PCベンダーがBTOを、アパレルがSPAを採用する理由

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こんにちは、Taikiです。

業界毎に主流のビジネスモデルがありますが、AppleDellなどのPCベンダーがBTOを、ユニクロなどのアパレル(ファストファッション)がSPAを採用する理由は、ある共通した目的があるからです。今回はこの点に迫ります。

サクッと書いたのでサクッと読めるかと思います。

ビジネスモデルの違いと共通した狙い

両業界で利益を圧迫する最も大きい要因は何でしょうか。

それは過剰な在庫を抱える事です。

この過剰在庫を発生させないために、PCベンダーがBTOを、アパレル(ファストファッション)がSPAを採用してます。

PCベンダーのビジネスモデル

PCベンダーのビジネスモデルはBTOです。AppleDellもこの方式を採用し、業界のデファクトスタンダードとなっています。

BTO(build to order)/ 受注加工組立

組立製造業において、顧客の注文を受けてから最終製品の生産を行う生産方式のこと。狭義には、部品や中間製品を見込みで在庫しておき、注文確定後に最終加工・最終組立を行う受注加工組立をいい、広義にはそれを含む受注生産一般をいう。

出典:ITmedia エンタープライズ

BTOの特徴は、注文を受けてから部品を組み立てて出荷することです。その部品は外部の部品メーカーに生産委託しています。在庫を発生させないために、なぜこの方式を採用するのか。

それはカスタム生産の対応が柔軟な事と部品の流動性が高いためです。

PCは同一モデルでもスペックの違いで、選択肢は多岐に渡ります。使い道も多様化しているため、スペック縛りのPCでは売れ残り在庫となります。

そこで、受注から組み立てる方式を採用し、カスタマイズ注文に対して、柔軟に対応しています。在庫として保有するのは、流動性の高い部品のみです。ちなみに、別会社にパーツを生産委託している理由は何か。

それは費用対効果の問題です。

PCの各パーツ、例えば、CPUやメモリ、SSDやHDDなどを高性能・低単価で、全てを一社で大量生産しようとすると、初期投資や研究開発費がバカになりません。しかも各部品の性能は日々進歩しているため、そこは専業メーカーに任せて分業した方が得なのです。

アパレルのビジネスモデル

ではアパレルのSPAを見ていきましょう。これはGAPやユニクロなどファストファッションで定番のモデルです。

SPAとはpecialty store retailer of private label apparelの略で製造小売ともいう。企画から製造、小売までを一貫して行うアパレルのビジネスモデルを指す。消費者の嗜好の移り変わりを迅速に製品に反映させ在庫のコントロールが行いやすいなどのメリットがある。

出典:コトバンク

 SPAでは、材料調達⇒生産⇒物流⇒販売までの一連のサプライチェーンを自社で完結させる方式です。では在庫を発生させないために、なぜこのモデルを採用するのか。

それが工場、倉庫、店舗間のリアルタイム連携において最も優れているからです。

もし工場、倉庫、店舗がバラバラの会社で運営されていたら、システムの違い、意思決定の違い、勤務体系の違いなど様々な弊害が発生し、連携が遅れてしまいます。

ちなみにファーストリテイリングでは、中国や東南アジアでの生産を背景に、グローバルなリアルタイム連携を実現するため、AWSに物流管理システムを移行しました。更に需要予測のためSAPを採用しつつあります。

事業拡大やグローバル化に合わせてIT関連のリソースを柔軟に拡張しやすい点などを評価して、AWSなどのクラウド活用を進めてきた。クラウドへの移行が順調に進んでいることから、ビッグデータ分析による需要予測やEC(電子商取引)といったデジタル戦略を一段と強化する目的で、SAP製品の採用を決めたもよう。

出典:日経コンピュータ

両者のビジネスモデルが違う理由

両者のビジネスモデルが違う理由は、一言でいうと期間です。つまりリードタイム(発注から納品までの期間)と販売できる期間に大きな縛りがあるかどうかです。

まだカスタムPCの納期が遅いのは許せるかもしれません。しかし、季節物の服が欠品している、または納品に時間がかかる、というのはいかがですか。

ファストファッションコアコンピタンスは、欠品がない事です。

欠品が続けば、直ぐに他店に乗り換えられます。欠品をなくしつつ、在庫を減らす事がファストファッションの至上命題です。そのためにファストファッション系のアパレルは、SPAを採用しているのです。

まとめ

なぜ在庫を減らすことが重要なのか。会計上では、在庫は資産となるため、急いで処分しなくても、という錯覚に陥ります。

しかし、在庫とは投入したお金が形を変えたものです。

そこには原材料費ではなく社員の給料などの労務費も注ぎ込まれています。在庫を廃棄するとは、お金をどぶに捨てる事に等しい行為です。アパレルではシーズンや流行が終わればもう売れません。だから一円でも多く換金するためにセールによる在庫処分があるのです。ドライな言い方がですが、換金性のないモノに価値はありません。

そう考えると、特に食品ロスは環境にとっても経済にとっても由々しき問題だと感じています。お読みいただきありがとうございました。