顧客の成果にコミットしないと生き残れない理由

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こんにちは、Taikiです。

昨今、国内市場は習熟化し競争は激化する一方です。この時代、顧客に選ばれるために何を考えどう行動すれば良いでしょうか。今回はこの点に迫ります。

目次はこちらです。

カスタマーサクセスとは何か

カスタマーサクセスという言葉をご存知でしょうか。

Salseforceも早くに着手したこの理論は、端的に言うと、「顧客の成功=自社の成功」というごく当たり前の考え方です。なぜごく当たり前のこの理論が今注目されうようになってきているのでしょうか。

カスタマーサクセスの目的は、LTV(顧客生涯価値)の最大化です。LTVの考え方はこちらを参考にしてください。

LTV=購買単価×購買頻度×契約継続期間

購買単価を上げるか、購買頻度を高めるか、契約期間を長期化することでLTVは向上します。顧客に価値を感じ続けてもらうことが出来れば、おのずと契約期間も長くなるでしょう。また、より単価の高いアップグレード商品・サービスを推奨する「アップセル」や、別の商品・サービスを合わせて購入してもらう「クロスセル」などの手段を活用して、購買単価や購買頻度の向上を図ります。

出典:http://bridge-g.com/column/life-time-value/

では、どうすれば顧客はその商品やサービスに価値を感じるのでしょうか。単に顧客が欲しいものを提供すれば良いのでしょうか。

顧客のリクエストは単なる的外れな思い付きの要求かもしれません。ハーバード・ビジネススクールのクリステンセン教授は、「片づけられない用事」という表現を使い、顧客は自己解決できない問題を常に抱えていると言います。何かをしたい、何かが欲しいという要求の裏には本当の問題が潜んでいる可能性があります。その問題の本質を捉え、価値提案することがカスタマーサクセスの狙いです。

カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違いを考えると更に理解が進みます。略称はどちらもCSなのでよく混同されますが、二項対立で考えるとその違いは明らかです。カスタマーサポートは受動的・リアクティブな支援を行うのに対し、カスタマーサクセスは能動的・プロアクティブな支援を行います。言い換えると、カスタマーサクセスは上流にある消費者の意識や価値観の形成を支援し、カスタマーサポートは下流に位置する消費や購買行動を支援をします。

なぜカスタマーサクセスが必要なのか

なぜ今カスタマーサクセスが求められているのか、ビジネスの現状を考えるとその理由が見えてきます。

  • マーケットの習熟化
  • 商品のコンシューマー化
  • サプライヤーの乱立
  • 品質やコストでは差別化しにくい
  • 「所有」よりも「利用」

市場が習熟化してサプライヤーが乱立すると、モノやサービスはすぐに代替可能となります。モノがあふれると執着心が薄れ、所有よりも利用という考えが生まれます。その結果、サブスクリプションやシェアリングエコノミーのトレンドが強まり、どんどん乗り換えやすい時代へと移行します。そうなると、購入してもらだけを想定すれば良かったサプライヤーは、利用してからの顧客体験も重視するようになります。価格や品質だけでなく、使っててからの心地良さや快適さがますます求められるようになったからです。こういった経緯があって、顧客の成功に向かって伴走する、カスタマーサクセスの考え方が注目されるようになりました。

あるべき姿を考える

先ほど要求の裏に「片づけられない用事」があることをお伝えしました。何かを要求されたり相談されるときに、表面的な事象にとらわれてはいけません。プロジェクトが何度も失敗する様を見てきましたが、表面的な事象を真の問題と捉え次々と解決しようとする姿は、延々と続くモグラ叩きに似ています。予算や人員等の資源ばかりが奪われ根本的な解決には至りません。

片づけられない用事を片づけるためには、現状ではなく、あるべき姿という高い位置から俯瞰する事が重要です。そして、あるべき姿と現状のギャップこそが真の解決すべき問題となります。

顧客のリクエストは、こうしたい、何が欲しいという特定の手段や商品を指すことが多いでしょう。しかし、カスタマーサクセスとは、特定の手段や商品に囚われず、あるべき姿から逆算して戦略や方向性を決めていきます。

例えば、RPA(作業自動化ツール)を使って業務改善したいと相談があったとしましょう。あるべき姿とは、RPAを使う事ではく業務負担を減らす事です。もし業務簡素化のアドバイスをして業務負担が減り、RPAを買う理由がなくなくなったとしましょう。RPAを買うのと買わずに解決する事、どちらが喜ばれるかは明白です。

RPAを提案した方が良い場合もあります。些細なシステムの改修で入札条件を決め相見積を取り要件を決めて等とやっていると時間がとてもかかります。コストとリスク、準備期間と効果継続性で評価するとRPAのメリットが大きいというケースも多々あります。

問題の本質を掴み、最小限のステップで解決に導く、その問題解決能力こそが、カスタマーサクセスの必要条件です。そのために、問題の全体像を明らかにする、MECEの発想が不可欠となります。

カスタマーサクセスの代表例

カスタマーサクセスの代表例は何でしょうか。分かりやすい例がライザップの広告戦略です。弛んだ体と引き締まった体、そのビフォーアフターを見れば、現状とあるべき姿が分かります。そのギャップこそが問題だと提起し、それを解決できるのはライザップだと主張しています。全額返金制度や「結果にコミットする」といった言い回し、数々のタレントの成功例もその主張の論拠となっています。

次にお馴染みのスタバです。スタバは単なるカフェではなく、多忙な学生や会社員のサードプレイスとなっています。同社の元会長兼社長兼CEO、ハワード・シュルツ氏はこう話します。

ある統計によれば、私たちの年代は、両親の世代より年間100時間以上多く働いているといいます。加えて、携帯電話やメール、ファックスなど、プレッシャーを生み出すものがたくさんある。スターバックスは、そういうものから逃れて休息する場所、オアシス。私たちは店を「サードプレイス」といって、自宅と職場の間というポジションだと考えています。そして、そこで生み出されるのは「コミュニティー」というフィーリング。店を訪れた人同士がつながる、スターバックスはそういう場を提供しているのです。

スタバは、カフェのあるべき姿やお客の求める空間を設定し、オシャレなインテリア、間接照明、くつろげる音楽、フレンドリーなスタッフなどにこだわりました。その結果、皆に快適さを与える顧客体験を創造し、コーヒーの味や値段以上の価値を生み出しています。

ジャパネットたかたはどうでしょうか。同社の高田元社長は、単なる実演販売だけでなく、ユニークな商品の使い方を提案します。

たとえば、会議やインタビューで使うボイスレコーダーを「おじいさんやお母さんこそ使ってほしい」と勧めることだ。物忘れが多くなる年代はメモ代わりに使ってはどうでしょうか、私も使っています。あるいは働くお母さんが子どもにおかえりのメッセージを残しておいたら、子どもは安心しますよ。こういった生活シーンに根差した「使う側も知らない使い方」を提案するのが高田氏のこだわりだ。

出典:https://globis.jp/article/6243

こういったラテラルな提案が、製品のあり方や顧客の意識を変え、販路拡大さえも可能にするのではないでしょうか。

一蘭というラーメン屋をご存知でしょうか。他店と違いパーティション分けされ半個室の席が用意されています。その席に座ったお客は、素材や麺の拘りが書かれたメモを読み、その情報とラーメンを食します。行動心理学者のダン・アリエリー博士によると、私たちの脳は「これはいい」と思ったものをより美味しく感じる習性を持っています。この半個室の席はラーメンを食べるべき姿から逆算した、一蘭の戦略とも言えるでしょう。

まとめ

顧客の成果にコミットする、その意味は、顧客自身でさえも分からない潜在的な問題を、あるべき姿から明確にし、それを解決するための顧客体験を提供することにあります。もしそれがハマれば、他社ではなかなか真似のできない競争優位性を獲得することができるでしょう。そして、それこそがこの時代に生き残るための戦略思考だと思います。