていると思われる会社はどこでしょうか。建設業の代表例でいうと、新国立競技場の元施工で首都圏比率も高い大成建設とオリンピック需要で大量のセメントを用立てる太平洋セメントになります。

サービス業は色々ありますが、今回はホテルにフォーカスしましょう。2013年に東京オリンピックが決まって以来、ホテル業界の業績は堅調に推移しています。

訪日外国人にとって人気の国内ホテルはどこでしょうか。トリップアドバイザーの人気ランキングによると、クラブメッドザ・リッツ・カールトン、マリオット、インターコンチネンタルなど外資系ホテルがあげられています。

tg.tripadvisor.jp

なぜ訪日外国人は日本でも外資系ホテルを利用したがるのでしょうか。訪日外国人がホテルに求めるポイントをみていきましょう。

  • アクセスが良い
  • 言語の壁を感じない
  • 通信環境が整っている

日本に進出している外資系ホテルの多くは、所有者と経営者が別々になっています。例えば、ザ・リッツ・カールトン東京の所有権は三井不動産ですが、運営権はザ・リッツ・カールトンカンパニーL.L.Cにあります。三井不動産がアクセスを確保し、ザ・リッツ・カールトンカンパニーL.L.Cのスタッフによって、言語や文化の壁は取り払われます。全世界にホテルがあるという安心感もあり、日本国内でも外資系ホテルは人気です。

f:id:vtaiki:20190616180451p:plain

出典:https://nomad-english.com/archives/16285

オリンピックに伴う不利益

逆に、東京オリンピックによって、どこが困るのでしょうか。現在、東京オリンピック需要の建設ラッシュにより、資材が不足しています。具体的には、建物の柱や梁を結びつける「ボルト」が不足し、建設工事の遅れが相次いでいます。オリンピック需要に関わる都市開発や建設工事だけでなく、地方の施設や橋などのインフラ整備の遅延も引き起こしています。また、東北や熊本の復興も遅々として進まず、復興五輪という言葉に違和感を覚える人もいます。もし新たな災害が起こった場合、復旧に充てる余力は今の日本にはありません。

日常生活への影響

東京オリンピックの期間中(2020年7月24日 – 2020年8月9日)は、我々の日常生活にどんな影響を与えるのでしょうか。

最も確実な事は、交通機関の混雑です。東京オリンピック中は都内の人口が7割増しになると言われています。つまり、この期間中は国内外から約700万もの人が東京に流れ込み、通勤ラッシュの時間帯は電車1割増し、高速道路は2倍以上の混雑が予想されます。その緩和策として、お盆休みなど前後の休みをこの期間に集中させたり、時差出勤やテレワークなどが計画されているようです。

オリンピック後のシナリオ

オリンピック後のシナリオとして、景気の低迷が予想されています。その理由は、過去も他のオリンピックで景気が低迷し、1964年の東京オリンピックの後も「昭和40年不況」が発生したからです。

では、具体的にオリンピック後はどんな事が起こるのでしょうか。これまでの傾向と今後のニーズを踏まえ、今後のシナリオを考えます。

都市の再開発

東京オリンピック後も都市開発は続きます。2022年に森ビルが麻布で330Mの超高層ビル建設を予定しています。更に2025年には大阪万博、2027年には東京と名古屋間のリニアモーターカーに加え、三菱地所が東京駅に390Mの超高層ビルを建設予定です。この都市の再開発により、2025年までは、経済は緩やかに成長するのではと期待されています。

シェアリングエコノミーの拡大

今後は車や自転車は購入せずに利用する傾向が強まるのではないでしょうか。同時に駐車場のシェアリングも活発になります。現在、駐車場業界の大手であるパーク24は関西を中心に一部の駐車場を無料で開放し、駐車場の広告料を収入源とするビジネスモデルをつくっています。またakippaのシェアリングサービスを利用し、駐車場をシェアする企業や個人も増えています。中国やシンガポールではマナーの悪さが目立ちますが、ルールさえ整えば、節約志向でマナーの意識が高い日本人の間では、シェアリングエコノミーは定着すると読んでいます。

インバウンド消費と海外戦略

2025年は、1950年迄に生まれた団塊世代後期高齢者となり、人口減少と財源圧迫が一層強まります。人口減につれ国内消費も落ち込むため、インバウンド消費が益々重要になりますが、オリンピック効果もあり訪日外国人の数は堅調に推移しています。今後は更なる誘致のために、政府主導で公衆無線LANやキャッシュレス化の拡充を進めていくでしょう。

ãã¤ã³ãã¦ã³ãæ¶è²» æ¨ç§»ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

出典:https://chibra.co.jp/taiken/2017-kotoshouhi-market/

また人口減少による労働力不足を補うため、外国人労働者の雇用も活発になります。外務省は人手不足が深刻な建設や農業、介護など5業種を対象に2019年4月に新たな在留資格を設けました。

そして、人口減少に伴う国内消費減を見越して、海外に販路をもつ企業が今後は生き残るはずです。特に、海外でもアジア新興国をマーケットにもつ企業は有利です。なぜなら、アジア新興国は、50年前の日本と同じように高度経済成長期を迎えつつあるからです。当時の日本は、労働人口も多く世界でも生産大国とされていました。その後、生産大国の地位は中国に奪われ、中国は「世界の工場」と呼ばれるようになりました。しかし、一人っ子政策の影響もあって中国の人件費は高まり、今となっては貿易摩擦も影響し生産拠点は東南アジアに移転しています。

では、東南アジア市場に強い企業はどこでしょうか。即席めんの「ハオハオ」を大ヒットさせたエースコックベトナムで5割のシェアを持ち、利益の3割以上を同国で稼いでいます。同じベトナム繋がりでいくと、「サロンパス」で有名な久光製薬ベトナムで6割のシェアをもっています。味の素は、東南アジアもそうですが、その先にあるアフリカ市場でも既に高いシェアをもっています。貧困で食材の少ないアフリカでは、色んな味を生み出す味の素のスープが重宝されています。

toyokeizai.net

こういった海外進出に成功している企業の共通点は、高いインセンティブ制度と使命感です。現地で成功を収めるためには、ローカライズが不可欠になりますが、そのためには、現地で骨を埋める気概のある社員が必要です。億単位のインセンティブ制度を設け、社会貢献性の高い使命感を海外駐在員に植え付けることが成功の鍵となります。

テクノロジーの進化

今後注目されるテクノロジーは何でしょうか。実績のあるクラウド、事故率を抑える自動ブレーキや自動運転、そして情報事故を防ぐブロックチェーンが手堅いでしょう。

昨今AIやIot、ビックデータがよく話題にのぼりますが、その殆どがクラウドをベースに設計されています。クラウドは実績もあり、初期費用もかからないため、今後も更に伸びていくでしょう。

次に、自動ブレーキや自動運転ですが、最近高齢者の死亡事故が問題となっています。高齢化が進むにつれ、これらの需要も高まるでしょう。政府は自動ブレーキ装備車両の減税を考えています。実際に自動ブレーキ装備車の事故減少効果も立証されています。

ではブロックチェーンはどうでしょうか。これから労働人口が減るにつれ、組織の省人化も進みます。例えば、JRは特急を全車指定席に変え、人手がかかる社内のチケット販売をやめました。銀行はフィンテック化を進め、窓口業務や紙の手続き廃止し、人件費削減に努めています。

人件費削減や変化を嫌い、銀行から市役所など自治体に人材が流出している話も聞きますが、自治体も例外ではありません。高齢化に伴い、介護医療費が拡大して赤字の自治体が増えています。当然自治体も経費削減のため、近い将来、省人化は避けられません。銀行と同じように窓口業務を廃止し、WEBで諸々の手続きを完結できるような時代にならざるを得ません。その際に懸念されることが個人情報の流出やなりすまし等の情報事故ですが、そこで登場する技術がブロックチェーンです。銀行では、既にブロックチェーンを応用し、「機密性」、「完全性」、「可用性」のCIA確保に動いています。詳細は、過去の記事をご覧ください。vtaiki.hatenablog.com

医療業界の飛躍

先進国の高齢化や途上国の経済水準が加速するにつれ、医療業界も堅調に推移していくことでしょう。国際的に権威のある専門誌Lancet(ランセット)によると、日本の医療水準はかなり上位にあり、日本の医療の質は最高レベルとされています。今後も国内外から日本の医療技術は求められるでしょう。

農業の活性化

昨今農家不足が問題とされていますが、農業にはいろいろな面で未知の可能性を感じます。

例えば、オプティム という会社は、農家に無償でIoTバイスを貸出し、収穫された作物を自社で買い取って販売するというサプライチェーンを確立しました。IoTを使って農薬を9割減らして収穫できた作物は、市場価格よりも高値で取引されているようです。農業はこういったテクノロジーとの融合も可能にしています。

農業には、多様な労働者を受け入れるだけの器もあります。例えば、言語や文化が異なる外国人労働者にとって、農業は働きやすい業種ではないでしょうか。外務省は農家で働く外国人の在留資格を緩くしていますが、農林水産省でも、農業分野における障害者就労を促進しています。

JAによると、49歳以上の新規就農者が増えていますが、ビジネスに疲れたサラリーマンや定年退職者が第二の人生として農業を始めています。昨今は休耕地が増え、農業支援金など国のバックアップもあるため、条件も悪くありません。人生100年の中で、経済的な豊かさだけでなく、人生の豊かさを求めて農業を始める人も多いのではないでしょうか。 

4.まとめ

華やかに見える東京オリンピックの影には、資材不足や復興遅延があります。またその先には、少子高齢化や人口減少などの課題も山積しています。

打開策として、テクノロジーの進化やインバウンド消費、海外戦略などをあげましたが、皆さまもお分かりのように、今後は経済的価値だけでなく、生命資本主義といった人生を満足できるような社会的な方向性も必要になってくるでしょう。高度経済成長やバブル崩壊を経験し、利潤追求の果てに表れた社会問題にどう付き合っていくか、今後注目されます。

Windows10からみるMicrosoftの戦略と今後のシナリオ

f:id:vtaiki:20190609070256p:plain

こんにちは、Taikiです。

Windows7のサポート期限が迫り、Windows10への移行が加速しています。

Windows10リリースの狙いは何でしょうか。そもそも、Windowsの強みとは何でしょうか。課題を抱えつつも、なぜWindowsの国内シェアは伸びているのしょうか。そして、機能アップデートの影響を最小化するためには、どうすればいいでしょうか?

今回はこの疑問に迫ります。

Windows10リリースの狙い

Windows10は、WaaS(ワース)という概念のもとでリリースされました。WaaSとは、OSのアップグレードを新しい「製品」として届けるのではなく、定期的に実施・継続されるサービスとして提供するという新しい概念です。 従来は新たな機能を組み込んだOSを開発し、Windows 7Windows 8.1といった独立した製品を発売していましたが、Windows 10から、機能向上プログラム(以下FU)や品質向上プログラム(以下QU)によって、定期的に更新を重ねていく方式となります。

なぜMicrosoftはWaaSという方式を取ったのでしょうか?その理由は、これまでの製品提供のサイクルでは、多様で急速なニーズの変化に対応できないからです。

こちらのグラフをみると、パソコンだけでなく、スマートフォンタブレットの利用も拡大しています。Microsoftは、どのデバイスであっても、包括的かつスピーディーに機能を向上できるよう、ユニバーサルWindowsプラットフォームと呼ばれる共通OS基盤を開発し、WaaSという方式でサービスを提供することを決めました。

出典:総務省「通信利用動向調査」

Windowsの強み

そもそも、なぜ大半のOSはWindowsなのでしょうか。その理由を探るため、Windowsの歴史に少し触れましょう。

Windowsの歴史

1980年頃、MicrosoftMS-DOSとよばれるOSを開発しました。かつてMicrosoftは、MS-DOS上で稼働するGUIのアプリケーションで、IBMへのOEM供給を生業とした、下請けのソフトウェアメーカーでした。Microsoft業界標準の地位を得ることになったきっかけは、Windows 3.1というOSです。このOSの強みは、各社のアーキテクチャの相違を吸収できたことです。ソフトウェアがアーキテクチャに依存することがなくなったため、PCの利便性が飛躍的に向上し、アーキテクチャの独自性も薄れ、PCの価格が安くなりました。業界標準となったWindows3.1は爆発的に売れ、その後、高可用性やセキュリティを向上させながらWindowsシリーズは拡大していくことになります。

当然のことながら、仕事の生産性を高めるために、Windows向けの純正や他社製の製品開発も活発に行われ、ビジネスとWindowsは深い関係をもつことになりました。その結果、社内の基幹システムはWindowsへの依存度が強くなり、OS市場で優位性を保つことになります。

しかし、その優位性を脅かす存在がLinuxです。Windowsが大企業などエンタープライズ向けに注力する一方、Linuxは小規模やスタートアップを攻めました。そして、スタートアップのような資本が少なく発想豊かな企業は、オープンソースであるLinuxを駆使し、自由度の高いクラウドというプラットフォームを手に入れ、柔軟にアプリケーションを開発できるようになりました。次第に、規模を問わず多くの組織でLinuxは採用されるようになります。そのLinuxの台頭を尻目に、Microsoftはある手を打ちました。Githubの買収です。

Github買収の狙い

Githubというのは、Gitと呼ばれるソースのバージョン管理ツールを用いた、OSSの共有開発プラットフォームです。あのGAFAも、米政府もこのプラットフォームを使ってオープンソースを開発しています。

では、具体的にGithubはどう使われているのでしょうか。Githubでは「リポジトリ」と呼ばれるプロジェクトが作成され、その中でソースが公開されます。その「リポジトリ」を分家にして自由にカスタマイズできる機能が「フォーク」と呼ばれます。また、この改良を本家に提案することを「プルリクエスト」と呼びます。

例えば、Appleが公開したSwiftのソースを、GitHubにいる開発者がフォークして、もっと使いやすいアプリケーションにしました。その開発者はプルリクエストでAppleにこれを提案し、採用されれば本製品に組み込まれ、自社の製品価値を高めるような使い方ができます。開発者にとってもGitHubでの開発実績は経歴に拍がつき、今後の進路を有利なものにしてくれます。

MicrosoftGitHub買収の狙いは2つあると思います。1つ目は、GitHubが抱える開発者に自社の製品改良を提案してもらう機会を増やし、製品価値を高めることです。2つ目は、Microsoftが2016年に買収したLinkedin (ビジネス特化型SNS)と連携し、人材開発の分野を強化していくことです。

Windows10が課題を抱えながらもシェアを伸ばせる理由

では、話をWindows10に戻しましょう。Windows10の課題は何でしょうか。

それは、アップデートの種類と回数が増えたため、ユーザーの負担が大きくなった事とFU(Feature Update = 機能更新プログラム)が引き起こす不具合です。先述したように、アップデートの種類には、QU(Quality Update = 品質更新アップデート)、FU(Feature Update = 機能更新プログラム)があります。前者は、毎月第 2 火曜日に公開され、後者は、毎年3月と9月に公開されます。

特に、このFUが問題で、アップデート後に予想外の不具合が出たりします。

 「dynabook スマートフォンリンク」は、Dynabook社製PC向けに提供されているアプリ。PCをスマートフォンのスピーカー・キーボード・マウスとして利用できるようにする。

 このアプリを導入したデバイスを「May 2019 Update」へアップグレードすると、一部の環境でアプリが機能しなくなる。通話メニューで電話番号を表示できなくなったり、PCから電話に応答する機能が利用できなくなる恐れがある

 Intel製ディスプレイドライバーの一部は「May 2019 Update」との互換性に問題を抱えており、ユーザーインターフェイスでディスプレイの明るさ(輝度)を調整できたようにみえても、実際に適用されないことがある。

出典:https://forest.watch.impress.co.jp/docs/serial/yajiuma/1187555.html

しかし、ここで1つの疑問が浮かびます。こういった課題を抱えながらも、なぜWindowsOSの国内シェアは伸びているのでしょうか。その理由を3つにまとめてみました。

2019å¹´1æãã¹ã¯ãããOSã·ã§ã¢/åã°ã©ã - Net Applicationså ±å

 出典:https://news.mynavi.jp/article/20190204-766848/

Microsoftスケールメリット

1つ目の理由が、Microsotfの資本力や事業規模がもたらすスケールメリットです。各所からFUの不具合情報が多数報告されますが、MSは、そのスケールメリットを背景に次々と修正パッチを配信し、問題を解消させています。優秀なエンジニアが多いこともスケールメリットの1つといえます。このスケールメリットおかげで、ユーザーも不満を抱きつつ、どこかで安心感を持っているのではないでしょうか。

各社ベンダーの対応

Windows 10を扱うベンダーは多数います。彼らが売上を拡大するためには、性能やデザインに加え、FUが引き起こす障害について、原因と対策をユーザーに逸早く公開することが求められます。経験曲線の原理と同じように、今後この対応の速度や精度は改善されていくのではないでしょうか。

エンタープライズ向け製品としての強み

エンタープライズ向け製品として進化してきたWindowsは、大量デバイスの管理を得意としています。Windowsには、サービスチャネルやサーバの機能によって、規模や要件に応じてWindows Updateを制御することが可能なため、ユーザーはそのノウハウを拠り所としています。

Windows updateの対応について

ここでは、Windows 10の大きな課題とされている、Windows Update(特にFU)の対応方法について書きます。かくいう私もWindows10の導入担当ですが、Windows Updateについて、包括的かつ体系的に説明しているサイトが少ないため、ここで整理したいと思います。ただWindows updateについては、サービスの名称や期間がよく変わるため、こちらの情報もすぐに老朽化する恐れがあることをご承知おきください。

まずは、アップデート方法ですが、サービスチャネルとサーバによる方法とに大別することができます。

サービスチャネルについて

サービスチャネルとは、サーバを介さず、Microsoft updateサイトから直接FU(Feature Update = 機能更新プログラム)を受け取ることです。種類としては、一般、SAC(Semi-Annual Channel)、LTSC(Long-Time Servicing Channel)の3つがありますが、大きな違いは、FUの配信タイミングです。一般は即時配信され、必然的にFUのパイロットテスター(=人柱)となります。SACは、グループポリシーにより、FUのタイミングを任意に設定でき、最大365日間の延期が可能です。LTSCは、10年間はFUの受け取りを免除することができ、QU(Quality Update = 品質更新アップデート)のみ受け取り可能です。

それでは、このサービスチャネルの意図は何でしょうか。それは、FUによる影響を軽減させることです。一般は、家庭向けのため、FUの即時配信でも影響はないとされています。SACは企業向けのため、ビジネスに影響がないよう、配信までにパイロット期間を最長365日間、設けることができます。LTSCは、キオスクやATM、医療機器などレガシーなシステム維持のために、長期にわたってFUを免除することができます。

f:id:vtaiki:20190608181441p:plain

サーバでの制御について

いずれにしてもサービスチャネルは、Microsoft updateサイトから直接FUを受け取ることになるため、アップデート対象PCが大量にあると、インターネットゲートウェイの帯域圧迫につながります。帯域不足を回避するためには、サーバ側でFUを受け取り、サーバから配信する事になりますが、それがWSUSとSCCMの役割になります。

f:id:vtaiki:20190608183926p:plain

出典:Windows Server 2012 R2 で WSUS サーバを構築する(1) - yuu26's memo

 WSUSとSCCMは、アップデートの自動化や状態管理を可能としてますが、その細やかさや柔軟性において、SCCMに軍配が上がります。

f:id:vtaiki:20190608184725p:plain

企業において、FUを適用するために、どうやってサービスチャネルやサーバを使い分ければよいでしょうか。基本的には、ユーザー数の規模に応じて決めます。

ユーザー数が少ない場合

ユーザー数が少なければ、SACにてFUの配信タイミングを決め、人力で対応します。最初の配信先はリテラシーが高い人や管理者のPCにして、問題なければ順に適用していくと良いでしょう。

ユーザー数がそこそこ多い場合

ユーザー数がそこそこ多いと、SACでの制御が難しくなるため、WSUSを使用します。但し、FUの適用や再起動が制御できない上、結果も一覧にできない等の制限があります。そのため、WSUSに加えて、管理者のマニュアル対応が必要になります。もちろん、社内の統制が取れていれば、FUのアップデート要求を受けた時に、ユーザー自身が最適なタイミングでアップデートし、再起動を完了させ、その結果をフィードバックしてもらえますが、現実的ではないと思います。WSUSは万能ではないため、アップデートの補助機能と捉え、上手に利用すると良いでしょう。

ユーザー数がすごく多い場合

ユーザー数がすごく多いと、WSUS+手動対応では捌くことができません。無理をして人海戦術に頼れば、人件費の方が高くつくでしょう。従って、SCCMと社内調整でなるべくアップデートを自動化させることをお勧めします。SCCMでは、細かい単位でPCをグルーピングしてアップデートができる上、その結果も一覧にでき、条件に応じて自動的にリトライもできます。PC全体で死活監視やリソース管理もできるため、あのPCがダウンしている、このPCのディスク容量が不足しているなどの情報も取れて、柔軟に対応することもできます。

しかし、Windows UpdateのみをSCCMの目的にすることは賢い選択とは言えません。SCCMは、MDMやソフトウェア管理など機能が盛り沢山のため、ライセンスが非常に高くつきます。SCCM利用を検討する場合は、Windows Updateをはじめ、その他の業務もSCCMで一元管理できるよう全体の設計を見直した方が良いでしょう。

そこで、もう一つの選択肢としては、WSUSと他社のサービスを組み合わせる方法があります。使ったことはありませんが、例えば、富士通のLanScopeという製品は、SCCMよりも安いことは勿論のこと、Windows updateに特化して、WSUSの弱点を補うことを主眼としています。

f:id:vtaiki:20190608192533p:plain

出典:https://www.fujitsu.com/jp/group/fjm/mikata/column/motex/002.html

まとめ

Microsoftは、Windowsという共通プラットフォームを確立し、OS市場にて君臨しました。ニーズの多様化と急速な変化に対応できるよう、Windows10をWaaSという位置づけでリリースしました。Windows Updateなどまだまだ課題はありますが、国内シェアの推移をみると、市場の信頼を取り戻しつつあることが伺えます。

今後、Windowsが更に進化を遂げるためには、買収したGitHubを使って自社の製品価値を高めることが求められます。その進化に伴い、Windows10の展開や運用も更に楽になることを期待しています。

クラウド化が拡大する背景と今後のシナリオ

f:id:vtaiki:20190531061636p:plain


こんにちは、Taikiです。

今回はクラウドについて、お話しします。IDCの調査をみても分かるように、今後クラウドサービスの売上は増加することが予想されます。

å½åãããªãã¯ã¯ã©ã¦ããµã¼ãã¹å¸å ´ 売ä¸é¡äºæ¸¬ã2017å¹´ï½2022å¹´

出典:https://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20181001Apr.html

今さらですが、なぜクラウドの売上は成長を続けるのでしょうか。また、ビジネスの視点でみたときに、クラウドはどんなことを実現してくれるのでしょうか。そして、今後はどういう展開になるのでしょうか。今回はその変化に迫ります。

目次はこちらになります。

クラウドサービス拡大の背景

クラウドサービスには、プライベートとパブリックの2種類があり、現在は特にパブリッククラウドが主流となっています。この背景には、自前でクラウド基盤を持つより、クラウドベンダーが提供するサービスを利用して、事業に集中したいという思惑があります。

では、なぜクラウドサービスは拡大しているのでしょうか。

端的に言うと、情報を広く集めて分析し、逸早く商品やサービスを提供できるからです。具体的にいうと、この3点にまとめることができます。

ビジネスの多角化と多様化

1つ目の理由ですが、ビジネスの多角化と多様化が求められる時代になりました。現在、市場にはモノやサービスがあふれていますが、その殆どは直ぐにコンシューマ化され、類似商品がリリースされ、売上競争が激化しています。

企業は常に新しい製品やサービスを提供することが求められ、ビジネスのスピードは加速しています。それと連動して、商品開発のサイクルも短くなります。

アプリケーション開発の話ですが、アプリのリリースサイクルを短くするためには、その開発手法にも変化が求められます。ウォーターフォールと呼ばれる従来の手法から脱却し、アジャイル開発といった変化に強い手法が使われるようになりましたが、これがクラウドと非常に相性が合いました。

クラウドは基本的に初期投資が不要で従量制のため、スモールスタートで軌道に乗ればスケールアウトし、低迷すればスケールインすることが可能です。小規模で開発し、状況に合わせて方針や規模を変えるアジャイル開発は、元来クラウドと非常に馬が合うのです。その結果、特にWeb系のサービスでは、クラウドの需要が増加しています。

ユーザービリティの追及

2つ目の理由ですが、クラウドはプラットフォームを提供するベンダーがユーザービリティを追及した結果だといえます。

メインフレームの時代は、クライアントの機能が制限され、サーバに殆どの処理をもたせていました。次にクライアントサーバ(クラサバ)の時代に移りますが、サーバとクライアントとで処理を分担するようになりました。そして、クラウドの時代に進み、デバイスやロケーションに依存せず、クラウドからサービスとして機能を受け取ることができるようになりました。

f:id:vtaiki:20190527193858p:plain

https://www.slideshare.net/after311/it-92461381

このプラットフォームの変化なぜ起きたのでしょうか。ベンダーが性能と同時にユーザービリティを追及してきたからです。

メインフレームでは、サーバ依存でクライアントの性能が不十分でした。クラサバではモノやロケーションに依存してクライアントの自由度が制限されました。それらの課題を解消するため、クラウドというプラットフォームが登場し、機能性と柔軟性を実現しました。

テクノロジーの発達

3つ目の理由は、デジタルフォーメーション(DX)の存在です。IoTやAI、RPAがその代表といえます。現在は、家電や車、時計などIoT化が進み、幅広く情報を取れる時代になりました。企業は、その情報を解析することで、次の売れ線を見つけ、マーケットニーズに合った商品を世に送ります。情報収集や情報分析、マーケットや販売戦略、商品開発など一連の企業活動を、クラウドによってワンストップで実現することができます。

クラウドをどう活用するか

ビジネス成功のために、クラウドをどう活用すべきでしょうか。クラウドは対象となるレイヤーに応じて、サービスの種類が異なります。

  • IaaS: Infrastructure as a Service
  • PaaS: Platform as a Service
  • SaaS: Software as a Service

IaaS(イアース)がもたらす効果

IaaSとは、サーバやネットワークなどインフラを提供するクラウドサービスになります。

このサービスの上に、社内向けだと、例えば情報系や基幹系のサーバを置きます。社外向けだとオフィシャルサイトやECサイトなどを置きます。特にECサイトのような会員機能をもつサーバは、アクセス増減の幅が大きく、負荷の変動が激しいため、クラウドのようなスケーラブルな環境は重宝されます。そういった柔軟性に加え、IaaSはサービスの可用性を確保してくれます。例えば、AWSSLAを99%以上保証し、サービスが停止したときには停止時間に応じて返金してくれるシステムになっています。

 PaaS(パース)がもたらす効果

PaaSとは、開発環境を提供するクラウドサービスになります。

PasSがもたらす効果は、ビジネスサイクルの速さです。有名なPaaSであるHerokuを例に説明します。

自由度の高さ

HerokuはWebアプリでよく使用される、Node.jsやPHPJavaRubyなど多数の言語をサポートしています。また他社のクラウドサービスとの連携も可能です。

例えば、ある企業がM&Aして事業の統廃合が起こったとします。買収先のシステムを統合するために、他社が扱うアプリやOSなど異種連携が必要なときにHerokuはその力を発揮します。Heroku Connectで他社と自社のシステムを連携することで、他社アプリをHerokuで引き続きコーディングできたり、他社データを自社のDBに投げて情報を一元化し、システムの統合をスムーズに進めてくれます。

開発と運用効率の向上

HerokuはGitHubを使用します。GitHubクラウド上で開発したりソースを共有できる上、バージョン管理も自動化されます。そのままGitからDeployすることも可能です。共同開発できる上、プロジェクトやタスクも管理できるので、複数のツールでできることが、Git Hub1つで可能になります。これがHerokuが選ばれる理由の一つです。

更にHerokuには膨大なアドオンが用意され、システム管理を省人化してくれます。開発規模が大きくなればその効果は益々大きくなるでしょう。

情報の網羅性

Herokuはさまざまなクラウドフレームワーク、データベースと連携し、複数のWebアプリやデータストアから、事業戦略に必要なデータを集めます。そのデータは、BIツールでより洗練された情報となり、マーケティングや商品開発を考える材料になります。そうして出てきた事業戦略が、Herokuを通じて再度アプリに組み込まれ、ビジネスサイクルを早めてくれます。

SaaS(サース)がもたらす効果

SaaSとは、ソフトウェアのクラウドサービスです。

SaaSがもたらす効果とは、ユーザーがより自社のビジネスに集中できる環境を整えることです。具体的には、サーバやミドルウェアなど下位レイヤーの構築が不要ということ、業務直結のサービスを受けることができること、また働き方改革に沿った柔軟な働き方を支援してくれるところにあります。

業務直結のサービス

業務に直結したサービスについてですが、どんなSaaSがあるのか、売上順に見ていきましょう。

ãiaas ä¼æ¥­ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 出典:https://www.channelpartnersonline.com/2019/02/07/azure-still-king-in-public-cloud-while-azure-grows-fastest-ibm-falls/

 順にみていくと、Microsoftは、Officeをクラウド化してOffice365を提供しています。

Salesforceは、CRMクラウド化し顧客データ管理を一元化しています。

Adobeは、クラウドサービスとして、Adobe Creative Cloudを提供し動画や画像のクラウド管理や同時編集の機能があります。

Oracleは、オンプレとクラウド間のデータベース移行における、機能やパフォーマンスの再現性の高さとSoEを意識したアプリケーションを提供しています。例えば、Dockerを使ったアプリケーション開発環境、NoCodeのWebサイトアプリケーション作成ツール、センサーからのデータ収集やデバイス管理機能を載せたIoTの機能セットです。

SAPはERP大手であり、化学や医薬品、総合商社などで良く使われています。EAPは生産や販売、会計や人事など各システムのサイロ化を抑止し、部署間の連携を密にできるよう、異なる業務を統合管理し全体最適をはかるものです。その結果、アジリティやコスト効率を生み出します。

働き方改革

次に、柔軟な働き方の支援ですが、近年ロケーションやデバイスを選ばずに、自由な形態で働くことが許容されています。例えば、フリーアドレスやテレワーク、もっと言えば海外ノマドなど、自宅や外出先、また旅行しながらでも仕事ができるようになってきました。またBYODで見られるように、MDMやセキュリティソフトを追加さえすれば、自分のPCでも仕事ができるようになりました。こういった働き方の柔軟さもクラウドがもたらす恩恵です。 こういったインフラ構築不要だったり、業務直結のサービスを受けたり、柔軟な働き方を実現することによって、ユーザーはよりビジネスに専念することができます。

今後のシナリオ

では今後クラウドサービスはどう変化していくのでしょうか。

クラウドサービス間の乗り換え

クラウドは移行がしやすい分、乗り換えも簡単です。あるデータベース移行で、クラウドに乗り換えるもデータベースが巨大すぎて複数に分割した結果、保守やメンテの時間が倍取られ、負担が増えたという話もあります。コスパが悪ければ乗り換えの検討が入ります。

SAPも乗り換えの危機に直面しています。既存のERPであるSAP R/3が保守切れになり、ユーザーはSAP S/4 HANAへの移行を求められます。しかし、新しいERPには沢山の課題があります。例えば機能の変更やデータベースに制限がかかるため、移行には、ハードウェアの新規購入やOSやデータベースの入替が発生します。修正が必要な機能要件や互換性の確認もあるため、おそらくはコンサルタントを入れての設計となり、その費用は膨大になるでしょう。このSAPのERP転換期に乗じ、MicrosoftOracleはそのシェアを奪おうとしています。

なぜSAPは大改修を余儀なくされたのでしょうか。SAP R/3が1992年にリリースされてから、以降25年以上にわたってバージョンアップを重ねた結果、SAP ERPソリューションは利用するほどシステムとデータが肥大化していき、リアルタイム性が欠如していくようになりました。今回のリニューアルは、肥大化したシステムやテーブルを修正し、システムの最適化を図るためのものです。長期的視野に立った時、同社は多少の犠牲を覚悟してでも、破壊的創造をせざるを得なかったのです。

AWSの話になりますが、AWSのパートナー会社は、ユーザーにクラウドサービスを提供するときに、そのアカウントを自社から発行します。なぜでしょうか。確かに、Amazonへの支払いがドル建てのため、代行決済という一面もありますが、本当の狙いは、他社乗り換えへの障壁を高くするためです。アカウントを握っていれば、アカウント間では既存のインスタンスを移行することができません。これがAWSパートナー会社が提供するリセールサービスの狙いです。

クラウドインテグ業務の内製化

クラウドの難点はノウハウ習得の難しさにあります。多数のオプションがあり、料金体制も複雑で、情報も少ないです。事業会社は最適な導入や運用方法が分からず、サービス会社に任せた結果、費用は更に高くなることもあります。

techtarget.itmedia.co.jp

従って、今後、クラウドが浸透すると、コスト削減を目的として、自社でノウハウを習得したり、外部からクラウドに強い人材を入れるなどして、クラウドの構築や運用を内製化する動きがでてきます。従って、今後サービス提供者は、IaaS一辺倒ではなく、PaaSなども組み合わせて、独自の付加価値を提供せざるを得ません。前述したアカウント縛りのリセールサービスだけでは生き残ることはできません。

オンプレへの逆流とハイブリッド化の流れ

今後の流れを列挙してみましたので、これに至るプロセスを仮説してみます。

  • オンプレに戻す
  • 別のクラウドサービスに移行する
  • オンプレとクラウドのハイブリッド構成にする

まずはユーザーがオンプレに戻す理由は何でしょうか。オンプレに移行して、思ったほどの費用対効果を得ることができなかったからです。そして、利用年数やスケールを考えて、コストメリットがあれば、実績のあるオンプレに戻すことを選びます。

別のクラウドサービスに移行する理由は何でしょうか。現状のクラウドサービスに満足できないからです。例えば、先述したSAPの新しいERPに移行すると、Oracleのデータベースが使えなくなります。データベースの鞍替えは特に大変なため、Oracle Cloudの選択肢が出てきて、条件が合えば移行する運びになります。

オンプレとクラウドのハイブリッド構成にしたい理由はシンプルです。自社にとって、メリットがあるものはクラウド、なければオンプレを維持するだけです。移行の定型パターンですが、まずはインパクトの少ない情報系のサーバを移行し、メリットがあれば他のサーバも移行します。結局、今後は、「良いとこ取り」のハイブリッド構成が主流になってくるのではないでしょうか。

まとめ

来年にはWindows Server 2008のサポートも切れるため、それを機にクラウド移行という企業も多いのではないでしょうか。結論やってみないと分からないため、早めに比較検討することをおすすめします。

ブロックチェーンがビジネスの進化だけでなく、社会問題さえも改善できる理由

ããããã³ã¤ã³ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

出典:http://labokuma.hatenablog.com/entry/2018/01/11/222424

こんにちは、Taikiです。

2019年1月、宅ファイル便が480万件もの個人情報流出した件は、記憶に新しいでしょう。情報産業にとって、システムの脆弱による情報流出は防がなくてはいけません。

その堅牢で利便性のあるシステム要件を満たす情報セキュリティ技術として、ブロックチェーンが注目されています。

今回は、なぜ次世代技術として、ブロックチェーンが注目されているのか、社会にどんな利益をもたらしていくのか、そして、今後どう広まっていくかを考察します。

目次はこちらになります。

ブロックチェーンはなぜ安全といえるのか

既存システムと比べてブロックチェーンはどのくらい安全なのでしょうか。

ブロックチェーンは、従来のサーバによる集中管理ではなく、「分散型台帳技術」と呼ばれる分散管理を行い、複数のユーザーが取引データを保持し、その整合性を監視しています。例えば、今まで、数千のユーザーを抱える取引のデータは、基幹サーバで集中管理し、その整合性をチェックしました。従って、攻撃者の対象はその基幹サーバに絞ることができます。

しかし、ブロックチェーンを採用した場合、数千のユーザーが分散して同じ取引データを保持し、その整合性をお互いに監視しているため、セキュリティ強度は飛躍的に高くなります。

但し、このマイニングとよばれる取引データの整合性チェックは、スパコンのような高い処理能力が求められるため、パーソナルユースのPCでは難しいとされています。しかし、この処理を実行したユーザーには報酬が支払われるため、マイニング作業を進んでおこなう企業やユーザーも多数います。そして、分散型運用のため、局所的なシステムのダウンにも耐え得る設計となっています。

こうしてブロックチェーンは、ビットコインや金融サービスだけにとどまらず、決済、証明、契約などあらゆる場面に活用できる技術として、期待されています。

奈良先端技術大学では、ブロックチェーンの技術を応用し、IoTのセキュリティを保証する技術を開発しました。

www.naist.jp

しかし、NEMという仮想通貨の流出でも分かるように、ブロックチェーンの実用化にはまだまだ課題が多いため、各社で実証試験や研究がが行われている段階です。

ブロックチェーンができた背景

このブロックチェーンという構想はどうやって生まれたのでしょうか。

ブロックチェーンはそもそもビットコインという仮想通貨の実用化を支えるための技術でした。ビットコインブロックチェーンもサトシ・ナカモトという匿名の人物(またはグループ)が開発したものです。

このサトシ・ナカモトがビットコインを世に送り出した理由は、長年あらゆる商取引の間に銀行が入り込み、中間搾取するという図式を変えたかったから、とされています。つまり、銀行という巨大な中間搾取の介在をなくすべく、ブロックチェーンという技術が生まれました。いわば個人が銀行業務を代行するジャイアントキリングの発想がその由来となっています。

しかし、ビットコインは中間搾取をなくすための統一通貨ではなく、単なる投機性の高い金融商品とみなされて暴落を繰り返し、逆にブロックチェーンの技術は高く評価されました。

皮肉なことに、その技術を応用し、自社のビジネスやセキュリティを強化しようとするのは、銀行をはじめとする大手の企業です。この事実は、ブロックチェーン関連の特許出願をみると分かります。

出典:https://junyahirano.com/about_blockchain_patent/

ブロックチェーンが社会にもたらすもの

次に、ブロックチェーンの技術はどんなことに役立てることができるでしょうか。

ブロックチェーンは情報セキュリティの要として注目されています。情報セキュリティの三原則はCIAと呼ばれる、機密性、完全性、可用性ですが、この三原則から今後の実用例を考えてみましょう。

ãæå ±ã»ã­ã¥ãªã㣠CIAãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0509/15/news002.html

例えば、こんな事が可能になるとされています。

  • ネット投票
  • 生体情報による決済
  • 個人間送金や国際送金のスピード向上やコスト削減

ネット投票ですが、昨年つくば市では、国内初のネット投票の実証実験を行い、本人確認やセキュリティの確保のためにマイナンバーカードとブロックチェーン技術を併用しました。

またKDDI日立製作所は、ブロックチェーン と生体ID認証を組み合わせたクーポン決済システムの実証実験を行い、異業種間のアライアンスの強化をサポートしています。

出典: https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2018/07/25/3279.html

 富士通は全銀ネットと協力し、ブロックチェーン技術「銀行間システム」を実証しています。銀行間で資金決済が必要になった場合、旧来の方法ではなく、決済用のデジタル通貨で送金を処理することにより、手数料や人件費などの送金コストを抑えることが期待されます。

å³ï¼å®è¨¼å®é¨ã¤ã¡ã¼ã¸

出典:http://pr.fujitsu.com/jp/news/2018/10/29-1.html

また国際送金においても、「コルレス契約」という旧来の送金方法があり、銀行間の送金経路が固定され、送金経路数が多ければ、手数料や日数が嵩んでしまうという課題がありました。この課題を打開するため、JPモルガンブロックチェーン決済プロジェクトINNを立ち上げ、世界75行が参加します。

今後のシナリオ

政府はブロックチェーン活用にまだまだ及び腰ですが、米国を中心に政府機関でもブロックチェンの実用実験や研修は年々加速しています。もし政府主導で、ブロックチェーンソリューションに乗り出せば、数々の社会問題にかかる社会コストを削減できる可能性は大いにあります。

例えば、下記のような市民サービスがネットで享受できたらどうでしょう。ブロックチェーンによるセキュアな管理のおかげで、情報はトークン化されて盗聴されず、スマートコントラクトによって、自動で条件確認や履行が行われるとしたら、劇的にコストを削減できると思いませんか。

  • 出産一時金や児童手当の手続きや管理
  • 失業給付の手続きや管理
  • 国民保険の手続きや管理
  • 年金の手続きや管理
  • 介護保険の手続きや管理
  • 高齢者医療保険の手続きや管理
  • マイナンバーの手続きや管理

もし政府が本気でこういった施策に乗り出せば、民間でもブロックチェーンソリューションは爆発的に普及することでしょう。先の出願数を国別でみると分かるように、中国は既に政府レベルで動いています。

所感

個人的には、ブロックチェーンで新たなユーザー体験を創造できると思います。今までと同じ見せ方で実用化してもブロックチェーンの価値は薄まります。例えば、従来のクレカ決済や電子マネーを裏でブロックチェーン化したところで、ユーザー体験が変わらなければ大きな効果は期待できません。

ユーザ体験の創造によってイノベーションが生まれます。かつてはアナログだったものが、ここ数年でネットで動画を視聴できたり、スマホで新聞を読めたり、SNSで連絡が取れるようになりました。それと同じように、近い将来、生体認証による電子決済ができたり、選挙でスマホ投票ができたり、ネットで公的な手続きができるような、今までになかったユーザー体験ができることを期待しています。

 

キャッシュレス率は上昇するが、政府の思惑通りにいかない理由 

ãã­ã£ãã·ã¥ã¬ã¹ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

出典:https://tatsumushi.work/?p=1283

こんにちは、Taikiです。 

現在QRコード決済の種類は増えていますが、日本のキャッシュレス率はまだ20%程度です。

そもそもキャッシュレスを普及させたい理由は何でしょうか。またクレカや電子マネーなど既存のサービスがありながら、QRコード決済が出てきたのはどうしてでしょうか。そして、キャッシュレス率が90%の韓国と日本とでは何が違うのでしょうか?

今回はそれらを考察し、キャッシュレスの行く末に迫りたいと思います。

目次はこちらになります。

キャッシュレスを普及させたい理由

政府の狙い

政府にとって、キャッシュレス普及の狙いとは何でしょうか。それは主に安全性とコスト削減、財源の確保にあります。

  • 安全性の強化:強盗や偽札、脱税やマネーロンダリング防止
  • コスト削減:ATMや現金輸送、現金の鋳造コスト削減
  • 財源確保:脱税防止とインバウンド需要拡大に伴う税収アップ

近い将来、国内の景気は冬の時代に突入すると予想していますが、その前にキャッシュレスを普及させたいのが政府の本音です。キャッシュレスを急ぎたいインバウンド需要の具体例はこちらになります。

今後日本は少子高齢化に伴い、雇用や消費の面で、他国への依存が強くなりますが、外国人の受け入れを円滑にするためには、キャッシュレスを拡充することが求められます。

例えば、中国人の殆どはQRコード決済を利用し、韓国人や欧米人もクレカを利用しています。中国の2017年のモバイル決済金額は約3450兆円、同国の主要なキャッシュレス決済サービスであるAlipay9億人の利用者がいます。この巨大市場のインバウンド需要は無視できません。

また、外国人労働者もデジタルマネーで給与を支払ってもらえれば、帰国後もそのまま使用でき日本の往来も活発になることが期待されます。

https://www.dir.co.jp/report/asia/asian_insight/20181228_020557.pdf

企業の狙い

では、キャッシュレスサービスを提供する企業はなぜ普及させたいのでしょうか。それは主に収入源の確保や情報収集ノウハウの確立にあります。 

  • ストック収入:入金手数料、決済手数料
  • 情報の収集:消費者の属性や行動パターン
  • ノウハウ確立:キャッシュレス技術の確立

企業として、安定した収入はもちろんのこと、情報の収集やノウハウを得ることで、新しいビジネスチャンスが生まれます。

消費者の情報とキャッシュレスという決済方法、更に5Gなどの技術を組み合わせれば、今までにないビジネスが形成されるでしょう。楽天ソフトバンクauDocomoの通信会社がもれなくキャッシュレスサービスを展開する理由もここにあります。現在、各社はポーカーのように、強い役をだすために有利な手札を集めています。

では、クレカや電子マネーなど既存のサービスがありながら、QRコード決済が出てきたのはどうしてでしょうか。

まずは、経営者がキャッシュレス決済を導入していない理由をみてみましょう。

決æ¸ææ°æãé«ãããã¨ããçç±ã31ï¼ã§å¨ä½ã®1ä½

出典:https://news.cardmics.com/entry/linepay-fukyu-shinai/

コスト面が特に目立ちますが、資本が少ない中小企業にとって、コストの増加や入金サイクルが長いことは財務的に良くありません。国内にある企業の大半は中小企業ですので、今後キャッシュレス率を向上させていくためには、中小企業に普及していくことが重要になります。

f:id:vtaiki:20190514225113p:plain

そこで、そのデメリットをカバーできるサービスを提供することで、登録店舗や利用者を囲みこみたいため、各社からQRコード決済がでてきました。種類は豊富にありますが、各社によってさまざまなメリットがあります。

f:id:vtaiki:20190514225228p:plain

出典:https://pipitchoice.jp/qr-comparison/

 更に経産省も、ボトルネックである中小企業を対象にキャッシュレス導入のための補助金政策を打ち出しています。

www.meti.go.jp

韓国でキャッシュレスが急速に広がった理由

少し話を変えて、キャッシュレス率が90%を誇る韓国の背景について、説明しましょう。

韓国では、1997年の東南アジア通貨危機をきっかけに、消費活性化と脱税を目的に、キャッシュレス化を国策としました。具体的に、クレジットカード利用額の一部所得控除宝くじ権利の付与、店舗でのクレカ取り扱いを義務化し、急速に国内で広がりを見せました。

日本でも同じことをすれば普及すると思いますが、日本政府はそれを良しとしないでしょう。日本は強硬政策を嫌う傾向にあります。政策を強行し、店舗を廃業に追い込んだり、関係協会の反発を買えば、野党の攻撃材料となり与党の立場が危うくなります。以前も記事にしましたが、UberCarなど白タクを解禁しないのもそのためです。 

vtaiki.hatenablog.com

今後のキャッシュレスの行く末

今後日本はキャッシュレス率を40%まで引き上げることはできるでのしょうか。

結論をいうと、目標である2025年までに達成できるかは不明ですが、いつかは達成できるでしょう。しかし先にあげた政府の狙いは中々思い通りにいきません。

確かに若年層にはキャッシュレスが広まり、徐々に利用率は向上していくでしょう。しかし政府の掲げる狙いの中で、特に重要なポイントは財源の確保です。すなわち、企業や個人のキャッシュフローの透明化を図り、脱税を防止し、税収をアップすることです。そのための重要課題は、割合の大きい中小企業高齢者世帯にキャッシュレスを普及させることですが、それがうまくいきません。なぜでしょうか。

企業にとって、キャッシュレスは負担以外の何物でもありません。新たなキャッシュレスサービスを導入しても現金取引がなくなるわけではありません。ただ負担が増えるだけです。それはドン・キホーテの例をみても分かります。

www.ryutsuu.biz

また、中小企業にとって、キャッシュレスにすることは不利に働くことが多いでしょう。資本が少ない企業にとって、手元にキャッシュがないことは死活問題だからです。いざというときに、運転資金が途絶えると倒産の憂き目にあいます。

次に、資産を多く持つ高齢者はなぜキャッシュレスに消極的なのでしょうか。一番の理由はよく分からないからです。しかも日本ではキャッシュレスの種類が多すぎて、更によく分からなくなっています。ジャムの法則というものがありますが、、種類が多すぎると、逆に選択する意欲を失ってしまうのです。

また、高齢者はなぜタンス預金を好むのでしょうか。その答えは、高齢者が心配していることを想像するとよく分かります。一番の理由は健康です。高齢者はいつ健康を損なうか分かりません。認知症や痴呆などの診断が下りた場合、その銀行口座は凍結され引き出すことができなくなります。債務整理、相続、不正利用が凍結の主たる目的ですが、解除するには弁護士に依頼するなど煩雑な手続きが必要です。こういった事態に備え、タンス預金者は今も増えています。その結果、オレオレ詐欺にだまし取られる危険性が高くなり、政府の狙いの一つである、安全性の確保も難しくなります。

ãã¿ã³ã¹é é æ¨ç§»ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

ããªã¬ãªã¬è©æ¬ºã被害ç·é¡ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

出典:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39300560S8A221C1CC0000/

こういった事情により、キャッシュレスは、全体の核となる中小企業や高齢者に遅々として普及が進まず、政府の目論見は中々思い通りにはいかないと考えます。

まとめ

政府にとって、キャッシュレスを最も普及させたい中小企業や高齢者は、根強い銀行不信や将来の不安のため、今後も手元から現金を離すことはないでしょう。そう考えると、政府の掲げる利用率40%の達成はまだまだ先になるのかもしれません。

 

【応用編】自己資本比率と収益性が必ずしも連動しない理由

ãèªå·±è³æ¬æ¯ç è¨ç®å¼ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

出典:http://www.kabutore.biz/jikosihonhiritsunokeisan.html

こんにちは、Taikiです。

前回は、決算書を読み解くために抑えるべきポイントを紹介しました。 

vtaiki.hatenablog.com

今回は、自己資本比率が収益性と必ずしも連動しない理由に迫ります。企業の特性や財務体質を理解する上で大事な視点かなと思いましたので、ぜひご覧ください。

あくまで個人の見解ですので、ご承知おきください。

目次はこちらになります。

ある業種の自己資本比率が高い理由

前回の記事で、自己資本比率の定義をこう設定しました。

自己資本比率:返済不要なおカネの比率

では自己資本比率の高い業種とは何でしょうか。

業種の平均をみると、医薬品、鉱業、情報・通信、精密機器、化学などが高めです。特に自己資本比率の高いアンジェスという医薬品会社をみてみましょう。同社の業績を見ると、赤字が続きキャッシュフローをみても典型的な業績不振型です。

こちらは同社の損益計算書となります。

f:id:vtaiki:20190507223109p:plain

出典:https://www.anges.co.jp/ir/ir_library/_pdf/earning18_4q_i4pb.pdf

にも関わらず、なぜ同社は自己資本比率が高いのでしょうか。その理由は、新株発行予約で資金調達を行い、自己資本が潤沢にあるからです。株主からの資金が集まれば自ずと自己資本比率が上昇します。

では、業績不振な企業になぜ投資家が集まるのでしょうか。アンジェスは、次世代の医療として注目を集める遺伝子治療の研究開発を専門しています。医療は景気に左右されず長期的に安定を見込める市場です。そして、国内では少子高齢化新興国でも経済の発展に伴い医療市場が拡大しています。新薬が発表されれば、国内だけでなく海外にも水平展開が期待され、そのロイヤルティ収入は莫大なものとなり、株価にも影響します。投資家はそれを期待しています。

加えて、アンジェスは主力のHGF遺伝子治療薬が厚労省条件付きで承認されました。もし正式に承認されれば国内で初の遺伝子治療になります。そして、HGF遺伝子治療薬とは、三大生活習慣病である糖尿病の治療にも効果が期待されています。

www.anges.co.jp

一方で、株主資本に頼らなくても、そもそも負債が少なければ、自己資本比率は高くなります。最近では、キーエンスローム村田製作所など特定の分野で高いシェアを持つ企業が上位に並びます。

株主から圧倒的な支持を得る企業、自力でキャッシュを稼ぐ企業、どちらも自社の強みを軸に自己資本比率を高めていることが分かります。

ある業種の自己資本比率が低い理由

では逆に自己資本比率の低い企業を見てましょう。銀行、電気・ガス、海運、保険などがあります。例えば、銀行はなぜ自己資本比率が低いのでしょうか。 銀行の企業活動をまとめてみると理解しやすいと思います。

  • 資金調達:顧客に預金してもらう
  • 投資活動:預貯金を原資にして融資する
  • 営業活動:融資から金利を得る

銀行の投資活動には巨額の原資が必要です。その原資は顧客の預貯金であり、預貯金は銀行にとって負債となるため、預貯金が多いと自己資本比率が下がります。

f:id:vtaiki:20190430152157j:plain

バブルが崩壊し、北海道拓殖銀行山一証券が破たんした結果、銀行業に必要な自己資本比率の基準が更に厳しくなり、貸し渋りが目立つようになりました。少し話は逸れますが、日本が貸し渋りの時代にアメリカではIT革命がおき、日米間で設備投資やイノベーションの差が生まれ、GAFAGoogle, Apple, FacebookAmazon)のような巨大IT企業が育つ下地ができたとも言われます。

さて、以前よりも融資が難しくなった銀行は、どういう行動を取るのでしょうか。例えばこんな行動を取るのではないでしょうか。

  1. 冒険しない:巨額の融資を控え、信用度の低い企業には貸し渋る
  2. 投資してもらう:預金ではなく投資商品にお金を使ってもらう

上記1の「冒険しない」の反面、企業間の出資が活発になりました。例えば、ソフトバンクは、ハイリスクなベンチャー企業やスタートアップ企業に積極投資を続けています。

www.stockclip.net

そして、ソフトバンクの孫氏が、まだスタッフ10人、利益0の会社に20億円を出資しIPOで5兆円に大化けしたという例もありますが、それが中国EC大手のアリババだったことはあまりにも有名です。

上記2の理由はシンプルです。投資は融資ほど与信調査が不要で利益率も高いからです。三菱UFJフィナンシャル・グループ社の損益計算書をみると、役務取引等収益が貸出金利息の次に大きいため、銀行の大きな収入源になっていることが分かります。銀行の方が投資商品を勧めてくる理由もここにあるのではないでしょうか。

f:id:vtaiki:20190507220620p:plain

 出典:https://www.mufg.jp/dam/ir/fs/2018/pdf/summary1812_ja.pdf

まとめ

話をまとめると、自己資本比率決定要因として、大きく2つのパターンがあることがわかりました。

  1. 業界の特性として、自己資本比率がそうなってしまう企業
  2. 業績の良し悪しで、自己資本比率がそうなってしまう企業

上記1は、先述したバイオ医薬品や銀行などがその例です。2は、自社の強みと特定分野で高いシェアをもつ企業、又はどこかの振袖レンタル会社のように債務超過のため突然仕事を放棄する企業などです。

自己資本比率が収益と必ずしも連動しない理由は、上記1のような企業が該当します。そして、自己資本比率をみると、銀行、電気・ガス、保険など社会にとって必要不可欠なサービスは、自転車操業にも似た、他人資本を回転させて事業が成り立っていることも垣間見えるのではないでしょうか。

【基本編】決算書を読み解くための判断軸

こんにちは、Taikiです。

株主や投資家はなぜ決算書を見るのでしょうか。利益を得るためだとすると、投資先の未来を予測しなければいけません。そのためには判断材料となる情報を集めますが、その一つが決算書となります。

では何を軸に決算書を見るのでしょうか。今回はこの点に迫りたいと思います。決算書の理解を深める一助にして頂ければ幸いです。

あくまで個人の見解ですので、ご承知おきください。

目次はこちらになります。

※長文で読みにくい方は、太字を中心に読み進めて頂くと良いと思います。計算式も掲載していますが、その求め方はさほど重要ではありません。

財務三表の役割

決算書の中でも最も重要となるのが、こちらの「財務三表」になります。

財務三表は、企業活動の流れと関連付けるとイメージしやすくなります。

まず企業は資金調達をした後に、投資活動をして建物や設備を購入し、営業活動をして売上や利益を出します。そして、その結果は財務三表に計上されます。

財å3表

出典:決算書とは : 東京商工リサーチ

企業の活動と財務三表の関係が分かると、各々の役割も見えてきます。

貸借対照表について

貸借対照表には、右に資金調達で得たおカネが計上され、左に投資活動で購入したビルや設備が計上されます。つまり、どうやってお金を集めて何に使ったかを確認できます。

企業を評価する上で、お金をどう集めて何に使ったかを知ることが、なぜ重要なのでしょうか。

それは健全な財務体質かどうかを確認することができるからです。例えば、銀行の融資や社債の発行で集めたお金か、株主から集めたお金かで外部への財務依存度が分かります。また、お金の使い道が預金や有価証券などの流動資産か、工場や設備などの固定資産かで借金の返済能力を計ることができます。

損益計算書について

次に、損益計算書ですが、営業活動で発生した利益や費用が計上されるため、どれだけもうかったか、を確認することができます。

「どれだけもうかったか」では少し曖昧なので、具体的に説明します。「もうかった」の指標は利益で表すことができます。ここで注視すべきは、本業の利益となる「営業利益」になります。この販管費は、モノやサービスを売るために必要な経費や運営管理にかかる費用です。

ちなみに「経常利益」には、株式の配当金や不動産収入、借金の支払利息が含まれるため、投資や土地転がしに熱心だったバブル期はこの利益が重視されていました。 

キャッシュ・フロー計算書について

最後に、キャッシュ・フロー計算書ですが、資金調達や投資活動、販売活動で発生したおカネの出入りが計上されるため、キャッシュ(現金)の増減を確認することができます。 

企業を評価する上で、キャッシュの増減を知ることがなぜ重要なのでしょうか。

それは、「おカネ」の実態を知ることができるからです。例えば損益計算書は、実際にお金をもらっていない「つけ払い」でも計上することができますが、キャッシュ・フロー計算書には計上できません。そうやってお金の出入りをシビアにチェックできるため、損益計算書の弱点を補うことが可能です。

こちらは、企業のライフサイクルとキャッシュフローを表した表になりますが、キャッシュフローの状態で、会社の状況を知ることができます。 

ãã­ã£ãã·ã¥ãã­ã¼ ä¼ç¤¾ã®ã¿ã¤ããã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

出典:キャッシュフローに着目する - 給与計算アウトソーシング・委託、経理事務代行、アメリカでの企業設立のための業務委託ならPASONA N A

①本業がまだ軌道に乗らず借金で資金繰りしている

②本業でキャッシュを生み、更に資金調達して積極的に投資している

③本業でキャッシュを生み、更に投資を行い借金も返済している

④過当競争下にいる

⑤本業が不振で、資産売却や謝金(財務が+)で資金繰りをしている

企業を評価するための基本的な判断軸

ある企業が将来生き残れるか、をどうやって判断できるでしょうか。私はこちらのポイントを軸に判断することにしています。

  • 財務:競争下で経営体力を維持できる安定した財務基盤であること
  • 業績:特定分野で競争優位性を持ち、実績に裏打ちされていること
  • 戦略:自社の強みを軸足して市場ニーズに応えることができること

財務は、いかに外部に依存しない健全な財務体質ができているか、をみています。業績は、自社の強みを生かし、いかに少ない費用や資本で効率的にもうけることができるか、です。最後に戦略は、自社の強みを軸にして市場の構造に逆らわず事業を行えるか、がポイントになります。 

企業を評価するための具体的な指標

上記の「財務」「業績」「戦略」を決算書の指標で置き換えてみましょう。

財務を表す指標

まず財務ですが、こちらの指標で財務の良し悪しを判断することができます。

自己資本比率について

自己資本比率は、返済不要なおカネの比率を表しています。貸借対照表にある「純資産合計」と「負債純資産合計」から求めることができます。

自己資本比率(%) = 純資産合計(=自己資本÷ 負債純資産合計(=総資本)

自己資本比率をみることで、いかに外部に依存しない財務体質か、を確認することができます。

f:id:vtaiki:20190430152157j:plain

流動比率について

流動比率は、借金を返済する能力を表しています。貸借対照表にある「流動資産合計」と「流動負債合計」から求めることができます。

流動比率(%) = 流動資産合計 ÷ 流動負債合計

流動資産とは1年以内に現金化できる物、流動負債とは1年以内に返済する物を表しており、借金がすぐ返せるかどうか、を確認することができます。

f:id:vtaiki:20190430152424j:plain

無形固定資産比率について

企業がどれだけ買収に積極的かを表しています。貸借対照表にある「のれん及び無形資産(無形固定資産」と「資産合計」から求めることができます。

無形固定資産比率(%) = のれん及び無形資産(無形固定資産)÷ 資産合計(純資産)

この指標からわかることは、買収先の経営状況が悪化した際の影響がどれくらい大きいか、です。買収された企業の業績悪化などにより、減損が特別損失あるいは営業損失として計上されます。

「のれん」とは買収先企業の信用力やブランドといった、目には見えない価値に充てられた買収価格のことを言います。M&Aをした年には、一気に残高が膨らみます。近年では、大型買収を繰り返したソフトバンク「のれん」が4倍以上も増し、以前は東芝日本郵政が巨額ののれん減損を出しました。

業績を表す指標

次に業績ですが、こちらの指標で業績の良し悪しを判断することができます。

  • 原価率
  • 営業利益率
  • ROEROA
  • 売上高営業CF比率
原価率について

原価率とは売上高に占める原価の割合です。損益計算書にある「売上原価」と「売上高」から求めることができます。

原価率(%) = 売上原価 ÷ 売上高 

原価率の重要度は業種によって異なりますが、例えば、飲食店や食品業界にとっては、原価率を下げることがとても重要です。

営業利益率について

営業利益率は、本業でどれだけもうけたか、を表す指標です。損益計算書にある、「営業利益」と「売上高」から求めることができます。

営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 売上高

営業利益率で分かることは、原価だけでなく人件費や販売管理費も考慮されているため、より洗練された「もうける力」を知ることができます。

ROEROAについて

ROAは、Return On Asset の略で、総資産利益率といい、全ての資産を使ってどれだけもうけたか、が分かります。分母は貸借対照表の「総資産」、分子は損益計算書の「当期純利益」を使い、求めることができます。

ROA(%) = 当期純利益 ÷ 総資産

一方、ROEは、Return On Equityの略で、自己資本利益率といい、株主のおカネを使ってどれだけもうけたか、が分かります。こちらも分母は貸借対照表の「自己資本」、分子は損益計算書の「当期純利益」を使い、求めることができます。

ROE(%) = 当期純利益 ÷ 自己資本(=純資産)

ROAROEは、どちらも経営効率がいかに高いかを表す指標ですが、総合的に判断すると、ROAを指標にした方が良いでしょう。なぜなら、ROEは、株主資本(=自己資本)で純利益を割った値になるため、主に投資家が使う指標になります。一方、ROAは、負債を含めた総資産で割った値なので、全体を評価した結果となり、経営者や投資家が使う指標になります。

出典:中小企業が気にすべきなのはROEよりROA! 計算式や意味まとめ – 谷口孔陛税理士事務所

また負債が大きく株主資本が小さい場合、ROEの数値は高くなるが、自己資本比率は低くなるという現象が生じます。下の表では、A社よりB社のROEが高いですが、負債が大きい分、B社の自己資本比率が低いという結果になります。一方、両社のROAは同じ結果になります。

出典:中小企業が気にすべきなのはROEよりROA! 計算式や意味まとめ – 谷口孔陛税理士事務所

 売上高営業CF比率について

この指標は、企業がどれくらい現金を稼いでいるか、を表しています。分母は、損益計算書の「売上高」を、分子はキャッシュ・フロー計算書の「営業CF」を使用して求めます。

売上高営業CF比率(%) = 営業CF ÷ 売上高(=営業収益)

この指標で分かることは、その企業がどれだけ現金商売か、です。例えば、自動車や不動産など大きな買い物をする時に、買い手は即金で支払いができないとします。銀行でローンを組み少しずつ支払うことにします。そうすると、完済までに時間がかかります。その結果、融資した銀行の売上高営業キャッシュフロー比率は、どうしても低くなってしまいます。

戦略を評価する指標について

最後に戦略ですが、残念ながら、これを評価する指標はありませんが、相対的に評価することは可能です。その評価方法には、内部要因外部要因に分かれます。

内部要因

内部要因とは、自社の強みを軸足にしているか、ということです。この点は、過去の記事をみて頂ければ幸いです。まさにRIZAPワークマンの業績の差は、自社の強みを軸足にしているか、の違いでした。

vtaiki.hatenablog.com

外部要因

外部要因とは市場ニーズの変化を意味しています。

例を挙げると、自動ブレーキの技術が進むと事故率が低くなります。その結果、困るのは損害保険会社です。実際に、自動ブレーキ割引が開始され、搭載車は保険料が割安になります。損保ジャパンが介護事業を始めた理由も、損害保険の成長が今後見込めないと判断したからだといいます。

また消費税増税で外食産業の冷え込みが予想されます。スーパーの食品や弁当持ち帰りは軽減税率の対象ですが、外食は増税の対象となり、割高感が浮き彫りになるからです。こちらについても、過去の記事に掲載しています。

vtaiki.hatenablog.com

そして、環境配慮のため、すかいらーくグループやマクドナルド、スターバックスは、プラスチック製ストローの廃止を決めました。その決定を受けて、日本製紙やカネカは代替サービスを開発しています。プラスチック製品の射出成型事業が縮小し、紙による代替サービスの成長が予想されます。

labbase.jp

こういった外部環境の変化に対応した戦略を打てる事が、その企業が生き残れるかを判断するポイントになります。

まとめ

最後に、これまでに挙げた、企業を評価するポイントを表にまとめました。

f:id:vtaiki:20190430145757j:plain
繰り返しになりますが、財務は、いかに外部に依存しない健全な財務体質ができているか、をみています。業績は、自社の強みを生かし、いかに少ない費用や資本効率的にもうけることができるか、です。最後に戦略は、自社の強みを軸にして市場の構造に逆らわず事業を行えるか、がポイントになります。 

次回はケーススタディとして、企業や業界によって見るべき指標をご紹介したいと思います。長文にも関わらず、最後まで読んで頂きありがとうございました。

高齢者が運転を続ける理由と事故を減らすための施策

こんにちは、Taikiです。

池袋の悲惨な事故を受けて、高齢者ドライバーの是非が問われています。

加齢により動体視力や判断力が衰え、運転に影響が出ることは周知の事実です。

にも関わらず、なぜ高齢者はハンドルを握り続けるのでしょうか。そして、高齢者の事故を防ぐためにはどうしたら良いでしょうか。今回は、その2点を考察します。

あくまで個人の見解ですので、ご承知おきください。

目次はこちらになります。

なぜ高齢者は運転を続けるのか

なぜ危険を承知で高齢者は運転するのでしょうか?まずはこの理由に迫りたいと思います。

身体能力の衰え

加齢に伴い、動体視力や判断力もそうですが、筋力や足腰など身体的にも衰えが見えます。また身体的な衰えは日常生活に直接影響します。

高齢者が運転免許を返納しない理由をみると、買い物や旅行、荷物の運搬など身体への負担が大きいものが中心にあります。

出典:https://www.google.co.jp/amp/s/www.sankeibiz.jp/business/amp/180613/prl1806131002013-a.htm

ライフステージの変化

定年を迎えた人は次に何をしたいと思いますか?

首都圏在住の30歳~69歳の男女を対象としたアンケートを見てみると、定年退職後にやりたいことのトップは「国内旅行」です。おそらく車の利用機会も増えるでしょう。自由な時間が多い分、乗車率も高いはずです。

出典:https://www2.fgn.jp/mpac/_data/8/?d=200710_02

経済的な理由

続いて年齢別の個人貯蓄残高をみると、やはり60歳以上であるシニア世代の貯蓄高が多いことが分かります。この財力が自動車の維持や車の買い換えを可能にしています。

f:id:vtaiki:20190426231647p:plain

出典:https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/urgency/report181213.pdf

一方で経済的に不安を抱える高齢者も、仕事のために車を運転する傾向にあります。配送用の軽トラックやバンを運転する高齢ドライバーをよく目にしますが、その背景にあるのは運送業界の人手不足です。

運送業界は、宅配取扱数の増加や高い離職率のため、慢性的な人手不足です。そのため、シニア世代を積極的に採用しています。また求職する高齢者にとっても仕事を選べる立場ではないため、運送会社への就職を決めます。今後も運送業で働く高齢ドライバーは増えていくでしょう。

なぜ高齢者の事故が問題なのか

近年、報道により高齢者の事故がよく目につきます。

警察庁の統計をみると、実際にはシニアより若い世代の事故件数が多めです。

f:id:vtaiki:20190427093348p:plain

出典:https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/H29zennjiko.pdf

 しかし事故の深刻さは高齢者がです。

こちらのグラフを見ると、確かに10代後半から20代前半の事故数は多いですが、75歳以上死亡事故数は群を抜いています。

事故を減らすための施策

どうすれば高齢ドライバーの事故を減らすことができるのでしょうか。

内閣府の統計をみると、今後75歳以上の運転免許証保有者は増加の一途をたどっています。したがって、高齢者の事故を減らすための対策は急務となります。

ãé«é½¢è é転å許 ä¿æçãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

出典:https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h29kou_haku/gaiyo/features/feature01.html

2014年の改正道路交通法により、75歳以上の免許返納が進められています。免許返納は事故率低下につながりますが、先に紹介した高齢者の運転事情を考慮すると、中々進まないでしょう。また返納後は、交通手段の代替サービスを提供する工夫も必要になります。

 安全運転サポート車(サポカー)の普及促進

仕事など経済的な理由で運転免許を返納できない高齢者も多いでしょう。更に、過疎地域で生活する人にとっては免許返納は死活問題です。

こういった理由を考えると、エコカー減税のようなサポカー減税を早期に開始し、サポカーへの乗り換えを推進することが急務になります。自動ブレーキ割引は既に始まっていますが、認知度の低さや金銭的メリットが不十分です。メリットを感じることができなければ、高齢ドライバーはいつまでも動かないでしょう。

交通手段の代替サービス

免許返納した後、「生活の足」を奪われた高齢者はどう生活すれば良いでしょうか。

免許返納を促進するためには、交通手段の代替サービスを提供するが必要です。いま議題にあるアイデアは、コミュニティーバスや乗り合いタクシー、公共交通機関の割引です。しかし共通の課題は、路線や運行時刻が決まっているため、自由度が低いことです。今後「生活の足」をなくした高齢者はさらに増加し、公共サービスで支えることは難しくなります。

以上を踏まえると、国はライドシェア解禁に動いても良いと思います。

ではライドシェアとタクシーは何が違うのでしょうか。米国のUberの例をみるとタクシーより料金が圧倒的に低いです。また一般人も配車サービスを行えるため、地域全体の配車カバー率が高まり、高齢者にとっても行動範囲が広がります。

気になるのは、運転者の「質」ですが、Uberのようにレビュー機能を付けると底上げが期待できます。むしろ、今のタクシー運転手の「質」にこうも個人差がある理由は、フィードバックや評価体制が不十分だからではないでしょうか。

現在、政府も「白タク営業」規制緩和を進めているようですが、残念ながらタクシービジネスの延長でしかありません。

www.sankeibiz.jp

まとめ

ライフスタイルの変化や身体能力の衰え、経済的な理由により、高齢ドライバーは今後も増え続けるでしょう。

免許返納だけでなく、サポカー普及促進やライドシェア解禁など今後は高齢ドライバーをサポートする多角的な施策が求められます。

メルカリが福岡で割安なシェアサイクルを運営する理由

f:id:vtaiki:20190421183216p:plain

出典:https://fukuoka.mypl.net/chuo-hakata/mp/info_chuo-fukuoka/?sid=62533

こんにちは、Taikiです。

「merchari」(以下メルチャリ)というサービスをご存知でしょうか。メルカリが始めたシェアサイクルサービスです。

2018年2月頃から福岡市で試験的に開始し、利用者も増え、自転車の台数や専用ポート数も増加しています。

シェアサイクルやカーシェアをはじめとした、シェアリングエコノミーは今後も伸びていくでしょう。こちらは今後予想されるシェアリングエコノミー市場の推移になります。

å½åã·ã§ã¢ãªã³ã°ã¨ã³ããã¼ãµã¼ãã¹å¸å ´

出典:国内シェアリングエコノミー、2022年度に1386億円…最大はカーシェア、伸び率はシェアサイクル 矢野経済研究所が予測 | レスポンス(Response.jp)

ちなみに、以前紹介したUber Eatsもデリバリーフードのシェアリングサービスになります。

vtaiki.hatenablog.com

さて、メルチャリに話は戻りますが、気になるのは料金です。メルチャリは1分4円で借りることができます。自転車レンタルの相場からすると、1分4円は安いでしょう。ドコモのバイクシェアが30分以内の利用で150円になります。

メルチャリはなぜこの料金でサービスを提供しているのでしょうか。また福岡でサービスを開始した理由は何でしょうか。今回はその理由に迫ります。

あくまで個人の見解ですので、ご承知おきください。

目次はこちらになります。

メルチャリの料金設定は採算度外視?

メルチャリの料金設定がどれだけ安いかを考察するために、メルチャリの売上を試算したいと思います。前提となる条件として、1台当たりの年間利用回数、1台当たりの平均利用時間を仮設定します。

  • 1台当たりの年間利用回数:671回 *1
  • 1台当たりの平均利用時間 :12分 *2

上記条件を前提とすると、メルチャリの年間推定売上はこちらになります。

2,000台 x 671回 x 12分 x 4円 = 64,416,000円 (約6千万円)

一方、同じ条件で見たドコモのバイクシェアの年間推定売上になります。

2,000台 x 671回 x 150円 = 201,300,000円(約2億円)

自転車の仕入や製造、販売活動費や人件費などは不明ですが、同じ条件で比較しても、売上金額はドコモの3分の1以下になります。 

儲けが少なくてもメルチャリを運営したい理由

では、なぜメルカリはシェアサイクルを始めたのでしょうか?

シェアサイクルは、本業のフリマビジネスとは異業種です。

その点について、ソウゾウ代表の松本氏はこう語ります。

「メルカリでは買って所有する世界から、買って売る世界に変えたいと考えている。これはあらゆるものが循環して無駄がなくなるということ。メルチャリでは、自転車を買って乗る体験から、皆で利用する、使いたいときに使う形になる」

こういった企業理念は、事業を始める目的にはなりますが、勝算なくして事業を始めることはできません。メルチャリにはどういう勝算があったのか、その戦略に迫ります。

ブランド戦略

メルカリとメルチャリのロゴを比較してみてください。英字だけみると一瞬見間違えませんか?

f:id:vtaiki:20190421183039p:plain

f:id:vtaiki:20190421182931p:plain

出典:https://www.mercari.com/jp/
出典:https://merchari.bike/

これが、メルカリがシェアサイクルを始めた理由の1つだと思います。名前が似ているため、特に宣伝しなくても勝手に話題が広がり、利用者の関心を集めることができます。

最近マクドナルドでビックマックジュニア」なる商品が販売されました。なぜビックマックなのにジュニアという名前を付けたのでしょうか。既出の商品名を踏襲することで、新商品よりも低いコスト同じ宣伝効果を得ることができるからです。メルカリもこの点に着目しました。

またシェアサイクルを駐車するポートという駐車場があります。ポートは福岡市内に点在し、移動する人の目に止まります。その性格上、宣伝や広告のコストをかけずに、ターゲットを絞って周知することができます。

こちらはメルチャリのアプリで見た、ポートの所在地です。博多駅天神駅を中心にポートがたくさん設置されています。

ãã¡ã«ãã£ãª ãã¼ã ç¦å²¡ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

出典:http:// https://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_sougou/article/404230/

料金設定の背景

ではなぜ1分4円でしょうか。シェアサイクルの強力なライバルは、地下鉄バスだと思います。主要駅である「天神駅」と「博多駅」の料金を見てみましょう。

  • 地下鉄 200円
  • バス  100円

天神駅博多駅の距離は、自転車で12分程度です。メルチャリを使うと48円ですみます。つまり公共の交通手段より半額以下で移動できます。

立地的な理由

ではなぜ福岡でしょうか。

東京や大阪、名古屋では、ドコモソフトバンクのシェアサイクルが既に利権を得ています。残された主要都市は福岡です。福岡は立地的にも平地が多くシェアサイクルに向いています。

しかし、福岡には、ofo(オッファ)mobike(モバイク)など、試験的な段階ですが、中国のシェアサイクル大手が参入していました。中国ではシェアサイクル文化が進んでおり海外にもビジネスを拡大していました。中国にとって、観光地の福岡は魅力的な市場です。

そして、福岡といえばソフトバンクです。ソフトバンクは中国大手のシェアサイクルと協業し、福岡や北九州の利権を間接的に得ようと考えていました。

こちらはシェアサイクル事業の構図です。

出典:早くも百花繚乱状態となっているシェアリングサイクル市場の動向 - ケータイ Watch

驚愕は、モバイクの料金です。30分50円!これはメルチャリの半分以下になります。

しかし、福岡市は、提案競技の結果、シェアサイクル実験事業の会社として、メルカリ選出しました。なぜでしょうか。

その理由は、安定した経営アフターサービスの違いです。中国のシェアサイクル市場は、過当競争に陥り、価格競争が泥沼化しました。収益や品質ではなく、市場の寡占化を目指す中国ビジネスは、収益性や財務の悪化、自転車の粗悪化、運用のずさんさが目立ち、いつしか海外市場から見放されました。

wisdom.nec.com

その点、メルカリは、圧倒的な知名度に加えIPOも果たし、カスタマーサービスの拠点も福岡に置き、アフターサービスの強化にも余念がありません。結果、軍配はメルカリにあがりました。

今後のシナリオ

現段階では儲けが少ないと思うメルチャリですが、今後予想されるシナリオを仮説してみました。

  1. コストを落とし利用数を上げ、薄利多売で利益を拡大する
  2. 福岡のシェアリサイクル市場を寡占化した後、値上げして利益を拡大する
  3. 別の地域や事業に水平展開する

1は、市場シェアが拡大すると、ビジネスに係るノウハウなどの経験がたまるため、コスト面で有利に展開できるようになります。台数やポート数を増やし利用数を上げれば、利益を拡大できるかもしれません。

2は、福岡市だけを市場として考えた場合に有効な手段です。料金の低い間に、主要な場所をポートで埋めつくし参入障壁を高くした上で、値上げします。寡占状態であれば、値上げ後の料金も浸透しやすいでしょう。最近、仙台のシェアバイク「DATE BIKE」も値上げしています。

3は、競争優位をもって別の地域や事業に進出するケースです。技術が進めば、おそらく自転車の動態管理やステータス管理などを遠隔監視できるようになるでしょう。そういった技術は、他のビジネスにも応用できるかもしれません。また別の地域に進出するときにも大きな武器になるでしょう。

 まとめ

シェアリングエコノミーの競争は外資系企業を巻き込み更に激化していくでしょう。常時監視下にないため、シェアリングエコノミーの難しさは、商品の品質維持にあります。先の中国企業のような品質の劣化は、顧客離れを意味します。利用者拡大とともに品質維持の効率化が求められます。

メルチャリでは、自転車の放置やパンクなどの故障を見つけた会員には、ポイントを付与するなどのサービスも始めています。品質を維持するためには、そういった仕組みづくりテクノロジーの利用が不可欠となるでしょう。

*1:1台当たりの年間利用回数は2017年度のドコモのバイクシェア利用実績を参考

*2:1台当たりの平均利用時間は「博多駅天神駅の距離/自転車の平均時速」で算出