日本が液晶・プラズマテレビで負け、プレミアム有機ELテレビで勝利した理由
出典:ソニー 4K有機ELテレビ ブラビア『KJ-65A1』(65型) 他 ハイレゾ対応の『X9500E』など4Kブラビア全12機種発売 – ソニーってどう?
こんにちは、Taikiです。
テレビ市場のマーケットリーダーは頻繁に入れ替わっています。
なぜ技術で勝る日本メーカーは、液晶・プラズマテレビで、韓国メーカーに敗北したのでしょうか。そして、どうやってSonyはプレミアム有機ELテレビ市場で返り咲くことができたのでしょうか。
戦略理論を軸にその理由に迫りたいと思います。
あくまで個人の見解ですので、ご承知おきの上、お読みください。
目次はこちらです。
日本が液晶・プラズマテレビで敗北した理由
1980年代、まだブラウン管テレビの時代、日本メーカーは持ち前の技術力で高機能、高性能のテレビを開発し、世界のテレビ市場を席巻していました。テレビ黎明期のこの時代、日本メーカーの技術は、高付加価値戦略に大きな成果をあげ、北米でもNo1のシェアを獲得していました。
米国カラーテレビ市場:1988年の生産企業の国別シェア(%)
しかし、薄型テレビの時代に入り、事態が急変。日本の高付加価値戦略は機能しなくなり、中韓メーカーと価格競争し、売上は低迷しました。
なぜ高付加価値戦略は、通用しなくなったのでしょうか。
日本メーカーの高付加価値が、消費者にとって、高いお金を払うほど価値的ではなくなったからです。ほとんど使わない細かい機能を実装するより、安くてシンプルなテレビがほしい、そんなニーズに応えたのが韓国メーカーでした。
どうやって韓国メーカーは薄型テレビの価格を抑えることができたのでしょうか。
韓国メーカーのコスト優位の決め手となったのは、低機能と技術力です。マイケル・ポーターが提唱するコストリーダーシップ戦略によると、技術が優れていると価格を抑えることができます。
では韓国メーカーはどうやって技術力を手に入れたのでしょうか。
以前日本メーカーの経営再建でリストラされた技術者達が大勢いました。
その技術者達は、韓国に雇用され、国外への技術流出が始まりました。その結果、日本の技術力が韓国のコスト優位を支え、日本メーカーを苦しめる結果となりました。
自社で開発や生産を全て行うリスク
日本メーカーの敗因は、コストの優位性だけではありません。ブラウン管テレビ時代から続く、垂直統合型のビジネスモデルも関係していました。垂直統合型は、液晶テレビの開発から生産、販売と、川上から川下まで一社が統合して行うビジネス形態です。自社で全てを開発・生産すると過剰な設備投資を行う必要があるため、自社だけで消費することが難しくなります。そのため、部品によっては、外部に生産供給したり、逆に受託生産するような柔軟さが求められます。職人文化の根強い日本にとって、外部に生産委託したり、受託することは当初難しかったのかもしれません。
Sonyがプレミアム有機ELテレビで巻き返した勝因
2018年、プレミアム有機テレビの分野で、Sonyは世界の頂点に立ちました。シェアは断トツの44%でした。
https://japanese.joins.com/article/846/238846.html
どうやってSonyはこの市場で競り勝つことができたのでしょうか。
Sonyは韓国のLGエレクトロニクス社製の有機ELパネルを採用しています。他社を巻き込んだサプライチェンを形成する水平分離型のビジネスを採用し、技術向上やコスト削減ができました。かくして、有機ELパネルのマーケットリーダーであるLG社のパネルを採用することで、テレビ市場において日本メーカーが巻き返しに成功することできました。
オープンイノベーションの波
Sonyのプレミアム有機ELテレビの売上拡大は、当然そのパネルをOEM供給するLG製の利益にもつながります。LG社にとって、日本テレビ市場でシェアを拡大することが難しいため、Sonyの製品を通じ、日本のマーケットから利益を得ることができます。
同じようなOEM生産の事例として、iPhone があげられます。最近iPhone XS、iPhone XSマックスの分解調査の結果、東芝製の部品が採用されていることが分かりました。垂直統合型のビジネスで知られるAppleも、iPhone最新モデルの重要基盤に東芝製のパーツを採用していました。
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今まさに自社完結のクローズドイノベーションから、他社と協業し競争力のあるサービスや製品を創造するオープンイノベーションの時代に移り変わっています。
オフコンが廃れ、ガラケーの生産終了をみると、オープン化への大きな流れに逆らうことができません。