小規模フィットネスの会員数が増加している理由

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出典:1万人規模!『FEELCYCLE LIVE LUSTER® 2019』4月20日(土)からチケット一般販売開始!|株式会社FEEL CONNECTIONのプレスリリース

こんにちは、Taikiです。

FEELCYCLE(フィールサイクル)というフィットネスジムをご存知でしょうか。暗闇の中、音楽に乗せてバイクを漕ぐ今流行りの暗闇フィットネスです。そのFEELCYCLEが、1万人規模のLIVE「FEELCYCLE LIVE LUSTER」を開催します。

「フィットネスでLIVE?」最初はよく理解できませんでしたが、その経緯については後述します。

現在、FEELCYCLEやRIZAP、ANYTIME(エニタイム)、カーブスといった小規模なジムがフィットネス業界を席巻しています。

なぜ設備が充実した総合ジムではなく、設備が限定された小規模ジムが人気の中心になっているのでしょうか。フィットネス業界の「今」と小規模ジムが快進撃を続ける理由に迫ります。

あくまで個人の見解ですので、ご承知おきください。

目次はこちらになります。

総合ジムの売上が伸びない理由

現在フィットネス業界は好調です。しかし従来の総合ジムであるコナミスポーツはいまいち売上が伸びません。何故でしょうか。

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出典:【SPEEDA総研】明暗分かれるフィットネスクラブの今後

 過去リーマンショック東日本大震災により、利用者の意識は大きく変わりました。経済が低迷し、会員は会費の高いジムを利用することに抵抗感を覚えたからです。

かつてのジムは、マシンやスタジオレッスン、プールにサウナなど至れり尽くせりの施設でしたが、全てを利用する会員はどれだけいたでしょうか。にもか関わらず、会費が高額なことに違和感を覚えていた会員は少なくなかったはずです。

こちらのグラフを見ると2008年のリーマンショック以降、売上高は堅調ですが、単価は下降していることが分かります。

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出典:【SPEEDA総研】明暗分かれるフィットネスクラブの今後

小規模ジムの強み

そのような市場背景に着目し、余計な設備を排し適正な価格でフィットネス事業に参入したフィットネスジムがあります。成長志向型のRIZAPや24時間フィットネスのANYTIME、女性高齢者層をターゲットにしたカーブスです。

集中戦略

小規模ジムに共通する点は、特定層をターゲットにした集中戦略です。市場全体を相手にしても資本や設備に勝る総合ジムには勝てません。RIZAPはストイック層、ANYTIMEは若年層、カーブスは女性の高齢者層に照準を合わせ、独自のサービスを提供しました。

ちなみに特定層をターゲットにした集中戦略は、米国の経済学者マイケル・ポーター氏が提唱しているものです。

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出典:http://management-strategy.net/porter/

RIZAPの強みは「トレーナー」です。採用率3%のトレーナーは、トレーニングだけでなく人を喜ばせ持ち上げる能力にも長けています。過酷なトレーニングを行うためには、トレーナーとの絶対的な信頼関係が不可欠なのでしょう。

カーブスの強みは、「会員を大切にする」ことにあります。顔を見て、名前は勿論のこと、特徴や悩みを覚えています。また、1週間来ない会員には電話で様子を伺ったりして、会員の継続的な運動をサポートすることが退会数低さにつながっています。

ANYTIMEの強みは「24時間営業」です。夜はスタッフが帰り、ジムは無人化運営です。会費の安さと24時間のサービスで若い世代の会員数を取り込んでいます。

多店舗経営

集中戦略が成功すると、次にどういう行動に出るでしょうか。

成功した店舗のノウハウを標準化し、多店舗経営に乗り出すことが定石となります。

「一点突破・全面展開」という言葉があります。古くは孫子の兵法にあり、現代ではビジネスにおけるランチェスター戦略のキーワードとしても有名です。簡単に言えば、あれこれ中途半端に手を出すよりも、一つのものに集中したほうが成果が上がりやすいということです。そして、うまくいった一つをきっかけに他方にも展開していけます。

関係性の構築

小規模ジムには、大規模ジムが真似しにくい強みがあります。それは、会員数が少ないため、スタッフと会員の関係が構築し易いことです。

この点は、女性の高齢者層をターゲットにしたカーブスが良いお手本です。カーブスのスタッフは、会員の顔と名前を完璧に覚え、気さくに声をかけます。例えは悪いですが、老後施設のスタッフがお年を召した要介護者にやさしく声をかけるイメージでしょうか。

特に女性の高齢者はコミュニケーションを欲している上、横のつながりも強く、口コミで会員数が堅調に推移しています。その様子がこちらのグラフから見て取れます。

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出典:【SPEEDA総研】明暗分かれるフィットネスクラブの今後

価値連鎖の強化

価値連鎖 (バリューチェーンという言葉をご存知でしょうか。簡単に言うと、企業内部のさまざまな活動を相互に結びつけて価値を生む方法です。価値連鎖はこちらの3つで構成されています。

では実際の例に当てはめていきます。

ANYTIMEカーブスFEELCYCLEは海外発のため、海外の成功例と国内のニーズを結び付け価値を生み出しました(社内バリューチェーン

無駄な施設を廃し適正な価格で会費を設定し、小規模のため近い距離で会員と接することのできる価値を生み出しました(垂直バリューチェーン

成功した店舗のノウハウを標準化し、多店舗経営に乗り出し、別の地域でも同等のサービスを提供しました(水平バリューチェーン

ここでFEELCYCLEの成功例を紹介します。

FEELCYCLEは、暗闇フィットネスという独自サービスだけでなく、個性的なインストラクターが多数在籍しています。イケメンやスタイル抜群、そしてノリノリの性格など色々です。その結果、特定のインストラクターを追いかける会員が増え、お目当てのインストラクターが別店舗に移れば、会員もついていくという現象が生まれました。

したがって、人気インストラクターが集結すれば、先に紹介した、「FEELCYCLE LIVE LUSTER」という1万人規模のライブが開催できるということにつながります。これが、FEELCYCLEが持つ垂直バリューチェーンの強みです。

そして、FEELCYCLEのフィットネスには、多数の音楽ジャンルが用意されていることも人気の一つです。その人気からApple Musicでプレイリスト化するほどです。このような楽曲制作や楽曲販売も、フィットネス事業から音楽ビジネスへと水平展開した、水平バリューチェーンの見本ともいえます。

www.feelcycle.com

まとめ

小規模ジムは総合ジムより資本や設備は劣るものの、集中戦略多店舗経営の結果、フィットネス市場で快進撃を続けています。また価値連鎖(バリューチェーン)の強化により、競争優位性を確保しています。

しかし、近い将来、国内経済には景気停滞という暗雲が立ち込めています。今後の環境変化に各社がどう対応するか、注目です。