4Gが健在な今、政府や企業が5G推進を急ぐ理由

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引用:https://www.ilounge.com/news/apple-might-not-release-5g-iphones-until-2020

こんにちは、Taikiです。

世界中の企業が5G事業への参入に躍起になっています。

第5世代通信規格(以下5G)とは、ほとんど活用されていない高周波数帯を使い、超高速通信を実現します。現在の携帯通信と比べると、最高伝送速度は100倍の毎秒10ギガビットになると言われています。分かりやすくいうと、2時間の動画を3秒でダウンロード可能になります。

しかし、なぜ5Gがこうも騒がれるか、不思議に思いませんか。

4Gでもストレスなく動画を視聴することができます。そして、4Gの人口カバー率は99%を超え、当初あった「つながりにくさ」もかなり解消されています。

4Gが健在な今、企業が5G推進を急ぐ理由は何でしょうか。そして、5Gでしかできないことは何でしょうか。

今回は、企業が5G推進を急ぐ理由と政府や企業は5Gで何をしたいか、その意図に迫りります。5Gに少しでも興味がある方は見て損はないと思います。

あくまで個人の見解ですので、ご承知おきください。

企業が5Gを急ぐ理由

なぜ通信各社は5G事業を急ぐのでしょうか。

利益を取りたいからでしょうか。ユーザーを囲い込みたいからでしょうか。もう少し掘り下げて考えみましょう。

過去の歴史をみると、4Gの登場はユーザーが渇望していました。当時は、音楽や動画など4G向けのキラーコンテンツが数多く存在していたからです。

しかし、今現在5Gでないといけないコンテンツはどれだけあるでしょうか。日常に落とし込んでみるとすぐには思いつきません。なぜなら4Gで殆ど要件を満たしているからです。

現段階で、5Gが必要な理由はまだまだ薄いですが、5Gの技術によって、日常生活や経済活動は劇的に変化することは間違いありません。詳細は後述しますが、今後5Gの技術は不可欠になります。

「周波数」の争奪戦

そう考えると、企業は最初にどんなアクションを起こすでしょうか。

最初は経営資源の確保です。経営資源とは、資金や労働力、設備等のことですが、5Gサービス展開のために、必要な経営資源の確保を急ぐ必要があります。

では、5G導入に必要な資源は何でしょうか。1つ目は、「周波数」です。

総務省は4月10日、5Gの周波数について、NTTドコモKDDIソフトバンク楽天4社に割り当てました。

合計10枠の周波数のうち、スマートフォンに使いやすい6枠は、ドコモ、KDDIに各2枠に割り当てられました。ソフトバンク楽天には各1枠しか割り当てられませんでした。なぜソフトバンク楽天だけ少なく割り当てられたのでしょうか。

各社は投資金額などの計画を事前に総務省へ申請していますが、上位3社と比べると、ソフトバンク楽天の予算が低かったためです。すでに5G資源の争奪戦は始まっています。

「スモールセル」の争奪戦

次に予想される5Gに必要な資源は何でしょうか。

それは「スモールセル」という小型基地局です。5Gでは、既存の「マクロセル」という基地局だけでは、カバーエリアが狭くなってしまいます。5Gのような高周波数帯は距離に制限があります。

そのため、「スモールセル」と呼ばれる基地局を細かく敷き詰めて、対応エリアをカバーする必要があります。目視で確認できるかはわかりませんが、そのうち電信柱に無数の「スモールセル」が設置されるでしょう。通信各社は、その「スモールセル」の機器や設置場所の確保を急がないといけません。

このように、5G時代到来に備え、通信各社は、経営資源の取り合いに血眼になっています。資源が不足しユーザーに十分なサービスを提供できない企業は、5G市場から撤退することになるでしょう。

 5Gでしか実現できないサービス

では5Gでどんなサービスを提供できるでしょうか。

これを考察するためには、5Gの特徴を掴む必要があります。

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引用:https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1903/26/news014.html

5Gの特徴は、 「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」の3要素です。この3要素を活用して、高品質のサービスが生み出します。

どんなサービスが生まれるか、具体的に想像できますか。

おそらく容易に想像できないはずです。それが5Gを身近に感じられない理由です。誰でもそうですが、身近にある、顕在的な商品やサービスを連想することは簡単ですが、潜在的な新しいサービスを想像することは困難です。総務書が5Gの活用方法を公募していることが何よりの証拠です。

私が考えるに、5Gでしか実現できないであろうサービスのポイントは3つあります。遠隔化、自動化、安定化です。1つずつ見ていきましょう。

遠隔化サービス

5G「超高速」「超低遅延」を活用すると、遠隔化サービスを飛躍的に拡充することができます。パソコンを遠隔で操作するようなレベルでありません。

例えば、難病の患者がいて移動が困難です。5Gであれば遠隔で手術ができます。「超高速」のネットワークを使い、8Kの高精細な映像で患部を見ながら手術が行えます。メスなどを扱う際には、「超低遅延」の通信により、遠隔操作の反応が遅れることなく、実際に手術をしているのと同じ感覚で操作できます。遠方にいる医者が遠隔で診察や手術をできれば最短で患者の命を助けることができます。つまり、遠隔化の狙いは、空間を越えて「コト」サービスを提供することになります。

自動化サービス

次に自動化です。KDDI日本航空JALでは、5G通信の特長を生かした「タッチレスゲート」を開発しています。5Gで利用される28ギガヘルツ帯という周波数帯は、「電波が限られた場所にしか飛ばない」という特長があります。その特長を活用して、空港の搭乗ゲートの上から電波を飛ばすことで「5Gスマホにチケット情報を持っている人だけゲートを開ける」ということが可能になります。つまり自動化の狙いは、今後労働人口が少なくなることに備え、省人化や自動化を進めることにあります。

安定化サービス

最後は安定化です。安定化は、「多数同時接続」を活用し、有事の際にも大量アクセスに耐え得ることが狙いです。東日本大震災の時に、アクセスが集中し被災者は十分な情報を収集できませんでした。5Gであれば、アクセスが集中する環境下でも、安定的に通信を確立してくれます。

こちらの記事では、5G技術で端末2万台の「多数同時接続」に成功しています。

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そして、IoTの普及にも「多数同時接続」は一役買います。現状、3G/4Gで接続できる台数はおよそ150億台と試算されている。しかし、もうすでに携帯電話は世界で約90億台あります。またIoTデバイスがそれ以上になると、今のインフラでは対応できません。そこで必要になるのが5Gということになります。

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引用:https://wirelesswire.jp/2018/04/64676/

5G関連の注目企業

ちょっと寄り道をして、5G関連で注目を集めるであろう企業を2つピックアップしました。村田製作所アンリツという企業です。

村田製作所は、セラミックコンデンサを得意とする製造会社です。セラミックコンデンサは電気を蓄えたり、放出したりする電子部品でほとんどの電子機器に使われる電子部品ですが、スマートフォン1台に数百個も使われます。

その中のリーダー的存在である村田製作所は、卓越した技術力、自前の生産技術、すり合わせによる設計品質の高さ、高い品質管理能力といった伝統的な日本のものづくり企業の強みを持っています。世界シェアは30%を超えて世界一です。更に高パフォーマンスが要求される5Gスマホでは、4Gスマホ以上にセラミックコンデンサー数が搭載されるはずです。

次にアンリツという企業ですが、こちらは通信回線の計測器を得意とする企業です。今後5Gの回線が普及するにあたり、電波状況の計測は不可欠になるため、これも普及するでしょう。

私がこの2社に注目する理由は、こちらの3点です。

  • 他社が真似しにくい技術優位性がある
  • 海外の売上規模が大半を占める
  • 財務基盤が安定している

いずれも上場企業ですので、今後の業績を追ってみると面白いかもしれません。

まとめ

企業が5G推進を急ぐ理由は、5Gが必要不可欠な時代に備え、経営資源の争奪戦に勝利したいからです。そして、今後は資源の争奪戦から、サービスやアイデアの争奪戦にシフトしていきます。

そして、政府が5G推進を急ぐ理由は、今後予想される労働人口減や景気後退の波に備え、自動化や省人化のインフラを拡充し、産業発展の原動力にしたいからでしょう。

5Gをはじめとする「第4次産業革命の経済効果は132兆円と言われていますが、今後はビジネスやシステムに大きな変革が求められます。