パイオニアが経営破綻し、香港系ファンドが買収に乗り出した理由
こんにちは、Taikiです。
本日はパイオニアが経営破綻した理由に迫り、なぜ業績不振の同社を、香港系ファンドは購入しようと思ったかを考えます。
あくまで個人の見解ですので、ご承知おきの上、お読みください。
パイオニアの全盛期
1930年代から、パイオニアは、スピーカーなどオーディオ機器の販売し、有名なところでは、カーステレオ、レーザーディスク、CD-ROM等の光学ディスクドライブを手がけました。
1970年代、米国のワーナーブラザーズや渡辺プロダクションと共同出資し、ワーナーブラザーズパイオニア合弁会社を設立しました。
一社提供のテレビ番組も複数あり、メディア露出も盛んでした。
メディアや音楽などの花形事業、オーディオやカーエレクトロニクスなどの電機機器事業、パイオニアは才色兼備の企業として、華やかに活躍していました。
1990年代、カーナビゲーションシステムを発売し、プラズマディスプレイシステムにも着手しました。
パイオニアの衰退期
2000年代、薄型テレビの時代に突入し、パイオニアはプラズマテレビの開発生産に踏み決まりした。自社に工場設備を構え、量産体制を整えましたが、他社が製造する液晶テレビとの価格競争に負け、プラズマテレビ事業を撤退しました。
次いで、オーディオ事業も手放し、社運をかけた、カーナビゲーションシステムのOEM生産でも減価償却費が膨らみ、銀行からの融資も止められ、資金不足に陥り、経営破綻になりました。
経営破綻の原因
1つ目は、事業が不採算に陥った理由を考えましょう。パイオニアは、プラズマテレビ、オーディオ、カーナビゲーションシステムの販売が不振に終わりました。
この3つに共通する販売不振の原因は何でしょうか。
それは、代替品へのスイッチングコストが低下したことです。
プラズマテレビは対抗馬のより安い液晶テレビに簡単に乗り換えることができます。オーディオ製品やカーナビもiPhoneなどスマートフォンがあれば、特に乗り換えの負担はありません。
スイッチングコストが高い例としては、WindowsユーザーがPCをMacに変えることでしょうか。その場合のコストはこちらです。
MNPが採用される前は、携帯電話の乗り換えもスイッチングコストが高いとされていました。携帯番号を変更しないといけないからです。SNSが流行した今でも携帯番号とSNSのアカウントは紐づいているため、MNPの恩恵は大きいと思います。
2つ目は、不採算に陥り、更に経営を悪化させた理由を考えましょう。
プラズマテレビ、オーディオ、カーナビゲーションシステムの事業に共通する経営の悪化を早めた理由は何でしょうか。
それは、大規模な生産設備を保有し、不採算事業から早期撤退ができなかったからです。生産設備という固定資産に投資したパイオニアは、その投資分を回収できない限り、事業撤退は困難になります。回収できないまま事業をたためば、その損失分は決算書に反映され、株価にも影響します。
固定資産の投資額を回収できない場合、減損会計の考え方はこちらになります。
ビジネスの基本は、スクラップ&ビルドです。いかに早く、不採算事業から撤退し、成長事業に経営資源を集中させるかが、鍵になります。
現在インフラ構築のトレンドにある、クラウドサービスも、意思決定のスピードを支えています。例えばAWSは、初期費用が不要な上、従量課金。Iaasのためオンデマンドで構築したり削除することが可能です。エンタメやECのような回転の早いビジネスには、うってつけのインフラ環境となっています。
香港系ファンドが買収した理由
では、なぜ死に体となったパイオニアを、香港系ファンドは買収したのでしょうか。
その理由は、大きく育てて転売すること、もし大きく育たなければ、同社が損しない程度の安値で転売することです。
日産が経営破綻に陥ったとき、ルノーは日産を傘下におき、資金注入やノウハウを教え、日産を立て直しました。その目的は、日産を通じ日本市場とアジア市場への進出が狙いでした。
しかし、香港系ファンドのベアリング・プライベート・エクイティ・アジア株式会社は、経営の立て直しという点では、目標は同じですが、目的が違います。
同社はあくまでも投資ファンドグループです。複数の投資家から集めた資金を基に事業会社株を取得し、同時にその企業の経営に深く関与して、企業価値を高めた後に売却することで収益を得ることを生業としています。
パイオニアに光る技術
香港系ファンドが買収に動いた動機は、パイオニアの中に光る原石を見つけたからでしょう。個人的には、クラウド型車両管理・動態管理システム、および自動運転技術を支えるLiDARかと推測しています。
これはパイオニアが中長期的な視野にたって、起死回生の策を何度も講じ、選択と集中を繰り返して、辿り着いた事業の柱です。これらのマーケットは今後も拡大していくことが予想されます。
こちらは、クラウド型車両管理・動態管理システムのマーケット予測になります。
自動運転の目となる光技術を活用したLiDARの市場予測になります。
出典:パイオニア、自動運転の目「LiDAR」で巻き返しへ 再建に向け各社と提携協議 | 自動運転ラボ
まとめ
パイオニアは、10年以上冬の時代が続きながら、選択と集中を繰り返し、地道に自社の強みを生かし、市場開拓や製品開発を行い、市場規模拡大が予想される、最先端技術の分野にまで着手しました。
株主は変われど、パイオニアのブランドは変わりません。その名の通り、今後は新規分野での「パイオニア」として、躍進を期待したいと思います。