業務改善で失敗しないためのフレームワーク思考

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こんにちは、Taikiです。

業務を改善するときに思いつくのが、ITサービスの活用です。そして、そのITサービスマネジメントのベストプラクティスが、ITILとよばれる世界共通のフレームワークです。

ITILITサービスマネジメントを実現するため、ITサービスの品質向上、中長期的なコストの削減などを目的として実在する企業、サプライヤ、コンサルタントなどからITサービスに関する実際の運営方式やノウハウを収集し、書籍化したもの。

出典:Wikipedia

このITILを実践し効果を発揮すれば、例えば、こんないい事があります。

  • 課題が体系化されているため、漏れを防げる
  • 実行プロセスの段階が分かるため、手戻りを防げる
  • 責任や役割を明確にできるため、後々のトラブルを防げる
  • サービスの結果を測定し継続的に改善できるため、ニーズの変化に対応しやすい

しかし、この優れたベストプラクティスにも難点があります。それは分かりにくさです。

  • 実例で説明されていないため、言いたい事が分からない
  • 似たような表現が多いため分かりにくい(変更管理、変更提案、変更要求など)
  • オリジナルは英国のため、翻訳に限界がある

この分かりにくさを我慢して勉強すると、ロジックではなく記憶に頼った学習になるため、現場で応用が利きません。本来フレームワークとは、異なる場面でもそのノウハウを再利用できるものです。良い部品を再利用すれば短い時間で品質の良いモノが仕上がります。同じように、このITILのノウハウを効果的に応用できるよう、実用性重視で解説することが本記事の狙いです。

しかし、労力の関係上、ここでは上流プロセスであるサービスストラテジーとサービスデザインのみを取り上げ、その上位概念の意図を汲み取ることに留めます。残りの3プロセスと具体的なハウツーについては、ITILの参考書をお読みください。

業務改善するときには幾つかステップがあります。ITILはこちらの5つを基本プロセスとしています。

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各プロセスの狙いは何でしょうか。

サービスストラテジー

業務を改善するときに、最も大事な点は何でしょうか。

それは投資以上の成果を出すことです。そのために戦略を策定します。それがサービスストラテジーの狙いです。そのサービスストラテジーを成功させる要因は、大きく4つあります。

上の言葉を聞いて、戦略にどう結び付くか、連想できますか。。これがITILの分かりにくさです。しかし、これに質問を付与すると少しわかりやすくなります。

  • 事業関係管理 ⇒ 顧客のニーズは何か?
  • 需要管理 ⇒ どのくらいの需要があるか?
  • サービスポートフォリオ管理  ⇒  どのくらいのリソースが必要か?
  • 財務管理 ⇒ 予算はいくら必要か?

顧客のニーズは何か?(事業関係管理)

絶えず変わり続ける顧客のニーズを的確に捉え、サービスを提供することは困難です。

この変わり続ける顧客ニーズの変化に応えるコツが、顧客と良好な関係を構築することです。そのためにどうするか、それは顧客の数だけ答えがあります。リスポンスの速さを見るところもあれば、対応の丁寧さを見るところもあるでしょう。

例えば、営業担当者を変えてみると顧客から違うリクエストが出てくる事もあります。聞き手の視点が変わると話し手のアウトプットも変化し、思ってもいなかったニーズが見えてくることがあります。人対人は定性的な要素が多分にあるため、顧客との関係作りは人の相性も大きく関係します。

どのくらいの需要があるか?(需要管理)

顧客のニーズを掴んだ後は、そのサービスの需要がどれ程あるかを測定します。それが需要管理です。需要を測定する狙いは、投入するリソース(ヒト・モノ・カネ)の量を見極めるためです。その需要を測定するコツは、顧客の事業パターンを把握することにあります。例えば、夏場にビールやアイスが売れ、冬にケーキが売れるようなものです。

どのくらいのリソースが必要か?(サービスポートフォリオ管理)

需要を測定できたら、必要なリソースの投入量を決めます。但し、特定のサービスに人員や設備を過度に使うと、別のサービスレベルが低下します。そうならないために、サービスの棚卸を行う段階がサービスポートフォリオ管理です。リソースは有限です。優先度やサービスの特性に応じて投入するリソースの量を決めます。

棚卸を行う1つ目の狙いはリソース投入の優先順位を決めることですが、2つ目の狙いは、新しいサービスを既存の資源で賄えるかを見極める事です。これができるとコスパが飛躍的に向上します。

3つ目の狙いは、業務プロセスの棚卸を行うことです。データを移行するときは、データを整理します。例えば、クラウドにデータを移行する前も、整理してスリム化できればそれだけ運用コストを削減できます。業務を自動化したいときもプロセスを簡素化することで、より短いソースコードで実装することができます。

予算はいくら必要か?(予算管理)

投入するリソースの量がきまると、その予算を見積もることができます。戦略策定の目的は、投資以上の成果を出すことです。それを考慮し予算の編成を行います。

サービスデザイン

戦略を策定した後は、その戦略通りに業務を改善できるよう業務設計します。そのためには限られた予算で業務を改善するためにサービスとコストのバランスを決めます。そのバランスを調整するプロセスがサービスデザインです。そのサービスデザインの成功要因は大きく8つあります。

  • サービスレベル管理 ⇒ サービスの手厚さと責任分界点は?
  • 可用性管理 ⇒ サービスの利用時間帯は?
  • キャパシティ管理 ⇒ どの程度のキャパが必要か?
  • サービス継続性管理 ⇒ 有事の際の復旧リミットは?
  • 情報セキュリティ管理 ⇒ 機密情報や秘匿情報の取り扱いルールは?
  • サプイライヤ管理 ⇒ どこにどの業務を任せるか?
  • サービスカタログ管理 ⇒ サービスの存在を知ってもらえているか?
  • デザインコーディネーション ⇒ 誰が全体の責任をもつか?

サービスの品質と責任分界点は?(サービスレベル管理)

サービスレベル管理は、顧客とサービスの手厚さを決める段階です。取り扱うサービスの種類、サービスを受ける対象者、対応時間などを決めます。ここまでをサービス提供者が行い、ここからは顧客が行うなどと責任分界点を決めますが、こういった取り決めをSLAと言います。

サービス水準合意 (Service Level Agreement, SLA) とは、サービスの提供者とその利用者の間で結ばれるサービス水準に関する合意である。 サービスレベル契約と言われることもある。通信サービスやコンピュータ・アプリケーション・サービスなどで、サービスの定義、内容、範囲、品質、達成目標、稼働率などを記述する。具体的な数値として平均故障間隔(MTBF)、平均修復時間(MTTR)などを利用する。

出典:Wikipedia

SLAを設定する理由は2つあります。予算を越えない事と後で揉めないためです。

SLAを決めずにサービスを提供すると、顧客から「これもやってくれない?」とリクエストを追加されます。SLAがないからと何でも安請負してしまうと、金額は変わらないのに作業時間ばかりが増え、予算を圧迫します。

逆にSLAを決めていないからと、リクエストを突っぱねると顧客の不満は増幅し、次の契約更改で仕事がなくなる可能性もあります。

こういった事態を避けるために業務を設計するときはSLAを決めます。

サービスの利用時間帯は?(可用性管理)

先で決めたSLAを達成するために、まずサービスの提供時間を決めます。

可用性管理の説明はこちらです。

可用性(Availability)とは、システムを障害(機器やパーツの故障・災害・アクシデントなど)で停止させることなく稼働し続けること、またはその指標のことをいいます。
長い時間、システムを稼働し続けられることを高可用性(High Availability)ともいいます。

サービスの提供時間を決める理由は、高いコスパでサービスレベルを達成するためです。24時間365日、システムを無停止で維持することは不可能です。そうでなくても、高可用性を維持するにはコストがかかります。

ビジネスの活動時間を把握し、サービスの提供時間を必要最小限に絞ることができれば、それだけ可用性を維持しやすくなります。逆に壊れた時のビジネスインパクトが大きいポイントにホットスタンバイを設けるなどのコストを惜しんではいけません。

どの程度のキャパが必要か?(キャパシティ管理)

ここでは可用性を維持するためのキャパシティを決めます。キャパシティとは、作業員やデバイスの数、ネットワークの帯域やストレージ容量を指します。

キャパシティ管理の狙いは、安定性とコストのバランスを保つ事です。安定稼働を考えるあまり、過剰投資でオーパースペックでになったり、コストを意識し過ぎてスペック不足になることを避けます。

キャパシティ管理の精度を上げるためには、需要管理もさることながら、拡張性や柔軟性を持たせることです。例えば、オンプレにサーバーを購入する場合、スペックの変更に限界があるため、、需要変化に十分に対応できません。しかし、レンタルサーバーにしたりクラウドにすると需要に応じてサーバーの増強や縮小も柔軟にできます。

有事の際の復旧リミットは?(サービス継続性管理)

通常の運用だけでなく不測の事態も考慮にいれた設計が必要です。すなわち災害など有事の際にいつまでにどのサービスをどの水準まで復旧させるかを決めることです。それがサービス継続性管理です。

なぜ滅多に起こらないことのために復旧時間や復旧レベルを緻密に決めないといけないのでしょうか。それはデータの消失や復旧時間の遅延がビジネスにとって致命傷になるからです。例えば、顧客があるベンダーにデータを預けた時に最も心配する事は、預けたデータの漏えいや紛失です。もしこれが発生すると社会的な信用が失墜し市場から退場することもありえます。それを担保する行為がSLAです。そして、そのSLAで合意した条件を満たすために、サービス継続性管理で復旧時間や復旧レベルを決めます。

よく考えると、サービス継続性管理は保険と似た性格をもっています。保険はリスクの頻度やインパクトに応じて保険料が高くなります。同じように重要なデータやシステムには相応の投資が必要です。しかし、全てにお金をかける必要はありません。例えば、プリンタが故障して業務が完全にストップすることは考えにくいでしょう。継続性管理の目的は、あくまで高い費用対効果でビジネスインパクトを最小限に留めることです。

機密情報や秘匿情報の取り扱いルールは?(情報セキュリティ管理)

機密性や秘匿性の高い情報には、誰にアクセス権を付与するか、誰がアクセス権を付与するか、など情報セキュリティ方針を確立する必要があります。この情報セキュリティ方針は、社会のデファクトスタンダードとなっておいます。今や情報サービスを取り扱う企業はISMSやプライベートマークなどを取得していないと後ろめたさを感じる時代です。

では情報セキュリティ管理の狙いは何でしょうか。情報の3原則とはCIA(完全性と機密性、可用性)です。すなわちセキュリティとコスト、使い勝手のバランスを取ることです。セキュリティをガチガチにし過ぎると生産性の足かせとなり、緩すぎると深刻な事故を招きます。そのバランス感覚が重要になります。

情報セキュリティは、JIS Q 27002(すなわちISO/IEC 27002)によって、情報の機密性、完全性、可用性を維持することと定義されている[1]。それら三つの性質の意味は次のとおりである[2]。

・機密性 (confidentiality): 情報へのアクセスを認められた者だけが、その情報にアクセスできる状態を確保すること
・完全性 (integrity): 情報が破壊、改ざん又は消去されていない状態を確保すること
・可用性 (availability): 情報へのアクセスを認められた者が、必要時に中断することなく、情報及び関連資産にアクセスできる状態を確保すること

出典:Wikipedia

どこにどの業務を任せるか(サプライヤ管理)

SLAや可用性、キャパシティに継続性、これまで取り上げた成功要因を実現するための選択肢が幾つかあります。外部にアウトソースするか、内製化か、またはその両方を取るかです。これを決める段階がサプライヤ管理です。費用対効果を考え、事業のニーズに応えるために、どう提供するかを決めます。思いつく両者の良し悪しを表にしてみましたので、ご参考ください。

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サービスの存在を知ってもらえているか?(サービスカタログ管理)

どれだけサービスを充実させても、その存在が利用者に周知されていなければ意味がありません。提供中のサービスや今後導入するサービスを利用者に公開する段階がサービスカタログ管理です。

サービスカタログ管理の狙いは、そのサービスの存在を知ってもらう事に加え、SLAに基づいてサービスレベルを宣言する事です。例えば、サービスの対象者や提供時間、その担当が外注先の場合は問い合わせ先も明記しておくと、ユーザー全体に対して役割と責任の線引きができます。その結果、本来の業務範囲に労力や時間を集中しやすくなります。

誰が全体の責任をもつか?(デザインコーディネーション)

これまでの成功要因を実現するためには、部署間やサービス間で調整を行い、その成果に責任をもつプロセスが必要です。これがデザインコーディネーションです。

1つのサービスを変更することで複数のサービスに影響を与えたり、業務を1つ変えることで他部門の業務に支障を及ぼす事もあります。従って、デザインコーディネーションの責任者は、全体を俯瞰してプロセスやリソースを調整し、効果的に業務設計できる能力が求められます。そのため、その責任者として、調整能力の高い管理職を任命するケースが多いでしょう。

まとめ

フレームワークを業務に活用するときは、フレームワークの方法論よりも、その取り組みの意図や目的を理解することが遥かに重要です。場面や活動によって、定型化されたハウツーは便利なときも不便なときもあります。また方法論に拘ると手段が目的化してしまいます。

この記事では、上流プロセスが持つ上位概念の狙いを強調して説明しました。組織が悩む課題は概ね共通しています。業務改善で失敗ないコツは、ITILを通して課題の抜け漏れを防ぎ、自社の方針や環境に即した対策を立てることです。

短時間で成果を出すために考えること

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こんにちは、Taikiです。

昨今、働き方改革というキーワードをよく耳にします。今後労働人口の減少に伴い、多様な働き方を認め、一人当たりの労働生産性を高めることを目的とした施策です。

こういった時代背景を踏まえ、今後働く人が求められるスキルは何でしょうか。

それは、短時間で成果を出すこと、につきます。例えば、ノー残業したりテレワークするにしても、生産性が落ちれば本末転倒です。かといって過重労働は許されません。つまり最小時間で最大成果を出すスキルがより求められるようになりました。

では成果とは何でしょうか。成果とは知的生産力を指します。単純労働で生まれる成果は、外国人労働者やロボット化の進出により、相対的な価値が低くなる一方です。

では知的生産力を高めるためには、どうしたらいいでしょうか。それは問題解決能力を磨くことです。言い換えれば、正しい思考プロセスで正解を導く力をつけることです。

誰でも遠回りし時間をかければ正解に近づくことができます。しかし先述したようにそんな時間はありません。そこで活用するのが論理思考です。普遍性の高い一貫したロジックがあれば、いかなる問題でも解決時間を短縮し、解答の精度を高めることができます。今回はその考え方に迫りたいと思います。

目次はこちらになります。

論理思考を身に付けるためには、考え方のフレームワークを知ることです。フレームワークとは工場のレーンのようなものです。何かを作る時に、専用のレーンを使えば、より早く作ることができます。また新しい情報をインプットする時も、考え方のフレームワークに乗せることで、応用の利く体系化された知識に変えることができます。

MECE(ミッシー)

MECEとは全体を網羅するフレームワークです。論理思考の第一歩として、全体の構成を理解するために、この手法を用います。全体を網羅する方法は、トップダウンボトムアップです。構成が分かればトップダウンから必要な要素を書き出し、構成が不明な場合はボトムアップ式にブレインストーミングします。

例えば、フルマラソンを4時間以内に走るとします。フルマラソンを完走するための必要条件を洗い出してみてください。私はこのようにしました。

  • 完走できること
  • 健康なこと
  • ペースがあまり落ちないこと
  • 一定以上の速度をだせること

次にレベル分けしてみましょう。レベル分けのポイントは、何をするためにまず何が必要かを考えることです。4時間以内に完走するために、優先順位の高い順に並び替えます。

  1. 健康なこと
  2. 完走できること
  3. 一定以上の速度を出せること
  4. ペースがあまり落ちないこと

1ですが、フルマラソンを4時間以内に走るための最低条件は健康です。

2ですが、どんなに遅くても完走できることです。完走できる力がなければ、次に進めません。

3ですが、4時間以内に完走できる速度を出せるかです。単純に足が遅ければ4時間は切れません。

最後に4ですが、いかに足が速くとも後半にペースがガタ落ちすれば4時間切りは難しくなります。

このように、MECE(ミッシー)のポイントは、要件を満たすための要素を考え出し、レベル別に分けて優先度を明確にすることです。

ロジックツリー

ロジックツリーは原因の特定や問題解決に使われるフレームワークです。ツリー上に課題と必要な要因を描くことで、全体を俯瞰してボトルネックを特定しやすくなります。

例えば「マラソンを4時間以内に走りたい」という課題を最上位のレベルに位置付け、ロジックツリーを簡単に描いてみました。

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上位レベルは、「体力」「時間」「お金」にしました。そのどれかが欠ければ目標は達成できません。

下位レベルでは、更に細かくし、速度や持久力、練習、大会、マラソン用品、参加費などにブレークダウンしました。あとは金額や距離など定量的な値を設定すれば、達成を阻む具体的な原因が分かります。

ピラミッドストラクチャー

提案や意見に説得力を持たせたいときは、ピラミッドストラクチャーというフレームワークを使います。私も過去のブログでこの手法はよく使いました。前回記事にした「有名なプログラミング言語はなぜ人気があるのか」を例にして、この手法を紹介しましょう。

調べたところ、プログラミング言語の中で一番人気だったのはJavaでした。Javaがなぜ人気なのか、その理由について仮説を立ててみました。「速度」「移植性」「多機能」です。

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言語といえば、最優先課題は「速度」です。遅いと話になりません。

その次は、「移植性」です。手間をかけずに色々なOSで動作するか、です。デスクトップOSだとWindowsスマホならAndroidがトップシェアですが、Javaならそれら主要なOSを抑えているはずだと仮定します。

最後は「多機能」です。一番人気なので大規模な開発でも使われやすい、言い換えれば、大人数で開発するために統制が取りやすいよう多機能な開発環境を使っているはずです。

以上から、「速度」「移植性」「多機能」をJavaが人気な理由にしました。次にその理由達を裏付ける根拠を示すのですが、大事なポイントはJavaの優位性を考えることです。ただ優れているではなく、どう優れているかを説明しなくてはいけません

では、その根拠を示します。プログラミングでは、「速さ」の最も大きな要因はコンパイルの仕方です。Javaコンパイル言語に属しています。コンパイル言語とは、記述は困難ですが、ソースコードを事前にコンパイルして、先に機械語に変換するため、スクリプト言語よりも 高速で動作します。

次に「移植性」ですが、Javaは中間コードという、Javaならではのコンパイル技術を使い、1つのソースでどのOSにも対応できるという優れた移植性を持っています。この技術はC#でも応用されるほど高い実用性があります。

最後は、「多機能」ですが、JavaEclipseという優れたIDEで開発可能です。その実績やノウハウは広く周知され、独自のプラグインも簡単に開発できます。また様々なベンダーもそのコミュニティに参加し、改善に力を入れています。

このように、ピラミッドストラクチャを使うと提案や考察をロジカルに立証することができますが、先述したロジックツリーとこのピラミッドストラクチャーを組み合わせると、より説得力のあるロジックを生むことができるでしょう。

基本式をつくる

最後は、課題に対して基本式を作れるか、です。これは仮説思考の中でも高度なレベルが要求されます。例えば、A市でマラソン大会を運営していますが、年々参加人数は減少しています。マラソンの参加人数が減少している原因を調べてください、ともし言われたら、どう調べますか。

このような場面では、基本式をつくる発想が役に立ちます。この手法はフェルミ推定でもよく使われます。

自分のマラソン大会の参加人数(人)=スポーツ全体の人口(人)x マラソンを選ぶ割合(%)x  A市の大会を選ぶ割合(%)x 貴方の大会を選ぶ割合 (%)

数式化する利点は、構成要素を階層別に分けることができる点です。階層別に原因が分かると、仮説が立てやすくなり、調査する的を絞り込むことができます。

例えば、スポーツ全体の人口が減少して大会参加者が減少したとします。その仮説を裏付けるためには、スポーツ人口の推移を調べます。スポーツ庁が出している世論調査が役に立ちます。そうやって上流から調べ上げていくと、真の原因たるものが見えてきます。

ちなみに、積み木型の階層図で表すとこんな感じです。

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まとめ

労働人口の減少に伴い、今後はAIやRPAが多用される時代になるでしょう。その時代において、付加価値の高いスキルの1つが問題解決能力です。AIに喰われない職業にコンサルタントが選ばれる理由もここにあります。そして、問題解決能力を磨くためにはロジカルシンキングです。

但し、フレームワークを丸暗記するよりは、常になぜ?という疑問をもつことが大事です。その答えを導き出す思考プロセスとして、フレームワークを自然に使えるようになると及第点に辿り着く時間も短くなります。また分からない事をすぐにググるのではなく、仮説を立てて答え合わせしてみると面白いかもしれません。その的中率が高くなれば自ずと問題解決能力は向上していると思いますので。

有名なプログラミング言語はなぜ人気があるのか

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こんにちは、Taikiです。

前回は、プログラミング発展の経緯とその発展を支えた要因について、考察しました。

vtaiki.hatenablog.com

今回は有名なプログラミング言語(以下言語)はなぜ人気があるのか、を考察します。

言語の良し悪しを決めるポイント

まずは言語の人気ランキングをみてみましょう。

 

  1. Java
  2. C
  3. Python
  4. C++
  5. C#
  6. Visual Basic .NET
  7. JavaScript
  8. PHP
  9. SQL
  10. Objective-C

出典:マイナビニュース

いかがでしょうか。上位の言語はよく目につきますね。なぜ人気があるのでしょうか。5つのポイントにわけて、その理由を説明したいと思います。

  • 速い
  • 移植性
  • 簡単さ
  • 高機能
  • 安全性

 速い

なぜ人気があるのか。一番分かりやすい理由は速いからです。その速さはどうやって決まるのでしょうか。それは機械語にどう訳すかです。訳し方は、スクリプト言語コンパイル言語に分かれます。

スクリプト言語

ソースコードを逐次機械語に翻訳しながら実行するため、比較的低速で動作しますが、短い記述で処理を実現できます。
例:PythonPerlPHPRubyJavaScript

コンパイル言語

ソースコードを事前にコンパイルして、先に機械語に変換するため、 高速で動作しますが、記述が困難です。
例:C、C++JavaC#

コンパイル言語の中でも、C/C++は特に速いです。その秘密はインラインアセンブラです。Wikiの言葉を借りると、インラインアセンブラとは、ソースコード中(インライン)にアセンブリ言語によるコードを埋込むことができる、という機能です。アセンブリ言語は、限りなく機械語に近い言語、そのため、機械が解読しやすく処理が速くなります。

実用例ですが、C/C++は機械製品によく使われますが、何故でしょうか。

機械製品は直ぐに反応しないと問題があるため、処理の速い言語が良いです。例えば暑い日にエアコンの反応が遅いとイライラしませんか。それはまだ許せますが、工場の機械だとどうでしょう。反応が遅ければ生産性にも関わります。事故に関わるかもしれません。

機械製品に使われるもう1つの理由は、搭載されているメモリ量が小さい点です

機械は大きさに制限があるため、PCと比べ搭載できるメモリ量も限られてしまいます。しかしC/C++だと最小限の実行ファイルにソースを収めることができます。なぜでしょうか。その理由を引用します。

C言語は、アセンブラレベルと同等の処理を簡潔に記述でき、またJavaなどに代表される他の高級言語にあるような暗黙のコード生成やバックグラウンドで動く処理が無い。プログラマが意図したコードだけがコンパイラで生成されるため、実行ファイルが肥大化してしまうことも無く生成コードに無駄がなくコンパクト、かつ処理速度も高速である。そのため、特にハードウェアを操作するファームウェアや、スループットを保証する必要があるリアルタイム処理、プログラムサイズをコンパクトに収める必要がある小型MCUのソフトウェア開発に向いている。

出典:富士ソフト

つまり、C/C++は、他の言語と比べ、書かれている以外のことはしないので、その分ファイルのサイズを抑えることができます。

移植性

移植性とは、同じソースを別のブラウザやOSで実行したときに同じように動作するかという意味です。クラウドマルチプラットフォームが主流の今、移植性はとても重要です。

JavaScript

それでは移植性の高い言語は何でしょうか。

スクリプト言語の中ではJavaScriptです。この言語はフロントエンドで実行されます。フロントエンドとは、実行環境がInternet ExplorerChromeなどのブラウザに依存することです。JavaScriptはどのブラウザにも最初からインストールされているため、ブラウザを選ばず実行することができます。

なぜ最初からインストール済みなのでしょうか。JavaScriptの歴史は古く今日に至るまで、セキュリティが問題視されたり、ブラウザ毎で動作が異なるなど課題が山積していました。

しかし、同言語の標準化団体ができ、JavaScriptはセキュリティが向上し、どのブラウザでも同じように動作できるようになりました。その上、MicrosoftGoogleがそのエンジン開発に多くの投資をしたため、異なるブラウザでも快適に動作するようになりました。今では、スマートフォンタブレット、PC、ゲーム機などWEBブラウザが搭載されているデバイスでは、当たり前のようにJavaScriptが動作します。

C/C++

コンパイル語のC/C++の移植性はどうでしょうか。

低水準言語を使う分、どうしてもハードウェア依存などの制約が強くなるため、他への移植が難しくなります。こういった融通の利かなさをみると、C/C++は職人気質の尖ったイメージに映ります。

Java

Javaはどうでしょうか。

Javaコンパイル語ですが、その違いは中間コードにコンパイルできる点です。通常は各OSに合わせてソースコードを用意しますが、Javaだとこの中間コード1つで各OSに適応した機械語に変換できます。詳しい説明を引用します。

Javaは移植性を高める中間コードを採用しています。これは、Javaが多くの端末で動作する理由でもあります。そしてJavaコンパイラ言語です。Javaのプログラムは、中間コード(Javaバイトコード)にコンパイル(変換)されます。その中間コードは、各プラットフォームに依存することのない中間形式です。Java仮想マシン上で中間コードが実行されます。そのため、Javaは開発環境と実行環境を切り分けることができます。つまり、いろいろなプラットフォームに対して、フル機能のJavaを用意する必要はなく、携帯端末などメモリなど資源の限られた端末には、中間コードを実行する仮想マシンを用意するだけでよいのです。移植が簡単で、多くの環境で動かすことができます。この中間言語の仕組みは、利点が多く、Java以後、C#など他のプログラミング言語でも積極的に採用されています。

出典:マイナビ

この中間コードの利点は、All in Oneです。1つのソースでどのOSでも動作します。そして、中間コードはソースコードよりも機械語に近いため、処理もより高速になります。

簡単さ

ソースコードの書きやすさや書きやすくするための仕組みも人気がでる理由の1つです。ポイントはこちらの3点になります。

その言語の文法が簡単なこと

簡単な言語といえば、PHPを思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。

PHPは文法が簡単な上、制約も少ない自由度の高い言語です。動的型付けに見られるよう、少し適当に書いてもPHP側が良いように解釈してくれることが多々あります。

しかし、その解釈の分だけ、ランタイムのオーバーヘッドが高まり処理の足かせになることもあります。更に、適当に書いた分だけ、PHPの暗黙の処理が走るため、全体の整合性が取れなくなります。

フレームワークが優秀なこと

WEBアプリ作成で欠かせないものがフレームワークです。

フレームワークはプログラム作成の開発効率を高めるツールです。

なぜ開発効率を高めることができるのか、Ruby on RailsというオープンソースのWEBアプリケーションフレームワークを例に説明します。

Railsは、MVCアーキテクチャという設計概念に基づき、処理を受け渡しをする要素、データの参照や更新を行う要素、ユーザーに結果を返す要素があります。通常はこの3要素を結べ付ける設定が必要です。しかし、Railsには、CoC(Convention over Configuration)という設計思想があり設定よりも規約を重視します。

例えば、ある命名規則に従えば、クラスやデータベースなどオブジェクト同士を自動で結び付けてくれます。その結果、間を繋ぐ設定が不要になり手作業が少なくなります。他にもDRYやRESTなど色々なギミックがありますが、ここでは割愛します。

クラウドで管理ができる

ソースをクラウド管理ができると時間や場所に拘束されない、より自由な環境でプログラムを書くことができます。中でもWEBサービスやWEBアプリの開発はクラウドと相性が非常に良いです。テレワークもしやすい仕事です。

例えば、GitHubのようなプラットフォームを使えば、クラウド上で進捗管理やソースのバージョン管理ができ、プログラムのリリースまでを完結できます。GitHub上で人気のある言語は、やはりJavaScriptJavaPythonPHPRubyあたりのWeb系です。

対して、C/C++でみるような機械製品の組み込み系やパッケージ商品、基幹システムなどクローズドな開発はまだオンプレが多いのではないでしょうか。

高機能

機能が十分に備わっていれば開発も捗ります。多くのメンバーで開発するときは特にそうです。その機能を提供してくれるものが、統合開発環境IDE)とライブラリです。

統合開発環境IDE

プログラム作成に必要な機能はこちらです。

  • テキストエディタ(プログラム記述)
  • デバッガ(バグの検出)
  • ビルド(プログラムを実行可能な状態に変換する)
  • ソースコードのバージョン管理
  • ファイルの構成管理

これら機能を1つの固まりにしたものが、統合開発環境IDE)です。IDEを使うと、仕様やルールの統制が取れやすくなるため、規模の大きいプロジェクトではでよく利用されます。Gitと連携すると、ソースコードのバージョン管理やファイルの構成管理も簡単になります。

これだけ高機能でありながらIDEは無償で提供されています。なぜでしょうか。

提供元はGoogleAppleMicrosoftなど大手です。彼らは、拡販のため、自社製OSに乗せるアプリ開発を支援すべく高機能なIDEを無償で提供しています。

主なIDEはこちらになります。

ライブラリ

ライブラリとは関数の集合体であり、関数とは一連の処理をモジュール化したものです。このライブラリが豊富にあると開発の幅が広がり新しいプログラムも作成しやすくなります。特に、Pythonの場合だと第三者によるライブラリが豊富にあるため、時間を大幅に削減する事ができます。

Pythonは昨今のAIブームで特に注目されています。その人気の理由は、機械学習ディープラーニングで必要とされる科学技術計算や統計のライブラリがPythonには元々多く用意されているためです。そして、もう1つの理由はAIブームでPythonの魅力が再認識され多方面で使われる機会が増えたからです。

ではPythonの魅力とは何でしょうか。Pythonは文法が単純なため、書きやすく可読性が高い上、クロスプラットフォームで動作し、処理速度をみても強力な言語です。そして、先にあげたようにライブラリも多数用意されています。

今では、WEBアプリ、デスクトップアプリ、自動化、科学技術計算、統計など幅広い分野で使われ、Googleも主要言語に採用しています。

安全性

まずは安全性が低い順のランキングをみてみましょう。最も低いとされているのが、なんと人気の高いC言語ですね。

 

  1. C言語 
  2. PHP
  3. Java
  4. JavaScript
  5. Python

出典:マイナビ

安全性の低い言語とは何でしょうか。

それは脆弱性が多い言語といえます。それでは脆弱性はどうやって引き起こされるのでしょうか。脆弱性には2つのタイプがあります。攻撃者によってセキュリティホールが発見されてしまうパターンと開発者が意図しないバグを作りこんでしまうパターンです。こでは、前者の例として安全性が低いランキング2位のPHPをあげ、後者の例として1位のC言語をあげます。

PHPで見る脆弱性の一例

まずはPHP脆弱性の報告事例です。

PHP」に脆弱性「CVE-2018-17082」が見つかった問題で、同脆弱性によりウェブサーバのキャッシュへサイト運営者が意図しないスクリプトが埋め込まれるなど、攻撃者によって悪用される可能性があるとしてセキュリティ専門家が注意を呼びかけている。

この例に限らず、PHPのセキュリティは甘いという指摘は以前からありました。PHPのバージョンが今も変わり続ける理由もセキュリティが関係しています。

PHPの起源を辿ると、ラードフという開発者が動的なWebページを作成するために個人的な用途で開発したことがその始まりです。

こういった経緯もあり、PHPは書きやすさ重視で作られています。CやPerl, Javaなどの言語に強く影響を受け、これらの言語から関数を直輸入し親和性が欠如した結果、各所にほころびができ、セキュリティ上深刻な問題が起きたこともありました。歴史的な経緯をみるとその根深さが分かります。

C言語でみる脆弱性の一例

次に、C言語脆弱性です。

MSRCによれば、「CVE(共通脆弱性識別子)」を割り当てられ、Microsoftが修正してきた同社ソフトウェアのセキュリティ脆弱(ぜいじゃく)性の大部分は1つの要因から起こっている。開発者がC/C++コードにうっかりメモリ破壊バグを作り込んでしまったことだ。  メモリ破壊バグとは、配列に対する指標値の誤りや、ポインタ変数の誤りなどにより、意図しないメモリ領域を書き換えてしまい、以降のプログラム動作がおかしくなる、というものである。

PHPは言語自体が脆弱性な印象ですが、C言語は先の例のように開発者が自ら脆弱性を作りこんでしまうケースが目立ちます。

なぜC言語は開発者のミスを誘発するのでしょうか。

C言語はプログラミングだけでなくハードウェアの分野でも高度な知識が要求されます。メモリやCPUなどハードウェアの性質をよく理解していないと、最悪、OSが起動しない場合もあります。例えば、代表的な問題の例として「メモリリーク」があります。これは不要なメモリ領域を解放できない問題です。メモリリークの説明は引用します。

例えば、C言語C++言語における関数malloc()で動的に確保されたメモリ領域は、それに対応する関数free()の呼び出しでプログラム終了後に解放するのが基本的な流れですが、アプリケーションプログラムが動的に確保したメモリ領域を解放する、つまりfree()の記述を忘れていると、そのメモリ領域はシステムのメモリ資源を無駄に占有し続けることになってしまいます…

出典:https://itmanabi.com/memory-leak/

このようにC言語は処理が強力な分、扱いの難易度が高くミスを誘発しやすい言語です。

まとめ

以上、個人的な見解になりますが、5つのポイントで、なぜ有名な言語は人気があるのか、を考察してみましたが、いかがでしたでしょうか。

少しまとめると、最も人気のあるJavaは、中間共通言語を使い、スクリプト言語よりも高速に動作し、C/C++よりも移植性の高い優秀な言語です。また強力なオブジェクト指向言語であり、EclipseAndroid Studioなど統合開発環境も整っているため、大規模開発で重宝されます。世界で7割のシェアを占めるAndroidJavaで開発され、その安定感が伺えますね

次点のC言語は、コンパイル語に属し、ネイティブコードを組み込む事で高速に動作する上、忖度0で書いた通りにしか動かないため、ソースファイルのサイズも最小限に抑えることができます。その特性から、応答速度が求められる基幹システムや機械製品の制御に利用されています。

3位のPythonは、豊富なライブラリや充実したフレームワークを武器にAIの技術を支えています。純粋な言語としての総合力も高いため、AIだけでなくWEBアプリやデスクトップアプリ、処理の自動化、科学技術計算や統計など幅広い分野で使われています。

今後はどんな言語が出てくるのでしょうか。例えば、C系よりも速くセキュリティが優れていれば評価されるでしょう。そこで今注目されている言語が、「RUST」です。RUST(ラスト)はMozillaが支援するオープンソースの言語です。その速度、並行性、安全性において、C言語C++に代わる言語といわれ、Microsoftも高く評価しています。

プログラミング言語は、他の技術と比べ、その良し悪しが分かりにくいことがあります。結局は書いてみないと分からないことが多いからです。

そこで今回は、その言語の優位性は何か、他の言語と何が違うのか。どういう経緯で注目されるようになったのか、を意識して記事を書いてみました。全体がイメージしやすいよう5つの指標を軸に、できるだけ分かりやすく(?)したつもりですが、まだしっくりこない方は前回の記事も合わせ読んで頂くと幸いです。

vtaiki.hatenablog.com

 

プログラミング発展の経緯とその発展を支えた要因

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こんにちは、Taikiです。

2020年に小学校でプログラミング教育が必修となりますが、どういう目的で文科省はこれを導入したのでしょうか。文科省の説明をこちらになります。

プログラミング教育とは、子供たちに、コンピュータに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育むことであり、コーディングを覚えることが目的ではない。また、こうしたプログラミング教育を実施する前提として、言語能力の育成や各教科等における思考力の育成など、全ての教育の基盤として長年重視されてきている資質・能力の重要性もますます高まるものであると考えられる。

 出典:文部科学省

つまり、プログラミング教育の目的は、プログラマーを増やすことではなく、プログラミングに必要な論理的思考を身に着け、今後の勉強や将来の仕事に役立たせる事としています。

こういった取り組みを踏まえ、今回はプログラミングの歴史に触れ、どうやってプログラミングが発展してきたのか、に迫ります。

目次はこちらになります。

プログラミング発展の歴史

まずは代表的なプログラミング言語(以下言語)の年表をみていきましょう。

    年代            言語
1940年以前 機械言語(チャールズ・バベッジ)
1940年代  アセンブリ言語
1950年代  COBOL(グレース・ホッパー)
1960年代  FORTRAN(IBM・ジョン・バッカス)
1970年代  B言語(ケン・トンプソン)
C言語(デニス・リッチー)
Smalltalk
SQL
1980年代  C++
Objective-C
Perl
1990前半  Python(グイド・ヴァンロッサム)
Microsoft Visual Basic(Microsoft)
1990後半  Ruby(まつもとゆきひろ)
Java(サン・マイクロシステムズ)
PHP(ラスマス・ラードフ)
JavaScript
2000年代  C#Microsoft
D言語
Go(Google)
2010年代  Dart (Google)
Swift (Apple)
Hack (Facebook)

年表をみると、言語が多数存在することは分かりますが、各々どんな違いがあるのでしょうか。

言語は、機械語アセンブリ言語、手続き型、オブジェクト指向型の4種類に大別できます。機械語アセンブリ言語の2種類を低水準言語、そして、手続き型、オブジェクト指向型の2種類を高水準言語と呼びます。低水準言語は機械語または機械語に近いため可読性が低く、高水準言語は抽象化され可読性の高い言語となります。

機械語

機械語とは、コンピュータのCPUが解読可能な命令を数値化したものです。当初は機械語でコーディングされていましたが、数字の固まりを人間が解読する事は困難でした。

アセンブリ言語

アセンブリ機械語をベースに開発され、幾分人間にも理解しやすい言語に変わりました。高水準言語と同じくコンパイラを使って機械語に変換しCPUに解釈させました。コンパイラとは翻訳機のようなものです。

しかし依然ハードウェア依存が強く柔軟性に乏しいため、複雑な処理に不向きでした。当然プロセッサなどアーキテクチャの知識が必要となるため、開発者にはハードウェアの専門性も要求されました。

手続き型言語

制約の多かったアセンブリをより抽象化し、ハードウエア依存を少なくした言語が手続き型です。C言語COBOL、BASIC、Pascalなどがこれに該当します。手続き型の登場で、ルーティンやサブルーティンといった概念が定着し、一連の処理をモジュール化することが一般的になりました。

処理をモジュール化すると、どんなメリットがあるでしょうか。

  • 処理のまとまりを再利用できるため、効率化を生みます
  • 再利用するとキャッシュにも記憶されて、高速化を生みます
  • 再利用の分だけプログラムが短くなり、可読性が上がります

しかし、時代とともに大規模プロジェクトが増え、開発の規模も大きくなり、手続き型だけでは、大人数でプログラムを管理する事が困難になりました。

オブジェクト指向型言語

開発の規模が大きくなるにつれ、万人に分かりやすい言語が求められるようになりました。そこで登場したのがオブジェクト指向型言語です。JavaC#PythonRubyJavaScriptPHPがこれにあたります。オブジェクト指向の狙いは、オブジェクトという概念を使い、多くの人に分かりやすさを提供することです。

オブジェクト指向型の思想設計は人間の思考パターンに似ています。人間は、知らない「モノ」を理解するときに、どんなことを考えるでしょうか。おそらく、その「モノ」が自分の知るカテゴリーのどこに属するかを考えるのではないでしょうか。例えば、知らない「モノ」があるとします。それが「食べ物」「甘い」「イギリス発」と聞けば、自ずと脳内整理し、その情報を「洋菓子」という分類に格納するでしょう。

このように、新しい「モノ」をつくったり説明するときには、カテゴリーを用意して分類分けしておくと、多くの人の理解を助けてくれます。ストレージのフォルダ構成も大規模であるほど細かく分類化されているものです。

オブジェクト指向型も、体系的な設計思想を基礎にしているため、大人数で開発したり仕様が変更しても全体の認識が合わせやすくなります。

このようにプログラミング言語は足りないものを補完しながら発展を続けてきました。

プログラミングの発展を支えたもの

プログラミングはどういう経緯で発展したのでしょうか。

最も大きな要因は時代背景にあります。1940年代はまだ機械語の時代でしたが、第二次世界大戦の最中でした。戦争が終わると、COBOLなどの手続き型が登場し、1980年代にはC++Javaなどのオブジェクト指向型が主流になりました。

アーキテクチャの発達

戦後、産業化が進むにつれ、アーキテクチャが発達しました。アーキテクチャが発達するとリソースが向上しプログラムの処理も速くなります。その理由は、下のプログラムの動きを見るとイメージしやすいでしょう。

①ハードディスク上でプログラムを記述する

コンパイルしEXEファイル(機械語)に変換する

③EXEファイルのコピーがメモリ上に作成される

④メモリ上のプログラムをCPUが解釈して実行する

プログラムが動く時は、ディスク、メモリ、CPU全てのリソースを使うため、昨今のマシンリソースの向上はプログラム処理の高速化を支えました。

プログラミングの発展はまさに従藍而青(じゅうらんにしょう)

「従藍而青」という4字熟語をご存知でしょうか。

「青は藍より出でて藍より青し」ともいいます。糸を青く染めるために、染料の藍に浸して乾かす、これを繰り返すことで、染料の藍よりも鮮やかな濃い青に仕上がります。

新しい言語も既存の言語をベースに改良を重ね、より高いレベルに発展してきました。機械語はアッセンブリに影響を与え、アッセンブリはB言語に影響を与え、B言語はC言語に影響を与え、C言語C++Javaに影響を与えました。既存の言語に改良を重ね、分かりやすさと便利さを追求して新しい言語が生まれ、その度に多機能化されました。

次第に、関数のような処理のモジュール化が浸透し、オブジェクト指向のような設計思想が生まれ、ライブラリのような関数やクラスの集合体が登場しました。

つまり、時代と共にプログラの共用部品が続々と開発され、プログラムを一から書かなくてもその部品を再利用し組み合わせれば、新しいサービスが生まれる時代になりつつあります。自動でプログラムをバージョン管理できるGitなども加われば、アジャイル開発の流れは必然と言えるでしょう。

まとめ

今回はプログラミング言語の歴史に触れ、言語の大まかな種類や特徴、そしてプログラミングが発達した理由に迫りました。

収穫加速の法則で分かるよう、アーキテクチャやプログラミングは、イノベーションの速度を加速させ、様々なサービスを世に送り出しています。そこで次は、どんなプログラミング言語がどういうサービスをつくっているか、について書きたいと思います。

収穫加速の法則(しゅうかくかそくのほうそく、英: The Law of Accelerating Returns)とは、アメリカの発明家レイ・カーツワイルが提唱した、一つの重要な発明は他の発明と結び付き、次の重要な発明の登場までの期間を短縮し、イノベーションの速度を加速することにより、科学技術は直線グラフ的ではなく指数関数的に進歩するという経験則である。また、彼がこの法則について言及したエッセイの表題でもある。伝統的な収穫逓減あるいは限定的な収穫逓増と対比する概念として提唱している。

出典:Wikipedia

米中貿易摩擦の背景と今後のシナリオ

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出典:http://wedge.ismedia.jp/articles/-/16608

こんにちは、Taikiです。

米中の貿易協議は、一時は合意に至ると思われましたが、中国側の反発により、熾烈な貿易摩擦へと展開しました。詳しい経緯はこちらになります。

中国側は、国有企業に対する中央政府補助金制度の見直しについて、米国政府の要求を相当分受け入れたものの、最終段階で米国政府が地方政府による補助金の見直しも合意内容に加えることを要求し、それを受け入れることができなかったと説明している。地方政府による補助金は、景気対策や企業誘致など、貿易政策とは直接関係のない国内政策で多く利用されるためだ。米中貿易合意で、こうした国内政策が強く制限されることになれば、それは不当な「内政干渉」に当たると中国政府は考え、受入れを拒否しているのである。

出典:https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2019/fis/kiuchi/0516

そもそもアメリカはなぜ中国に一方的な合意を求めたのでしょうか。また制裁関税するアメリカの目的は何でしょうか。今後はどういう展開になるのでしょうか。

目次はこちらです。

貿易摩擦の背景

アメリカは他国との取引において巨額の貿易赤字を抱えています。中でも中国との取引のいて、大きな赤字が発生しています。元々アメリカは消費大国のため、安くて供給が安定している中国からの輸入が盛んです。中国は、アメリカから得た外貨を使って設備投資を増やし、その中国のGDPアメリカに迫りつつあります。

イギリスの金融大手スタンダート・チャータード(Standard Chartered)のデータによると、アメリカは早ければ2020年にも世界ナンバー1の経済大国の地位を失う可能性がある。

出典:https://www.businessinsider.jp/post-183133

こういった事情を背景に、アメリカは中国に通商交渉の合意を求めましたが、中国側からの反発を受け、制裁間税に至ります。間税措置は他国だけでなく自国の産業を悪化させる諸刃の剣です。例えば、高い間税をかけると部品の輸入が減り国内の生産量が低下したり、間税の分だけ価格転嫁が起こり国内製品の値上がりを誘発します。逆に中国側から報復制裁を受ければ米国の輸出も減ります。しかし米国はこういった事情を見越して関税措置を断行しました。何故でしょうか。

間税措置の狙い

アメリカの間税措置の目的は何でしょうか。

関税措置は米中合意に至るための手段になりますが、その目的は、来る2020年の大統領選でトランプ大統領が再選を果たすことにあります。

中国の自由経済

中合意の意図は、貿易収支の改善もそうですが、より大きな狙いは、中国の国家資本主義を崩し、米国と同じように中国を自由経済化することです。

米国の主張では、中国が菅民一体で、先端テクノロジーの内製化や低価格化を進め、米国の経済を圧迫しています。それを可能にしているのが先述した中国政府の産助金です。その制度を見直し、官民の癒着を断ち、中国を自由経済化することが米国の狙いです。

中国の知財管理の是正

米国が米中合意を求めるもう一つの理由は、中国の知財管理にあります。

中国のマーケットが巨大化するにつれ、技術移転の強要や技術盗用が問題視されるようになりました。加えて、手に入れた技術情報を自国の知的財産として囲い込み、国外企業を訴訟するようになりました。中国では、国家知的財産権戦略の実施に伴い、知的財産権の司法保護が顕著に強化されています。それに伴い、知的財産関連訴訟も増加の一途をたどっています。

更にファーウェイが5G製品を通じて、世界中にネットワークを張り巡らしバックドアを設けると、中国政府に情報が筒抜けになります。米国がファーウェイを排斥する理由もここにあります。ちなみに同社の創業者は人民解放軍出身で中国共産党と深い関係にあります。

以前スノーデンの告発により、大手通信会社のVerizonなどはNSAアメリカ国家安全保障局)の求めに応じて個人情報を漏えいしたことが明るみにでました。中国国内ではそれ以上の事が公然と行われていると考えらえます。このまま放置すると、中国の金盾(グレートファイアウォール)は、国内だけでなく世界のネットワークをも監視検閲できる脅威をはらんでいます。

その侵略に待ったをかけたのがトランプ政権です。そして、トランプ政権は、自由と平等を愛する国民から高い支持を受けています。

今後のシナリオ

中国政府は米中摩擦の長期戦を辞さない構えです。中国政府はこういったシナリオを待ち望んでいます。

米中貿易摩擦の激化→アメリカの景気冷え込み→トランプ支持率低下→トランプ落選

中国には米国の石油やガス、穀物、自動車を禁輸する手もあります。また米国の産業にとって、不可欠なレアアースの供給を止めるという切り札もあります。

一方の米国は、中国が合意しなければ第4弾となる追加間税をかける方針ですが、それを実行すると米中の経済は一気に冷え込みます。景気減速は大統領選の大きなマイナス要素にもなりかねません。とはいえ、米国にとっては、中国の体制を改めさせないと、いずれ米経済が中国に食われ、安全保障の地位も揺るぎかねないとしています。

 まとめ

米国は、トランプ政権の大統領再選を目的とし、米国にとって不利益となる産業補助金知的財産権保護などの体制見直しを要求しています。直近では、大阪のG20が最大の焦点となっています。

これは仮説ですが、今後中国がGDPで米国を追い越して盤石の地位を築くと、同じように米国を追い込むことになるでしょう。更に、金盾と巨砲とよばれる国家システムでGAFAをはじめとする米国企業の排斥を始め、その経済制裁を安全保障の切り札に使い、国家間の交渉を有利に進めることができます。

そう考えると、この貿易制裁は、トランプ政権の再選だけでなく、米国の未来をかけた一戦と捉えることもできます。日本としては、事態の早期収拾を祈るばかりでしょう。

東京オリンピックの明暗とその後のシナリオ

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こんにちは、Taikiです。

今回は、20回目の記事という事で、東京オリンピックについて書きます。

先日、五輪チケットの抽選結果が発表されましたが、いかがでしたでしょうか。東京マラソンよりも高いとされる倍率の前で、涙をのんだ方も多かったのではないでしょうか。リセールサービスもあるようなのでまだチャンスはあります。希望を捨てずにいきましょう。

では本題の話をします。東京オリンピックの経済効果は、約32兆円と言われています。

では、その経済効果の内訳はどうなっているのでしょうか。オリンピックでどこが潤い、どこが困るのでしょうか。東京オリンピックが始まると、我々の日常生活にどんな影響があるのでしょうか。そして、オリンピック後はどういうシナリオが待っているのでしょうか。今回は、その疑問に迫ります。

目次はこちらになります。

オリンピックがもたらす利益と損失

東京オリンピックの経済波及効果は全国で約32兆円と言われています。そもそも経済効果とはどう定義されるのでしょうか。経済効果を割り出すためには、試算した需要増加額に、係数を入れて経済波及効果を割り出します。経済波及効果とは、Aという製品が生産されることでBという製品の生産を誘発することを指します。例えば、車を生産すると、タイヤや計器、バッテリーやセンサーなど別の部品も生産され、大きな経済波及効果を生みます。以前日産の村山工場が閉鎖した際、周辺の自動車部品工場もなくなし、武蔵村山市に大きな経済損失を与えました。

少し寄り道しますが、開催都市はなぜ東京なのでしょうか。実は、2008年の北京オリンピックには、開催都市に大阪市が立候補していました。大阪市が落選した理由は、交通の便と財政問題でした。当時視察にIOCが来阪しましたが、彼らを乗せたバスが何度も交通渋滞に巻き込まれるという不運も重なったようです。大阪は、開催地決定投票でわずか6票しか獲得できず最下位に終わったという苦い経験があります。つまり、交通アクセスや財政力など総合的に考えると、日本がオリンピックを招致するためには、東京以外に選択肢はなかったということです。

オリンピックで潤う業界

それでは、話を経済効果に戻すと、東京の経済波及効果は約20兆円、全国では約32兆円となっています。

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出典:https://www.2020games.metro.tokyo.jp/9e1525ac4c454d171c82338c5a9b4c8a_1.pdf

経済波及効果には、直接的効果とレガシー効果というものがあります。

直接的効果は、オリンピック開催に直接関係するモノやサービスの需要です。例えば、競技場の整備やテクノロジー開発にセキュリティ強化、観戦者の入場料やプロモーションもそうでしょう。

レガシー効果とは、開催後にも効果が期待されるモノやサービスの需要です。施設の有効利用やテクノロジーの応用、観光需要の拡大です。

では、産業別にみたとき、直接的効果とレガシー効果の大きい業種はどれでしょうか。産業別の直接的効果を見ると、それは建設業とサービス業になります。

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出典:https://www.2020games.metro.tokyo.jp/9e1525ac4c454d171c82338c5a9b4c8a_1.pdf

 更に、的を絞り、建設業の中で特にオリンピック需要の恩恵を受けていると思われる会社はどこでしょうか。建設業の代表例でいうと、新国立競技場の元施工で首都圏比率も高い大成建設とオリンピック需要で大量のセメントを用立てる太平洋セメントになります。

サービス業は色々ありますが、今回はホテルにフォーカスしましょう。2013年に東京オリンピックが決まって以来、ホテル業界の業績は堅調に推移しています。

訪日外国人にとって人気の国内ホテルはどこでしょうか。トリップアドバイザーの人気ランキングによると、クラブメッドザ・リッツ・カールトン、マリオット、インターコンチネンタルなど外資系ホテルがあげられています。

tg.tripadvisor.jp

なぜ訪日外国人は日本でも外資系ホテルを利用したがるのでしょうか。訪日外国人がホテルに求めるポイントをみていきましょう。

  • アクセスが良い
  • 言語の壁を感じない
  • 通信環境が整っている

日本に進出している外資系ホテルの多くは、所有者と経営者が別々になっています。例えば、ザ・リッツ・カールトン東京の所有権は三井不動産ですが、運営権はザ・リッツ・カールトンカンパニーL.L.Cにあります。三井不動産がアクセスを確保し、ザ・リッツ・カールトンカンパニーL.L.Cのスタッフによって、言語や文化の壁は取り払われます。全世界にホテルがあるという安心感もあり、日本国内でも外資系ホテルは人気です。

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出典:https://nomad-english.com/archives/16285

オリンピックに伴う不利益

逆に、東京オリンピックによって、どこが困るのでしょうか。現在、東京オリンピック需要の建設ラッシュにより、資材が不足しています。具体的には、建物の柱や梁を結びつける「ボルト」が不足し、建設工事の遅れが相次いでいます。オリンピック需要に関わる都市開発や建設工事だけでなく、地方の施設や橋などのインフラ整備の遅延も引き起こしています。また、東北や熊本の復興も遅々として進まず、復興五輪という言葉に違和感を覚える人もいます。もし新たな災害が起こった場合、復旧に充てる余力は今の日本にはありません。

日常生活への影響

東京オリンピックの期間中(2020年7月24日 – 2020年8月9日)は、我々の日常生活にどんな影響を与えるのでしょうか。

最も確実な事は、交通機関の混雑です。東京オリンピック中は都内の人口が7割増しになると言われています。つまり、この期間中は国内外から約700万もの人が東京に流れ込み、通勤ラッシュの時間帯は電車1割増し、高速道路は2倍以上の混雑が予想されます。その緩和策として、お盆休みなど前後の休みをこの期間に集中させたり、時差出勤やテレワークなどが計画されているようです。

オリンピック後のシナリオ

オリンピック後のシナリオとして、景気の低迷が予想されています。その理由は、過去も他のオリンピックで景気が低迷し、1964年の東京オリンピックの後も「昭和40年不況」が発生したからです。

では、具体的にオリンピック後はどんな事が起こるのでしょうか。これまでの傾向と今後のニーズを踏まえ、今後のシナリオを考えます。

都市の再開発

東京オリンピック後も都市開発は続きます。2022年に森ビルが麻布で330Mの超高層ビル建設を予定しています。更に2025年には大阪万博、2027年には東京と名古屋間のリニアモーターカーに加え、三菱地所が東京駅に390Mの超高層ビルを建設予定です。この都市の再開発により、2025年までは、経済は緩やかに成長するのではと期待されています。

シェアリングエコノミーの拡大

今後は車や自転車は購入せずに利用する傾向が強まるのではないでしょうか。同時に駐車場のシェアリングも活発になります。現在、駐車場業界の大手であるパーク24は関西を中心に一部の駐車場を無料で開放し、駐車場の広告料を収入源とするビジネスモデルをつくっています。またakippaのシェアリングサービスを利用し、駐車場をシェアする企業や個人も増えています。中国やシンガポールではマナーの悪さが目立ちますが、ルールさえ整えば、節約志向でマナーの意識が高い日本人の間では、シェアリングエコノミーは定着すると読んでいます。

インバウンド消費と海外戦略

2025年は、1950年迄に生まれた団塊世代後期高齢者となり、人口減少と財源圧迫が一層強まります。人口減につれ国内消費も落ち込むため、インバウンド消費が益々重要になりますが、オリンピック効果もあり訪日外国人の数は堅調に推移しています。今後は更なる誘致のために、政府主導で公衆無線LANやキャッシュレス化の拡充を進めていくでしょう。

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出典:https://chibra.co.jp/taiken/2017-kotoshouhi-market/

また人口減少による労働力不足を補うため、外国人労働者の雇用も活発になります。外務省は人手不足が深刻な建設や農業、介護など5業種を対象に2019年4月に新たな在留資格を設けました。

そして、人口減少に伴う国内消費減を見越して、海外に販路をもつ企業が今後は生き残るはずです。特に、海外でもアジア新興国をマーケットにもつ企業は有利です。なぜなら、アジア新興国は、50年前の日本と同じように高度経済成長期を迎えつつあるからです。当時の日本は、労働人口も多く世界でも生産大国とされていました。その後、生産大国の地位は中国に奪われ、中国は「世界の工場」と呼ばれるようになりました。しかし、一人っ子政策の影響もあって中国の人件費は高まり、今となっては貿易摩擦も影響し生産拠点は東南アジアに移転しています。

では、東南アジア市場に強い企業はどこでしょうか。即席めんの「ハオハオ」を大ヒットさせたエースコックベトナムで5割のシェアを持ち、利益の3割以上を同国で稼いでいます。同じベトナム繋がりでいくと、「サロンパス」で有名な久光製薬ベトナムで6割のシェアをもっています。味の素は、東南アジアもそうですが、その先にあるアフリカ市場でも既に高いシェアをもっています。貧困で食材の少ないアフリカでは、色んな味を生み出す味の素のスープが重宝されています。

toyokeizai.net

こういった海外進出に成功している企業の共通点は、高いインセンティブ制度と使命感です。現地で成功を収めるためには、ローカライズが不可欠になりますが、そのためには、現地で骨を埋める気概のある社員が必要です。億単位のインセンティブ制度を設け、社会貢献性の高い使命感を海外駐在員に植え付けることが成功の鍵となります。

テクノロジーの進化

今後注目されるテクノロジーは何でしょうか。実績のあるクラウド、事故率を抑える自動ブレーキや自動運転、そして情報事故を防ぐブロックチェーンが手堅いでしょう。

昨今AIやIot、ビックデータがよく話題にのぼりますが、その殆どがクラウドをベースに設計されています。クラウドは実績もあり、初期費用もかからないため、今後も更に伸びていくでしょう。

次に、自動ブレーキや自動運転ですが、最近高齢者の死亡事故が問題となっています。高齢化が進むにつれ、これらの需要も高まるでしょう。政府は自動ブレーキ装備車両の減税を考えています。実際に自動ブレーキ装備車の事故減少効果も立証されています。

ではブロックチェーンはどうでしょうか。これから労働人口が減るにつれ、組織の省人化も進みます。例えば、JRは特急を全車指定席に変え、人手がかかる社内のチケット販売をやめました。銀行はフィンテック化を進め、窓口業務や紙の手続き廃止し、人件費削減に努めています。

人件費削減や変化を嫌い、銀行から市役所など自治体に人材が流出している話も聞きますが、自治体も例外ではありません。高齢化に伴い、介護医療費が拡大して赤字の自治体が増えています。当然自治体も経費削減のため、近い将来、省人化は避けられません。銀行と同じように窓口業務を廃止し、WEBで諸々の手続きを完結できるような時代にならざるを得ません。その際に懸念されることが個人情報の流出やなりすまし等の情報事故ですが、そこで登場する技術がブロックチェーンです。銀行では、既にブロックチェーンを応用し、「機密性」、「完全性」、「可用性」のCIA確保に動いています。詳細は、過去の記事をご覧ください。vtaiki.hatenablog.com

医療業界の飛躍

先進国の高齢化や途上国の経済水準が加速するにつれ、医療業界も堅調に推移していくことでしょう。国際的に権威のある専門誌Lancet(ランセット)によると、日本の医療水準はかなり上位にあり、日本の医療の質は最高レベルとされています。今後も国内外から日本の医療技術は求められるでしょう。

農業の活性化

昨今農家不足が問題とされていますが、農業にはいろいろな面で未知の可能性を感じます。

例えば、オプティム という会社は、農家に無償でIoTバイスを貸出し、収穫された作物を自社で買い取って販売するというサプライチェーンを確立しました。IoTを使って農薬を9割減らして収穫できた作物は、市場価格よりも高値で取引されているようです。農業はこういったテクノロジーとの融合も可能にしています。

農業には、多様な労働者を受け入れるだけの器もあります。例えば、言語や文化が異なる外国人労働者にとって、農業は働きやすい業種ではないでしょうか。外務省は農家で働く外国人の在留資格を緩くしていますが、農林水産省でも、農業分野における障害者就労を促進しています。

JAによると、49歳以上の新規就農者が増えていますが、ビジネスに疲れたサラリーマンや定年退職者が第二の人生として農業を始めています。昨今は休耕地が増え、農業支援金など国のバックアップもあるため、条件も悪くありません。人生100年の中で、経済的な豊かさだけでなく、人生の豊かさを求めて農業を始める人も多いのではないでしょうか。 

4.まとめ

華やかに見える東京オリンピックの影には、資材不足や復興遅延があります。またその先には、少子高齢化や人口減少などの課題も山積しています。

打開策として、テクノロジーの進化やインバウンド消費、海外戦略などをあげましたが、皆さまもお分かりのように、今後は経済的価値だけでなく、生命資本主義といった人生を満足できるような社会的な方向性も必要になってくるでしょう。高度経済成長やバブル崩壊を経験し、利潤追求の果てに表れた社会問題にどう付き合っていくか、今後注目されます。

Windows10からみるMicrosoftの戦略と今後のシナリオ

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こんにちは、Taikiです。

Windows7のサポート期限が迫り、Windows10への移行が加速しています。

Windows10リリースの狙いは何でしょうか。そもそも、Windowsの強みとは何でしょうか。課題を抱えつつも、なぜWindowsの国内シェアは伸びているのしょうか。そして、機能アップデートの影響を最小化するためには、どうすればいいでしょうか?

今回はこの疑問に迫ります。

Windows10リリースの狙い

Windows10は、WaaS(ワース)という概念のもとでリリースされました。WaaSとは、OSのアップグレードを新しい「製品」として届けるのではなく、定期的に実施・継続されるサービスとして提供するという新しい概念です。 従来は新たな機能を組み込んだOSを開発し、Windows 7Windows 8.1といった独立した製品を発売していましたが、Windows 10から、機能向上プログラム(以下FU)や品質向上プログラム(以下QU)によって、定期的に更新を重ねていく方式となります。

なぜMicrosoftはWaaSという方式を取ったのでしょうか?その理由は、これまでの製品提供のサイクルでは、多様で急速なニーズの変化に対応できないからです。

こちらのグラフをみると、パソコンだけでなく、スマートフォンタブレットの利用も拡大しています。Microsoftは、どのデバイスであっても、包括的かつスピーディーに機能を向上できるよう、ユニバーサルWindowsプラットフォームと呼ばれる共通OS基盤を開発し、WaaSという方式でサービスを提供することを決めました。

出典:総務省「通信利用動向調査」

Windowsの強み

そもそも、なぜ大半のOSはWindowsなのでしょうか。その理由を探るため、Windowsの歴史に少し触れましょう。

Windowsの歴史

1980年頃、MicrosoftMS-DOSとよばれるOSを開発しました。かつてMicrosoftは、MS-DOS上で稼働するGUIのアプリケーションで、IBMへのOEM供給を生業とした、下請けのソフトウェアメーカーでした。Microsoft業界標準の地位を得ることになったきっかけは、Windows 3.1というOSです。このOSの強みは、各社のアーキテクチャの相違を吸収できたことです。ソフトウェアがアーキテクチャに依存することがなくなったため、PCの利便性が飛躍的に向上し、アーキテクチャの独自性も薄れ、PCの価格が安くなりました。業界標準となったWindows3.1は爆発的に売れ、その後、高可用性やセキュリティを向上させながらWindowsシリーズは拡大していくことになります。

当然のことながら、仕事の生産性を高めるために、Windows向けの純正や他社製の製品開発も活発に行われ、ビジネスとWindowsは深い関係をもつことになりました。その結果、社内の基幹システムはWindowsへの依存度が強くなり、OS市場で優位性を保つことになります。

しかし、その優位性を脅かす存在がLinuxです。Windowsが大企業などエンタープライズ向けに注力する一方、Linuxは小規模やスタートアップを攻めました。そして、スタートアップのような資本が少なく発想豊かな企業は、オープンソースであるLinuxを駆使し、自由度の高いクラウドというプラットフォームを手に入れ、柔軟にアプリケーションを開発できるようになりました。次第に、規模を問わず多くの組織でLinuxは採用されるようになります。そのLinuxの台頭を尻目に、Microsoftはある手を打ちました。Githubの買収です。

Github買収の狙い

Githubというのは、Gitと呼ばれるソースのバージョン管理ツールを用いた、OSSの共有開発プラットフォームです。あのGAFAも、米政府もこのプラットフォームを使ってオープンソースを開発しています。

では、具体的にGithubはどう使われているのでしょうか。Githubでは「リポジトリ」と呼ばれるプロジェクトが作成され、その中でソースが公開されます。その「リポジトリ」を分家にして自由にカスタマイズできる機能が「フォーク」と呼ばれます。また、この改良を本家に提案することを「プルリクエスト」と呼びます。

例えば、Appleが公開したSwiftのソースを、GitHubにいる開発者がフォークして、もっと使いやすいアプリケーションにしました。その開発者はプルリクエストでAppleにこれを提案し、採用されれば本製品に組み込まれ、自社の製品価値を高めるような使い方ができます。開発者にとってもGitHubでの開発実績は経歴に拍がつき、今後の進路を有利なものにしてくれます。

MicrosoftGitHub買収の狙いは2つあると思います。1つ目は、GitHubが抱える開発者に自社の製品改良を提案してもらう機会を増やし、製品価値を高めることです。2つ目は、Microsoftが2016年に買収したLinkedin (ビジネス特化型SNS)と連携し、人材開発の分野を強化していくことです。

Windows10が課題を抱えながらもシェアを伸ばせる理由

では、話をWindows10に戻しましょう。Windows10の課題は何でしょうか。

それは、アップデートの種類と回数が増えたため、ユーザーの負担が大きくなった事とFU(Feature Update = 機能更新プログラム)が引き起こす不具合です。先述したように、アップデートの種類には、QU(Quality Update = 品質更新アップデート)、FU(Feature Update = 機能更新プログラム)があります。前者は、毎月第 2 火曜日に公開され、後者は、毎年3月と9月に公開されます。

特に、このFUが問題で、アップデート後に予想外の不具合が出たりします。

 「dynabook スマートフォンリンク」は、Dynabook社製PC向けに提供されているアプリ。PCをスマートフォンのスピーカー・キーボード・マウスとして利用できるようにする。

 このアプリを導入したデバイスを「May 2019 Update」へアップグレードすると、一部の環境でアプリが機能しなくなる。通話メニューで電話番号を表示できなくなったり、PCから電話に応答する機能が利用できなくなる恐れがある

 Intel製ディスプレイドライバーの一部は「May 2019 Update」との互換性に問題を抱えており、ユーザーインターフェイスでディスプレイの明るさ(輝度)を調整できたようにみえても、実際に適用されないことがある。

出典:https://forest.watch.impress.co.jp/docs/serial/yajiuma/1187555.html

しかし、ここで1つの疑問が浮かびます。こういった課題を抱えながらも、なぜWindowsOSの国内シェアは伸びているのでしょうか。その理由を3つにまとめてみました。

2019å¹´1æãã¹ã¯ãããOSã·ã§ã¢/åã°ã©ã - Net Applicationså ±å

 出典:https://news.mynavi.jp/article/20190204-766848/

Microsoftスケールメリット

1つ目の理由が、Microsotfの資本力や事業規模がもたらすスケールメリットです。各所からFUの不具合情報が多数報告されますが、MSは、そのスケールメリットを背景に次々と修正パッチを配信し、問題を解消させています。優秀なエンジニアが多いこともスケールメリットの1つといえます。このスケールメリットおかげで、ユーザーも不満を抱きつつ、どこかで安心感を持っているのではないでしょうか。

各社ベンダーの対応

Windows 10を扱うベンダーは多数います。彼らが売上を拡大するためには、性能やデザインに加え、FUが引き起こす障害について、原因と対策をユーザーに逸早く公開することが求められます。経験曲線の原理と同じように、今後この対応の速度や精度は改善されていくのではないでしょうか。

エンタープライズ向け製品としての強み

エンタープライズ向け製品として進化してきたWindowsは、大量デバイスの管理を得意としています。Windowsには、サービスチャネルやサーバの機能によって、規模や要件に応じてWindows Updateを制御することが可能なため、ユーザーはそのノウハウを拠り所としています。

Windows updateの対応について

ここでは、Windows 10の大きな課題とされている、Windows Update(特にFU)の対応方法について書きます。かくいう私もWindows10の導入担当ですが、Windows Updateについて、包括的かつ体系的に説明しているサイトが少ないため、ここで整理したいと思います。ただWindows updateについては、サービスの名称や期間がよく変わるため、こちらの情報もすぐに老朽化する恐れがあることをご承知おきください。

まずは、アップデート方法ですが、サービスチャネルとサーバによる方法とに大別することができます。

サービスチャネルについて

サービスチャネルとは、サーバを介さず、Microsoft updateサイトから直接FU(Feature Update = 機能更新プログラム)を受け取ることです。種類としては、一般、SAC(Semi-Annual Channel)、LTSC(Long-Time Servicing Channel)の3つがありますが、大きな違いは、FUの配信タイミングです。一般は即時配信され、必然的にFUのパイロットテスター(=人柱)となります。SACは、グループポリシーにより、FUのタイミングを任意に設定でき、最大365日間の延期が可能です。LTSCは、10年間はFUの受け取りを免除することができ、QU(Quality Update = 品質更新アップデート)のみ受け取り可能です。

それでは、このサービスチャネルの意図は何でしょうか。それは、FUによる影響を軽減させることです。一般は、家庭向けのため、FUの即時配信でも影響はないとされています。SACは企業向けのため、ビジネスに影響がないよう、配信までにパイロット期間を最長365日間、設けることができます。LTSCは、キオスクやATM、医療機器などレガシーなシステム維持のために、長期にわたってFUを免除することができます。

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サーバでの制御について

いずれにしてもサービスチャネルは、Microsoft updateサイトから直接FUを受け取ることになるため、アップデート対象PCが大量にあると、インターネットゲートウェイの帯域圧迫につながります。帯域不足を回避するためには、サーバ側でFUを受け取り、サーバから配信する事になりますが、それがWSUSとSCCMの役割になります。

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出典:Windows Server 2012 R2 で WSUS サーバを構築する(1) - yuu26's memo

 WSUSとSCCMは、アップデートの自動化や状態管理を可能としてますが、その細やかさや柔軟性において、SCCMに軍配が上がります。

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企業において、FUを適用するために、どうやってサービスチャネルやサーバを使い分ければよいでしょうか。基本的には、ユーザー数の規模に応じて決めます。

ユーザー数が少ない場合

ユーザー数が少なければ、SACにてFUの配信タイミングを決め、人力で対応します。最初の配信先はリテラシーが高い人や管理者のPCにして、問題なければ順に適用していくと良いでしょう。

ユーザー数がそこそこ多い場合

ユーザー数がそこそこ多いと、SACでの制御が難しくなるため、WSUSを使用します。但し、FUの適用や再起動が制御できない上、結果も一覧にできない等の制限があります。そのため、WSUSに加えて、管理者のマニュアル対応が必要になります。もちろん、社内の統制が取れていれば、FUのアップデート要求を受けた時に、ユーザー自身が最適なタイミングでアップデートし、再起動を完了させ、その結果をフィードバックしてもらえますが、現実的ではないと思います。WSUSは万能ではないため、アップデートの補助機能と捉え、上手に利用すると良いでしょう。

ユーザー数がすごく多い場合

ユーザー数がすごく多いと、WSUS+手動対応では捌くことができません。無理をして人海戦術に頼れば、人件費の方が高くつくでしょう。従って、SCCMと社内調整でなるべくアップデートを自動化させることをお勧めします。SCCMでは、細かい単位でPCをグルーピングしてアップデートができる上、その結果も一覧にでき、条件に応じて自動的にリトライもできます。PC全体で死活監視やリソース管理もできるため、あのPCがダウンしている、このPCのディスク容量が不足しているなどの情報も取れて、柔軟に対応することもできます。

しかし、Windows UpdateのみをSCCMの目的にすることは賢い選択とは言えません。SCCMは、MDMやソフトウェア管理など機能が盛り沢山のため、ライセンスが非常に高くつきます。SCCM利用を検討する場合は、Windows Updateをはじめ、その他の業務もSCCMで一元管理できるよう全体の設計を見直した方が良いでしょう。

そこで、もう一つの選択肢としては、WSUSと他社のサービスを組み合わせる方法があります。使ったことはありませんが、例えば、富士通のLanScopeという製品は、SCCMよりも安いことは勿論のこと、Windows updateに特化して、WSUSの弱点を補うことを主眼としています。

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出典:https://www.fujitsu.com/jp/group/fjm/mikata/column/motex/002.html

まとめ

Microsoftは、Windowsという共通プラットフォームを確立し、OS市場にて君臨しました。ニーズの多様化と急速な変化に対応できるよう、Windows10をWaaSという位置づけでリリースしました。Windows Updateなどまだまだ課題はありますが、国内シェアの推移をみると、市場の信頼を取り戻しつつあることが伺えます。

今後、Windowsが更に進化を遂げるためには、買収したGitHubを使って自社の製品価値を高めることが求められます。その進化に伴い、Windows10の展開や運用も更に楽になることを期待しています。

クラウド化が拡大する背景と今後のシナリオ

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こんにちは、Taikiです。

今回はクラウドについて、お話しします。IDCの調査をみても分かるように、今後クラウドサービスの売上は増加することが予想されます。

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出典:https://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20181001Apr.html

今さらですが、なぜクラウドの売上は成長を続けるのでしょうか。また、ビジネスの視点でみたときに、クラウドはどんなことを実現してくれるのでしょうか。そして、今後はどういう展開になるのでしょうか。今回はその変化に迫ります。

目次はこちらになります。

クラウドサービス拡大の背景

クラウドサービスには、プライベートとパブリックの2種類があり、現在は特にパブリッククラウドが主流となっています。この背景には、自前でクラウド基盤を持つより、クラウドベンダーが提供するサービスを利用して、事業に集中したいという思惑があります。

では、なぜクラウドサービスは拡大しているのでしょうか。

端的に言うと、情報を広く集めて分析し、逸早く商品やサービスを提供できるからです。具体的にいうと、この3点にまとめることができます。

ビジネスの多角化と多様化

1つ目の理由ですが、ビジネスの多角化と多様化が求められる時代になりました。現在、市場にはモノやサービスがあふれていますが、その殆どは直ぐにコンシューマ化され、類似商品がリリースされ、売上競争が激化しています。

企業は常に新しい製品やサービスを提供することが求められ、ビジネスのスピードは加速しています。それと連動して、商品開発のサイクルも短くなります。

アプリケーション開発の話ですが、アプリのリリースサイクルを短くするためには、その開発手法にも変化が求められます。ウォーターフォールと呼ばれる従来の手法から脱却し、アジャイル開発といった変化に強い手法が使われるようになりましたが、これがクラウドと非常に相性が合いました。

クラウドは基本的に初期投資が不要で従量制のため、スモールスタートで軌道に乗ればスケールアウトし、低迷すればスケールインすることが可能です。小規模で開発し、状況に合わせて方針や規模を変えるアジャイル開発は、元来クラウドと非常に馬が合うのです。その結果、特にWeb系のサービスでは、クラウドの需要が増加しています。

ユーザービリティの追及

2つ目の理由ですが、クラウドはプラットフォームを提供するベンダーがユーザービリティを追及した結果だといえます。

メインフレームの時代は、クライアントの機能が制限され、サーバに殆どの処理をもたせていました。次にクライアントサーバ(クラサバ)の時代に移りますが、サーバとクライアントとで処理を分担するようになりました。そして、クラウドの時代に進み、デバイスやロケーションに依存せず、クラウドからサービスとして機能を受け取ることができるようになりました。

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https://www.slideshare.net/after311/it-92461381

このプラットフォームの変化なぜ起きたのでしょうか。ベンダーが性能と同時にユーザービリティを追及してきたからです。

メインフレームでは、サーバ依存でクライアントの性能が不十分でした。クラサバではモノやロケーションに依存してクライアントの自由度が制限されました。それらの課題を解消するため、クラウドというプラットフォームが登場し、機能性と柔軟性を実現しました。

テクノロジーの発達

3つ目の理由は、デジタルフォーメーション(DX)の存在です。IoTやAI、RPAがその代表といえます。現在は、家電や車、時計などIoT化が進み、幅広く情報を取れる時代になりました。企業は、その情報を解析することで、次の売れ線を見つけ、マーケットニーズに合った商品を世に送ります。情報収集や情報分析、マーケットや販売戦略、商品開発など一連の企業活動を、クラウドによってワンストップで実現することができます。

クラウドをどう活用するか

ビジネス成功のために、クラウドをどう活用すべきでしょうか。クラウドは対象となるレイヤーに応じて、サービスの種類が異なります。

  • IaaS: Infrastructure as a Service
  • PaaS: Platform as a Service
  • SaaS: Software as a Service

IaaS(イアース)がもたらす効果

IaaSとは、サーバやネットワークなどインフラを提供するクラウドサービスになります。

このサービスの上に、社内向けだと、例えば情報系や基幹系のサーバを置きます。社外向けだとオフィシャルサイトやECサイトなどを置きます。特にECサイトのような会員機能をもつサーバは、アクセス増減の幅が大きく、負荷の変動が激しいため、クラウドのようなスケーラブルな環境は重宝されます。そういった柔軟性に加え、IaaSはサービスの可用性を確保してくれます。例えば、AWSSLAを99%以上保証し、サービスが停止したときには停止時間に応じて返金してくれるシステムになっています。

 PaaS(パース)がもたらす効果

PaaSとは、開発環境を提供するクラウドサービスになります。

PasSがもたらす効果は、ビジネスサイクルの速さです。有名なPaaSであるHerokuを例に説明します。

自由度の高さ

HerokuはWebアプリでよく使用される、Node.jsやPHPJavaRubyなど多数の言語をサポートしています。また他社のクラウドサービスとの連携も可能です。

例えば、ある企業がM&Aして事業の統廃合が起こったとします。買収先のシステムを統合するために、他社が扱うアプリやOSなど異種連携が必要なときにHerokuはその力を発揮します。Heroku Connectで他社と自社のシステムを連携することで、他社アプリをHerokuで引き続きコーディングできたり、他社データを自社のDBに投げて情報を一元化し、システムの統合をスムーズに進めてくれます。

開発と運用効率の向上

HerokuはGitHubを使用します。GitHubクラウド上で開発したりソースを共有できる上、バージョン管理も自動化されます。そのままGitからDeployすることも可能です。共同開発できる上、プロジェクトやタスクも管理できるので、複数のツールでできることが、Git Hub1つで可能になります。これがHerokuが選ばれる理由の一つです。

更にHerokuには膨大なアドオンが用意され、システム管理を省人化してくれます。開発規模が大きくなればその効果は益々大きくなるでしょう。

情報の網羅性

Herokuはさまざまなクラウドフレームワーク、データベースと連携し、複数のWebアプリやデータストアから、事業戦略に必要なデータを集めます。そのデータは、BIツールでより洗練された情報となり、マーケティングや商品開発を考える材料になります。そうして出てきた事業戦略が、Herokuを通じて再度アプリに組み込まれ、ビジネスサイクルを早めてくれます。

SaaS(サース)がもたらす効果

SaaSとは、ソフトウェアのクラウドサービスです。

SaaSがもたらす効果とは、ユーザーがより自社のビジネスに集中できる環境を整えることです。具体的には、サーバやミドルウェアなど下位レイヤーの構築が不要ということ、業務直結のサービスを受けることができること、また働き方改革に沿った柔軟な働き方を支援してくれるところにあります。

業務直結のサービス

業務に直結したサービスについてですが、どんなSaaSがあるのか、売上順に見ていきましょう。

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 出典:https://www.channelpartnersonline.com/2019/02/07/azure-still-king-in-public-cloud-while-azure-grows-fastest-ibm-falls/

 順にみていくと、Microsoftは、Officeをクラウド化してOffice365を提供しています。

Salesforceは、CRMクラウド化し顧客データ管理を一元化しています。

Adobeは、クラウドサービスとして、Adobe Creative Cloudを提供し動画や画像のクラウド管理や同時編集の機能があります。

Oracleは、オンプレとクラウド間のデータベース移行における、機能やパフォーマンスの再現性の高さとSoEを意識したアプリケーションを提供しています。例えば、Dockerを使ったアプリケーション開発環境、NoCodeのWebサイトアプリケーション作成ツール、センサーからのデータ収集やデバイス管理機能を載せたIoTの機能セットです。

SAPはERP大手であり、化学や医薬品、総合商社などで良く使われています。EAPは生産や販売、会計や人事など各システムのサイロ化を抑止し、部署間の連携を密にできるよう、異なる業務を統合管理し全体最適をはかるものです。その結果、アジリティやコスト効率を生み出します。

働き方改革

次に、柔軟な働き方の支援ですが、近年ロケーションやデバイスを選ばずに、自由な形態で働くことが許容されています。例えば、フリーアドレスやテレワーク、もっと言えば海外ノマドなど、自宅や外出先、また旅行しながらでも仕事ができるようになってきました。またBYODで見られるように、MDMやセキュリティソフトを追加さえすれば、自分のPCでも仕事ができるようになりました。こういった働き方の柔軟さもクラウドがもたらす恩恵です。 こういったインフラ構築不要だったり、業務直結のサービスを受けたり、柔軟な働き方を実現することによって、ユーザーはよりビジネスに専念することができます。

今後のシナリオ

では今後クラウドサービスはどう変化していくのでしょうか。

クラウドサービス間の乗り換え

クラウドは移行がしやすい分、乗り換えも簡単です。あるデータベース移行で、クラウドに乗り換えるもデータベースが巨大すぎて複数に分割した結果、保守やメンテの時間が倍取られ、負担が増えたという話もあります。コスパが悪ければ乗り換えの検討が入ります。

SAPも乗り換えの危機に直面しています。既存のERPであるSAP R/3が保守切れになり、ユーザーはSAP S/4 HANAへの移行を求められます。しかし、新しいERPには沢山の課題があります。例えば機能の変更やデータベースに制限がかかるため、移行には、ハードウェアの新規購入やOSやデータベースの入替が発生します。修正が必要な機能要件や互換性の確認もあるため、おそらくはコンサルタントを入れての設計となり、その費用は膨大になるでしょう。このSAPのERP転換期に乗じ、MicrosoftOracleはそのシェアを奪おうとしています。

なぜSAPは大改修を余儀なくされたのでしょうか。SAP R/3が1992年にリリースされてから、以降25年以上にわたってバージョンアップを重ねた結果、SAP ERPソリューションは利用するほどシステムとデータが肥大化していき、リアルタイム性が欠如していくようになりました。今回のリニューアルは、肥大化したシステムやテーブルを修正し、システムの最適化を図るためのものです。長期的視野に立った時、同社は多少の犠牲を覚悟してでも、破壊的創造をせざるを得なかったのです。

AWSの話になりますが、AWSのパートナー会社は、ユーザーにクラウドサービスを提供するときに、そのアカウントを自社から発行します。なぜでしょうか。確かに、Amazonへの支払いがドル建てのため、代行決済という一面もありますが、本当の狙いは、他社乗り換えへの障壁を高くするためです。アカウントを握っていれば、アカウント間では既存のインスタンスを移行することができません。これがAWSパートナー会社が提供するリセールサービスの狙いです。

クラウドインテグ業務の内製化

クラウドの難点はノウハウ習得の難しさにあります。多数のオプションがあり、料金体制も複雑で、情報も少ないです。事業会社は最適な導入や運用方法が分からず、サービス会社に任せた結果、費用は更に高くなることもあります。

techtarget.itmedia.co.jp

従って、今後、クラウドが浸透すると、コスト削減を目的として、自社でノウハウを習得したり、外部からクラウドに強い人材を入れるなどして、クラウドの構築や運用を内製化する動きがでてきます。従って、今後サービス提供者は、IaaS一辺倒ではなく、PaaSなども組み合わせて、独自の付加価値を提供せざるを得ません。前述したアカウント縛りのリセールサービスだけでは生き残ることはできません。

オンプレへの逆流とハイブリッド化の流れ

今後の流れを列挙してみましたので、これに至るプロセスを仮説してみます。

  • オンプレに戻す
  • 別のクラウドサービスに移行する
  • オンプレとクラウドのハイブリッド構成にする

まずはユーザーがオンプレに戻す理由は何でしょうか。オンプレに移行して、思ったほどの費用対効果を得ることができなかったからです。そして、利用年数やスケールを考えて、コストメリットがあれば、実績のあるオンプレに戻すことを選びます。

別のクラウドサービスに移行する理由は何でしょうか。現状のクラウドサービスに満足できないからです。例えば、先述したSAPの新しいERPに移行すると、Oracleのデータベースが使えなくなります。データベースの鞍替えは特に大変なため、Oracle Cloudの選択肢が出てきて、条件が合えば移行する運びになります。

オンプレとクラウドのハイブリッド構成にしたい理由はシンプルです。自社にとって、メリットがあるものはクラウド、なければオンプレを維持するだけです。移行の定型パターンですが、まずはインパクトの少ない情報系のサーバを移行し、メリットがあれば他のサーバも移行します。結局、今後は、「良いとこ取り」のハイブリッド構成が主流になってくるのではないでしょうか。

まとめ

来年にはWindows Server 2008のサポートも切れるため、それを機にクラウド移行という企業も多いのではないでしょうか。結論やってみないと分からないため、早めに比較検討することをおすすめします。

ブロックチェーンがビジネスの進化だけでなく、社会問題さえも改善できる理由

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出典:http://labokuma.hatenablog.com/entry/2018/01/11/222424

こんにちは、Taikiです。

2019年1月、宅ファイル便が480万件もの個人情報流出した件は、記憶に新しいでしょう。情報産業にとって、システムの脆弱による情報流出は防がなくてはいけません。

その堅牢で利便性のあるシステム要件を満たす情報セキュリティ技術として、ブロックチェーンが注目されています。

今回は、なぜ次世代技術として、ブロックチェーンが注目されているのか、社会にどんな利益をもたらしていくのか、そして、今後どう広まっていくかを考察します。

目次はこちらになります。

ブロックチェーンはなぜ安全といえるのか

既存システムと比べてブロックチェーンはどのくらい安全なのでしょうか。

ブロックチェーンは、従来のサーバによる集中管理ではなく、「分散型台帳技術」と呼ばれる分散管理を行い、複数のユーザーが取引データを保持し、その整合性を監視しています。例えば、今まで、数千のユーザーを抱える取引のデータは、基幹サーバで集中管理し、その整合性をチェックしました。従って、攻撃者の対象はその基幹サーバに絞ることができます。

しかし、ブロックチェーンを採用した場合、数千のユーザーが分散して同じ取引データを保持し、その整合性をお互いに監視しているため、セキュリティ強度は飛躍的に高くなります。

但し、このマイニングとよばれる取引データの整合性チェックは、スパコンのような高い処理能力が求められるため、パーソナルユースのPCでは難しいとされています。しかし、この処理を実行したユーザーには報酬が支払われるため、マイニング作業を進んでおこなう企業やユーザーも多数います。そして、分散型運用のため、局所的なシステムのダウンにも耐え得る設計となっています。

こうしてブロックチェーンは、ビットコインや金融サービスだけにとどまらず、決済、証明、契約などあらゆる場面に活用できる技術として、期待されています。

奈良先端技術大学では、ブロックチェーンの技術を応用し、IoTのセキュリティを保証する技術を開発しました。

www.naist.jp

しかし、NEMという仮想通貨の流出でも分かるように、ブロックチェーンの実用化にはまだまだ課題が多いため、各社で実証試験や研究がが行われている段階です。

ブロックチェーンができた背景

このブロックチェーンという構想はどうやって生まれたのでしょうか。

ブロックチェーンはそもそもビットコインという仮想通貨の実用化を支えるための技術でした。ビットコインブロックチェーンもサトシ・ナカモトという匿名の人物(またはグループ)が開発したものです。

このサトシ・ナカモトがビットコインを世に送り出した理由は、長年あらゆる商取引の間に銀行が入り込み、中間搾取するという図式を変えたかったから、とされています。つまり、銀行という巨大な中間搾取の介在をなくすべく、ブロックチェーンという技術が生まれました。いわば個人が銀行業務を代行するジャイアントキリングの発想がその由来となっています。

しかし、ビットコインは中間搾取をなくすための統一通貨ではなく、単なる投機性の高い金融商品とみなされて暴落を繰り返し、逆にブロックチェーンの技術は高く評価されました。

皮肉なことに、その技術を応用し、自社のビジネスやセキュリティを強化しようとするのは、銀行をはじめとする大手の企業です。この事実は、ブロックチェーン関連の特許出願をみると分かります。

出典:https://junyahirano.com/about_blockchain_patent/

ブロックチェーンが社会にもたらすもの

次に、ブロックチェーンの技術はどんなことに役立てることができるでしょうか。

ブロックチェーンは情報セキュリティの要として注目されています。情報セキュリティの三原則はCIAと呼ばれる、機密性、完全性、可用性ですが、この三原則から今後の実用例を考えてみましょう。

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https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0509/15/news002.html

例えば、こんな事が可能になるとされています。

  • ネット投票
  • 生体情報による決済
  • 個人間送金や国際送金のスピード向上やコスト削減

ネット投票ですが、昨年つくば市では、国内初のネット投票の実証実験を行い、本人確認やセキュリティの確保のためにマイナンバーカードとブロックチェーン技術を併用しました。

またKDDI日立製作所は、ブロックチェーン と生体ID認証を組み合わせたクーポン決済システムの実証実験を行い、異業種間のアライアンスの強化をサポートしています。

出典: https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2018/07/25/3279.html

 富士通は全銀ネットと協力し、ブロックチェーン技術「銀行間システム」を実証しています。銀行間で資金決済が必要になった場合、旧来の方法ではなく、決済用のデジタル通貨で送金を処理することにより、手数料や人件費などの送金コストを抑えることが期待されます。

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出典:http://pr.fujitsu.com/jp/news/2018/10/29-1.html

また国際送金においても、「コルレス契約」という旧来の送金方法があり、銀行間の送金経路が固定され、送金経路数が多ければ、手数料や日数が嵩んでしまうという課題がありました。この課題を打開するため、JPモルガンブロックチェーン決済プロジェクトINNを立ち上げ、世界75行が参加します。

今後のシナリオ

政府はブロックチェーン活用にまだまだ及び腰ですが、米国を中心に政府機関でもブロックチェンの実用実験や研修は年々加速しています。もし政府主導で、ブロックチェーンソリューションに乗り出せば、数々の社会問題にかかる社会コストを削減できる可能性は大いにあります。

例えば、下記のような市民サービスがネットで享受できたらどうでしょう。ブロックチェーンによるセキュアな管理のおかげで、情報はトークン化されて盗聴されず、スマートコントラクトによって、自動で条件確認や履行が行われるとしたら、劇的にコストを削減できると思いませんか。

  • 出産一時金や児童手当の手続きや管理
  • 失業給付の手続きや管理
  • 国民保険の手続きや管理
  • 年金の手続きや管理
  • 介護保険の手続きや管理
  • 高齢者医療保険の手続きや管理
  • マイナンバーの手続きや管理

もし政府が本気でこういった施策に乗り出せば、民間でもブロックチェーンソリューションは爆発的に普及することでしょう。先の出願数を国別でみると分かるように、中国は既に政府レベルで動いています。

所感

個人的には、ブロックチェーンで新たなユーザー体験を創造できると思います。今までと同じ見せ方で実用化してもブロックチェーンの価値は薄まります。例えば、従来のクレカ決済や電子マネーを裏でブロックチェーン化したところで、ユーザー体験が変わらなければ大きな効果は期待できません。

ユーザ体験の創造によってイノベーションが生まれます。かつてはアナログだったものが、ここ数年でネットで動画を視聴できたり、スマホで新聞を読めたり、SNSで連絡が取れるようになりました。それと同じように、近い将来、生体認証による電子決済ができたり、選挙でスマホ投票ができたり、ネットで公的な手続きができるような、今までになかったユーザー体験ができることを期待しています。

 

キャッシュレス率は上昇するが、政府の思惑通りにいかない理由 

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出典:https://tatsumushi.work/?p=1283

こんにちは、Taikiです。 

現在QRコード決済の種類は増えていますが、日本のキャッシュレス率はまだ20%程度です。

そもそもキャッシュレスを普及させたい理由は何でしょうか。またクレカや電子マネーなど既存のサービスがありながら、QRコード決済が出てきたのはどうしてでしょうか。そして、キャッシュレス率が90%の韓国と日本とでは何が違うのでしょうか?

今回はそれらを考察し、キャッシュレスの行く末に迫りたいと思います。

目次はこちらになります。

キャッシュレスを普及させたい理由

政府の狙い

政府にとって、キャッシュレス普及の狙いとは何でしょうか。それは主に安全性とコスト削減、財源の確保にあります。

  • 安全性の強化:強盗や偽札、脱税やマネーロンダリング防止
  • コスト削減:ATMや現金輸送、現金の鋳造コスト削減
  • 財源確保:脱税防止とインバウンド需要拡大に伴う税収アップ

近い将来、国内の景気は冬の時代に突入すると予想していますが、その前にキャッシュレスを普及させたいのが政府の本音です。キャッシュレスを急ぎたいインバウンド需要の具体例はこちらになります。

今後日本は少子高齢化に伴い、雇用や消費の面で、他国への依存が強くなりますが、外国人の受け入れを円滑にするためには、キャッシュレスを拡充することが求められます。

例えば、中国人の殆どはQRコード決済を利用し、韓国人や欧米人もクレカを利用しています。中国の2017年のモバイル決済金額は約3450兆円、同国の主要なキャッシュレス決済サービスであるAlipay9億人の利用者がいます。この巨大市場のインバウンド需要は無視できません。

また、外国人労働者もデジタルマネーで給与を支払ってもらえれば、帰国後もそのまま使用でき日本の往来も活発になることが期待されます。

https://www.dir.co.jp/report/asia/asian_insight/20181228_020557.pdf

企業の狙い

では、キャッシュレスサービスを提供する企業はなぜ普及させたいのでしょうか。それは主に収入源の確保や情報収集ノウハウの確立にあります。 

  • ストック収入:入金手数料、決済手数料
  • 情報の収集:消費者の属性や行動パターン
  • ノウハウ確立:キャッシュレス技術の確立

企業として、安定した収入はもちろんのこと、情報の収集やノウハウを得ることで、新しいビジネスチャンスが生まれます。

消費者の情報とキャッシュレスという決済方法、更に5Gなどの技術を組み合わせれば、今までにないビジネスが形成されるでしょう。楽天ソフトバンクauDocomoの通信会社がもれなくキャッシュレスサービスを展開する理由もここにあります。現在、各社はポーカーのように、強い役をだすために有利な手札を集めています。

では、クレカや電子マネーなど既存のサービスがありながら、QRコード決済が出てきたのはどうしてでしょうか。

まずは、経営者がキャッシュレス決済を導入していない理由をみてみましょう。

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出典:https://news.cardmics.com/entry/linepay-fukyu-shinai/

コスト面が特に目立ちますが、資本が少ない中小企業にとって、コストの増加や入金サイクルが長いことは財務的に良くありません。国内にある企業の大半は中小企業ですので、今後キャッシュレス率を向上させていくためには、中小企業に普及していくことが重要になります。

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そこで、そのデメリットをカバーできるサービスを提供することで、登録店舗や利用者を囲みこみたいため、各社からQRコード決済がでてきました。種類は豊富にありますが、各社によってさまざまなメリットがあります。

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出典:https://pipitchoice.jp/qr-comparison/

 更に経産省も、ボトルネックである中小企業を対象にキャッシュレス導入のための補助金政策を打ち出しています。

www.meti.go.jp

韓国でキャッシュレスが急速に広がった理由

少し話を変えて、キャッシュレス率が90%を誇る韓国の背景について、説明しましょう。

韓国では、1997年の東南アジア通貨危機をきっかけに、消費活性化と脱税を目的に、キャッシュレス化を国策としました。具体的に、クレジットカード利用額の一部所得控除宝くじ権利の付与、店舗でのクレカ取り扱いを義務化し、急速に国内で広がりを見せました。

日本でも同じことをすれば普及すると思いますが、日本政府はそれを良しとしないでしょう。日本は強硬政策を嫌う傾向にあります。政策を強行し、店舗を廃業に追い込んだり、関係協会の反発を買えば、野党の攻撃材料となり与党の立場が危うくなります。以前も記事にしましたが、UberCarなど白タクを解禁しないのもそのためです。 

vtaiki.hatenablog.com

今後のキャッシュレスの行く末

今後日本はキャッシュレス率を40%まで引き上げることはできるでのしょうか。

結論をいうと、目標である2025年までに達成できるかは不明ですが、いつかは達成できるでしょう。しかし先にあげた政府の狙いは中々思い通りにいきません。

確かに若年層にはキャッシュレスが広まり、徐々に利用率は向上していくでしょう。しかし政府の掲げる狙いの中で、特に重要なポイントは財源の確保です。すなわち、企業や個人のキャッシュフローの透明化を図り、脱税を防止し、税収をアップすることです。そのための重要課題は、割合の大きい中小企業高齢者世帯にキャッシュレスを普及させることですが、それがうまくいきません。なぜでしょうか。

企業にとって、キャッシュレスは負担以外の何物でもありません。新たなキャッシュレスサービスを導入しても現金取引がなくなるわけではありません。ただ負担が増えるだけです。それはドン・キホーテの例をみても分かります。

www.ryutsuu.biz

また、中小企業にとって、キャッシュレスにすることは不利に働くことが多いでしょう。資本が少ない企業にとって、手元にキャッシュがないことは死活問題だからです。いざというときに、運転資金が途絶えると倒産の憂き目にあいます。

次に、資産を多く持つ高齢者はなぜキャッシュレスに消極的なのでしょうか。一番の理由はよく分からないからです。しかも日本ではキャッシュレスの種類が多すぎて、更によく分からなくなっています。ジャムの法則というものがありますが、、種類が多すぎると、逆に選択する意欲を失ってしまうのです。

また、高齢者はなぜタンス預金を好むのでしょうか。その答えは、高齢者が心配していることを想像するとよく分かります。一番の理由は健康です。高齢者はいつ健康を損なうか分かりません。認知症や痴呆などの診断が下りた場合、その銀行口座は凍結され引き出すことができなくなります。債務整理、相続、不正利用が凍結の主たる目的ですが、解除するには弁護士に依頼するなど煩雑な手続きが必要です。こういった事態に備え、タンス預金者は今も増えています。その結果、オレオレ詐欺にだまし取られる危険性が高くなり、政府の狙いの一つである、安全性の確保も難しくなります。

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出典:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39300560S8A221C1CC0000/

こういった事情により、キャッシュレスは、全体の核となる中小企業や高齢者に遅々として普及が進まず、政府の目論見は中々思い通りにはいかないと考えます。

まとめ

政府にとって、キャッシュレスを最も普及させたい中小企業や高齢者は、根強い銀行不信や将来の不安のため、今後も手元から現金を離すことはないでしょう。そう考えると、政府の掲げる利用率40%の達成はまだまだ先になるのかもしれません。