キャッシュレス率は上昇するが、政府の思惑通りにいかない理由
こんにちは、Taikiです。
現在QRコード決済の種類は増えていますが、日本のキャッシュレス率はまだ20%程度です。
そもそもキャッシュレスを普及させたい理由は何でしょうか。またクレカや電子マネーなど既存のサービスがありながら、QRコード決済が出てきたのはどうしてでしょうか。そして、キャッシュレス率が90%の韓国と日本とでは何が違うのでしょうか?
今回はそれらを考察し、キャッシュレスの行く末に迫りたいと思います。
目次はこちらになります。
キャッシュレスを普及させたい理由
政府の狙い
政府にとって、キャッシュレス普及の狙いとは何でしょうか。それは主に安全性とコスト削減、財源の確保にあります。
- 安全性の強化:強盗や偽札、脱税やマネーロンダリング防止
- コスト削減:ATMや現金輸送、現金の鋳造コスト削減
- 財源確保:脱税防止とインバウンド需要拡大に伴う税収アップ
近い将来、国内の景気は冬の時代に突入すると予想していますが、その前にキャッシュレスを普及させたいのが政府の本音です。キャッシュレスを急ぎたいインバウンド需要の具体例はこちらになります。
今後日本は少子高齢化に伴い、雇用や消費の面で、他国への依存が強くなりますが、外国人の受け入れを円滑にするためには、キャッシュレスを拡充することが求められます。
例えば、中国人の殆どはQRコード決済を利用し、韓国人や欧米人もクレカを利用しています。中国の2017年のモバイル決済金額は約3450兆円、同国の主要なキャッシュレス決済サービスであるAlipayは9億人の利用者がいます。この巨大市場のインバウンド需要は無視できません。
また、外国人労働者もデジタルマネーで給与を支払ってもらえれば、帰国後もそのまま使用でき日本の往来も活発になることが期待されます。
https://www.dir.co.jp/report/asia/asian_insight/20181228_020557.pdf
企業の狙い
では、キャッシュレスサービスを提供する企業はなぜ普及させたいのでしょうか。それは主に収入源の確保や情報収集、ノウハウの確立にあります。
- ストック収入:入金手数料、決済手数料
- 情報の収集:消費者の属性や行動パターン
- ノウハウ確立:キャッシュレス技術の確立
企業として、安定した収入はもちろんのこと、情報の収集やノウハウを得ることで、新しいビジネスチャンスが生まれます。
消費者の情報とキャッシュレスという決済方法、更に5Gなどの技術を組み合わせれば、今までにないビジネスが形成されるでしょう。楽天やソフトバンク、au、Docomoの通信会社がもれなくキャッシュレスサービスを展開する理由もここにあります。現在、各社はポーカーのように、強い役をだすために有利な手札を集めています。
では、クレカや電子マネーなど既存のサービスがありながら、QRコード決済が出てきたのはどうしてでしょうか。
まずは、経営者がキャッシュレス決済を導入していない理由をみてみましょう。
コスト面が特に目立ちますが、資本が少ない中小企業にとって、コストの増加や入金サイクルが長いことは財務的に良くありません。国内にある企業の大半は中小企業ですので、今後キャッシュレス率を向上させていくためには、中小企業に普及していくことが重要になります。
そこで、そのデメリットをカバーできるサービスを提供することで、登録店舗や利用者を囲みこみたいため、各社からQRコード決済がでてきました。種類は豊富にありますが、各社によってさまざまなメリットがあります。
更に経産省も、ボトルネックである中小企業を対象にキャッシュレス導入のための補助金政策を打ち出しています。
韓国でキャッシュレスが急速に広がった理由
少し話を変えて、キャッシュレス率が90%を誇る韓国の背景について、説明しましょう。
韓国では、1997年の東南アジア通貨危機をきっかけに、消費活性化と脱税を目的に、キャッシュレス化を国策としました。具体的に、クレジットカード利用額の一部所得控除や宝くじ権利の付与、店舗でのクレカ取り扱いを義務化し、急速に国内で広がりを見せました。
日本でも同じことをすれば普及すると思いますが、日本政府はそれを良しとしないでしょう。日本は強硬政策を嫌う傾向にあります。政策を強行し、店舗を廃業に追い込んだり、関係協会の反発を買えば、野党の攻撃材料となり与党の立場が危うくなります。以前も記事にしましたが、UberCarなど白タクを解禁しないのもそのためです。
今後のキャッシュレスの行く末
今後日本はキャッシュレス率を40%まで引き上げることはできるでのしょうか。
結論をいうと、目標である2025年までに達成できるかは不明ですが、いつかは達成できるでしょう。しかし先にあげた政府の狙いは中々思い通りにいきません。
確かに若年層にはキャッシュレスが広まり、徐々に利用率は向上していくでしょう。しかし政府の掲げる狙いの中で、特に重要なポイントは財源の確保です。すなわち、企業や個人のキャッシュフローの透明化を図り、脱税を防止し、税収をアップすることです。そのための重要課題は、割合の大きい中小企業と高齢者世帯にキャッシュレスを普及させることですが、それがうまくいきません。なぜでしょうか。
企業にとって、キャッシュレスは負担以外の何物でもありません。新たなキャッシュレスサービスを導入しても現金取引がなくなるわけではありません。ただ負担が増えるだけです。それはドン・キホーテの例をみても分かります。
また、中小企業にとって、キャッシュレスにすることは不利に働くことが多いでしょう。資本が少ない企業にとって、手元にキャッシュがないことは死活問題だからです。いざというときに、運転資金が途絶えると倒産の憂き目にあいます。
次に、資産を多く持つ高齢者はなぜキャッシュレスに消極的なのでしょうか。一番の理由はよく分からないからです。しかも日本ではキャッシュレスの種類が多すぎて、更によく分からなくなっています。ジャムの法則というものがありますが、、種類が多すぎると、逆に選択する意欲を失ってしまうのです。
また、高齢者はなぜタンス預金を好むのでしょうか。その答えは、高齢者が心配していることを想像するとよく分かります。一番の理由は健康です。高齢者はいつ健康を損なうか分かりません。認知症や痴呆などの診断が下りた場合、その銀行口座は凍結され引き出すことができなくなります。債務整理、相続、不正利用が凍結の主たる目的ですが、解除するには弁護士に依頼するなど煩雑な手続きが必要です。こういった事態に備え、タンス預金者は今も増えています。その結果、オレオレ詐欺にだまし取られる危険性が高くなり、政府の狙いの一つである、安全性の確保も難しくなります。
出典:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39300560S8A221C1CC0000/
こういった事情により、キャッシュレスは、全体の核となる中小企業や高齢者に遅々として普及が進まず、政府の目論見は中々思い通りにはいかないと考えます。
まとめ
政府にとって、キャッシュレスを最も普及させたい中小企業や高齢者は、根強い銀行不信や将来の不安のため、今後も手元から現金を離すことはないでしょう。そう考えると、政府の掲げる利用率40%の達成はまだまだ先になるのかもしれません。