クラウド化が拡大する背景と今後のシナリオ

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こんにちは、Taikiです。

今回はクラウドについて、お話しします。IDCの調査をみても分かるように、今後クラウドサービスの売上は増加することが予想されます。

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出典:https://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20181001Apr.html

今さらですが、なぜクラウドの売上は成長を続けるのでしょうか。また、ビジネスの視点でみたときに、クラウドはどんなことを実現してくれるのでしょうか。そして、今後はどういう展開になるのでしょうか。今回はその変化に迫ります。

目次はこちらになります。

クラウドサービス拡大の背景

クラウドサービスには、プライベートとパブリックの2種類があり、現在は特にパブリッククラウドが主流となっています。この背景には、自前でクラウド基盤を持つより、クラウドベンダーが提供するサービスを利用して、事業に集中したいという思惑があります。

では、なぜクラウドサービスは拡大しているのでしょうか。

端的に言うと、情報を広く集めて分析し、逸早く商品やサービスを提供できるからです。具体的にいうと、この3点にまとめることができます。

ビジネスの多角化と多様化

1つ目の理由ですが、ビジネスの多角化と多様化が求められる時代になりました。現在、市場にはモノやサービスがあふれていますが、その殆どは直ぐにコンシューマ化され、類似商品がリリースされ、売上競争が激化しています。

企業は常に新しい製品やサービスを提供することが求められ、ビジネスのスピードは加速しています。それと連動して、商品開発のサイクルも短くなります。

アプリケーション開発の話ですが、アプリのリリースサイクルを短くするためには、その開発手法にも変化が求められます。ウォーターフォールと呼ばれる従来の手法から脱却し、アジャイル開発といった変化に強い手法が使われるようになりましたが、これがクラウドと非常に相性が合いました。

クラウドは基本的に初期投資が不要で従量制のため、スモールスタートで軌道に乗ればスケールアウトし、低迷すればスケールインすることが可能です。小規模で開発し、状況に合わせて方針や規模を変えるアジャイル開発は、元来クラウドと非常に馬が合うのです。その結果、特にWeb系のサービスでは、クラウドの需要が増加しています。

ユーザービリティの追及

2つ目の理由ですが、クラウドはプラットフォームを提供するベンダーがユーザービリティを追及した結果だといえます。

メインフレームの時代は、クライアントの機能が制限され、サーバに殆どの処理をもたせていました。次にクライアントサーバ(クラサバ)の時代に移りますが、サーバとクライアントとで処理を分担するようになりました。そして、クラウドの時代に進み、デバイスやロケーションに依存せず、クラウドからサービスとして機能を受け取ることができるようになりました。

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https://www.slideshare.net/after311/it-92461381

このプラットフォームの変化なぜ起きたのでしょうか。ベンダーが性能と同時にユーザービリティを追及してきたからです。

メインフレームでは、サーバ依存でクライアントの性能が不十分でした。クラサバではモノやロケーションに依存してクライアントの自由度が制限されました。それらの課題を解消するため、クラウドというプラットフォームが登場し、機能性と柔軟性を実現しました。

テクノロジーの発達

3つ目の理由は、デジタルフォーメーション(DX)の存在です。IoTやAI、RPAがその代表といえます。現在は、家電や車、時計などIoT化が進み、幅広く情報を取れる時代になりました。企業は、その情報を解析することで、次の売れ線を見つけ、マーケットニーズに合った商品を世に送ります。情報収集や情報分析、マーケットや販売戦略、商品開発など一連の企業活動を、クラウドによってワンストップで実現することができます。

クラウドをどう活用するか

ビジネス成功のために、クラウドをどう活用すべきでしょうか。クラウドは対象となるレイヤーに応じて、サービスの種類が異なります。

  • IaaS: Infrastructure as a Service
  • PaaS: Platform as a Service
  • SaaS: Software as a Service

IaaS(イアース)がもたらす効果

IaaSとは、サーバやネットワークなどインフラを提供するクラウドサービスになります。

このサービスの上に、社内向けだと、例えば情報系や基幹系のサーバを置きます。社外向けだとオフィシャルサイトやECサイトなどを置きます。特にECサイトのような会員機能をもつサーバは、アクセス増減の幅が大きく、負荷の変動が激しいため、クラウドのようなスケーラブルな環境は重宝されます。そういった柔軟性に加え、IaaSはサービスの可用性を確保してくれます。例えば、AWSSLAを99%以上保証し、サービスが停止したときには停止時間に応じて返金してくれるシステムになっています。

 PaaS(パース)がもたらす効果

PaaSとは、開発環境を提供するクラウドサービスになります。

PasSがもたらす効果は、ビジネスサイクルの速さです。有名なPaaSであるHerokuを例に説明します。

自由度の高さ

HerokuはWebアプリでよく使用される、Node.jsやPHPJavaRubyなど多数の言語をサポートしています。また他社のクラウドサービスとの連携も可能です。

例えば、ある企業がM&Aして事業の統廃合が起こったとします。買収先のシステムを統合するために、他社が扱うアプリやOSなど異種連携が必要なときにHerokuはその力を発揮します。Heroku Connectで他社と自社のシステムを連携することで、他社アプリをHerokuで引き続きコーディングできたり、他社データを自社のDBに投げて情報を一元化し、システムの統合をスムーズに進めてくれます。

開発と運用効率の向上

HerokuはGitHubを使用します。GitHubクラウド上で開発したりソースを共有できる上、バージョン管理も自動化されます。そのままGitからDeployすることも可能です。共同開発できる上、プロジェクトやタスクも管理できるので、複数のツールでできることが、Git Hub1つで可能になります。これがHerokuが選ばれる理由の一つです。

更にHerokuには膨大なアドオンが用意され、システム管理を省人化してくれます。開発規模が大きくなればその効果は益々大きくなるでしょう。

情報の網羅性

Herokuはさまざまなクラウドフレームワーク、データベースと連携し、複数のWebアプリやデータストアから、事業戦略に必要なデータを集めます。そのデータは、BIツールでより洗練された情報となり、マーケティングや商品開発を考える材料になります。そうして出てきた事業戦略が、Herokuを通じて再度アプリに組み込まれ、ビジネスサイクルを早めてくれます。

SaaS(サース)がもたらす効果

SaaSとは、ソフトウェアのクラウドサービスです。

SaaSがもたらす効果とは、ユーザーがより自社のビジネスに集中できる環境を整えることです。具体的には、サーバやミドルウェアなど下位レイヤーの構築が不要ということ、業務直結のサービスを受けることができること、また働き方改革に沿った柔軟な働き方を支援してくれるところにあります。

業務直結のサービス

業務に直結したサービスについてですが、どんなSaaSがあるのか、売上順に見ていきましょう。

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 出典:https://www.channelpartnersonline.com/2019/02/07/azure-still-king-in-public-cloud-while-azure-grows-fastest-ibm-falls/

 順にみていくと、Microsoftは、Officeをクラウド化してOffice365を提供しています。

Salesforceは、CRMクラウド化し顧客データ管理を一元化しています。

Adobeは、クラウドサービスとして、Adobe Creative Cloudを提供し動画や画像のクラウド管理や同時編集の機能があります。

Oracleは、オンプレとクラウド間のデータベース移行における、機能やパフォーマンスの再現性の高さとSoEを意識したアプリケーションを提供しています。例えば、Dockerを使ったアプリケーション開発環境、NoCodeのWebサイトアプリケーション作成ツール、センサーからのデータ収集やデバイス管理機能を載せたIoTの機能セットです。

SAPはERP大手であり、化学や医薬品、総合商社などで良く使われています。EAPは生産や販売、会計や人事など各システムのサイロ化を抑止し、部署間の連携を密にできるよう、異なる業務を統合管理し全体最適をはかるものです。その結果、アジリティやコスト効率を生み出します。

働き方改革

次に、柔軟な働き方の支援ですが、近年ロケーションやデバイスを選ばずに、自由な形態で働くことが許容されています。例えば、フリーアドレスやテレワーク、もっと言えば海外ノマドなど、自宅や外出先、また旅行しながらでも仕事ができるようになってきました。またBYODで見られるように、MDMやセキュリティソフトを追加さえすれば、自分のPCでも仕事ができるようになりました。こういった働き方の柔軟さもクラウドがもたらす恩恵です。 こういったインフラ構築不要だったり、業務直結のサービスを受けたり、柔軟な働き方を実現することによって、ユーザーはよりビジネスに専念することができます。

今後のシナリオ

では今後クラウドサービスはどう変化していくのでしょうか。

クラウドサービス間の乗り換え

クラウドは移行がしやすい分、乗り換えも簡単です。あるデータベース移行で、クラウドに乗り換えるもデータベースが巨大すぎて複数に分割した結果、保守やメンテの時間が倍取られ、負担が増えたという話もあります。コスパが悪ければ乗り換えの検討が入ります。

SAPも乗り換えの危機に直面しています。既存のERPであるSAP R/3が保守切れになり、ユーザーはSAP S/4 HANAへの移行を求められます。しかし、新しいERPには沢山の課題があります。例えば機能の変更やデータベースに制限がかかるため、移行には、ハードウェアの新規購入やOSやデータベースの入替が発生します。修正が必要な機能要件や互換性の確認もあるため、おそらくはコンサルタントを入れての設計となり、その費用は膨大になるでしょう。このSAPのERP転換期に乗じ、MicrosoftOracleはそのシェアを奪おうとしています。

なぜSAPは大改修を余儀なくされたのでしょうか。SAP R/3が1992年にリリースされてから、以降25年以上にわたってバージョンアップを重ねた結果、SAP ERPソリューションは利用するほどシステムとデータが肥大化していき、リアルタイム性が欠如していくようになりました。今回のリニューアルは、肥大化したシステムやテーブルを修正し、システムの最適化を図るためのものです。長期的視野に立った時、同社は多少の犠牲を覚悟してでも、破壊的創造をせざるを得なかったのです。

AWSの話になりますが、AWSのパートナー会社は、ユーザーにクラウドサービスを提供するときに、そのアカウントを自社から発行します。なぜでしょうか。確かに、Amazonへの支払いがドル建てのため、代行決済という一面もありますが、本当の狙いは、他社乗り換えへの障壁を高くするためです。アカウントを握っていれば、アカウント間では既存のインスタンスを移行することができません。これがAWSパートナー会社が提供するリセールサービスの狙いです。

クラウドインテグ業務の内製化

クラウドの難点はノウハウ習得の難しさにあります。多数のオプションがあり、料金体制も複雑で、情報も少ないです。事業会社は最適な導入や運用方法が分からず、サービス会社に任せた結果、費用は更に高くなることもあります。

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従って、今後、クラウドが浸透すると、コスト削減を目的として、自社でノウハウを習得したり、外部からクラウドに強い人材を入れるなどして、クラウドの構築や運用を内製化する動きがでてきます。従って、今後サービス提供者は、IaaS一辺倒ではなく、PaaSなども組み合わせて、独自の付加価値を提供せざるを得ません。前述したアカウント縛りのリセールサービスだけでは生き残ることはできません。

オンプレへの逆流とハイブリッド化の流れ

今後の流れを列挙してみましたので、これに至るプロセスを仮説してみます。

  • オンプレに戻す
  • 別のクラウドサービスに移行する
  • オンプレとクラウドのハイブリッド構成にする

まずはユーザーがオンプレに戻す理由は何でしょうか。オンプレに移行して、思ったほどの費用対効果を得ることができなかったからです。そして、利用年数やスケールを考えて、コストメリットがあれば、実績のあるオンプレに戻すことを選びます。

別のクラウドサービスに移行する理由は何でしょうか。現状のクラウドサービスに満足できないからです。例えば、先述したSAPの新しいERPに移行すると、Oracleのデータベースが使えなくなります。データベースの鞍替えは特に大変なため、Oracle Cloudの選択肢が出てきて、条件が合えば移行する運びになります。

オンプレとクラウドのハイブリッド構成にしたい理由はシンプルです。自社にとって、メリットがあるものはクラウド、なければオンプレを維持するだけです。移行の定型パターンですが、まずはインパクトの少ない情報系のサーバを移行し、メリットがあれば他のサーバも移行します。結局、今後は、「良いとこ取り」のハイブリッド構成が主流になってくるのではないでしょうか。

まとめ

来年にはWindows Server 2008のサポートも切れるため、それを機にクラウド移行という企業も多いのではないでしょうか。結論やってみないと分からないため、早めに比較検討することをおすすめします。