AWSパフォーマンス効率化のために何を減らし増やすか
AWSのパフォーマンス効率化のために何を減らし何を増やせば良いでしょうか。
結論から申し上げますと、ある4つを減らすために、ある4つのプロセスに沿って、ある4つの実行回数を適度に増やすことです。
目次はこちらになります。
効率化とは費用対効果の追求です。つまり、最小限の労力と費用で、最大限にシステムへの負荷や障害を軽減させる継続的な取り組みになります。
先に挙げた「ある4つを減らす」とは、具体的に下記を指しますが、これを仮に「負の4大要素」と呼びます。
-
負荷を減らす
- 障害を減らす
- 負担を減らす
- 費用を減らす
次に、先に挙げた「ある4つのプロセス」とは、ITILのベストプラクティスでも紹介されている「PDCA」を指します。
- Plan
- Do
- Check
- Action
また、「ある4つの対策」とは、AWSが提唱するベストプラクティスのことですが、これを仮に、「効率の4本柱」と呼びます。別の呼び名で「パフォーマンス効率4つの柱」というのもあるそうです。
- トレードオフ
- モニタリング
- レビュー
- 選択
先の「負の4大要素」を減らすために「PDCA」のサイクルに沿って「効率の4本柱」を実行する回数を適度に増やせば、AWSのパフォーマンス効率化を実現してくれます。
効率化は費用対効果の追求であるため、「負の4大要素」を減らす事が、そのまま効率化を意味します。つまり、目的は「負の4大要素」を減らす事、「PDCA」のサイクルに沿って「効率の4本柱」を実行する事が手段です。
なぜ、このサイクルに沿って実行すると「負の4大要素」を減らすことができるのか。
ビジネスと密接に関わる、自社特有の負荷特性を把握できる上、AWSの強みを最大限に活かすことができるからです。ここでいう、AWSの強みとは、同社が提供する、最新のテクノロジーとアプローチを指しています。
例えば、今後の商品・サービスの拡販を狙う企業が、以下の要件を持っているとします。
▼ビジネス要件
- ある商品・サービスのプロモーションを行う
- 初期投資はなるべく抑えたい
▼システム要件
- サービスの遅延や停止をなくしたい
- 柔軟なインフラ設計にしたい
この要件を満たすために、どう「PDCA」のサイクルに沿って「効率の4本柱」を実行し「負の4大要素」を減らすか。まずは、下記の、「PDCA」と「効率の4本柱」の関係をご覧ください。
実は、PDCAの各 プロセス(Plan / Do / Check / Action)を効率の4本柱に当て込んだだけです。。では、順に説明します。
トレードオフ(=Plan)
トレードオフとは、何かを選び何かを捨てる相容れない関係のことです。可用性か、性能か、または料金か、何を重視するか優先順位を定め、要件を満たすための具体的な目標を立てます。
「戦略の立案」では、ビジネス要件やシステム要件に基づき、あるべき姿を設定します。ここでのあるべき姿を、「プロモーションで増加するサイトへのアクセス数を、低レイテンシで捌ける性能と高可用性を持つシステム」と定義します。
具体的には、CSF(成功要因)とKPI(測定基準)を設定し、優先順位を決めます。
このCSFとKPIは、先の要件を満たすための「目標」です。
例えば、CSFは「性能の強化」「可用性の確保」、KPIは「アクセスピーク時に3秒以内にWebサイトのページを表示させる」、「24時間365日のサイト無停止で維持する」等です。(この目標だと費用の爆上げが容易に想像できますが。。)
「対象の設定」では、設定したKPIに関係するメトリクスを測定対象にします。例えば、アクセス数や応答時間、障害件数、CPUやパフォーマンス使用率、運用保守にかかる時間、リソースにかかる料金などです。
モニタリング(=Do)
ここでは、先の「対象の設定」で決めた、測定対象の生データを集め、そのデータを加工し、判別可能な情報に変換します。
「データ収集」では、誰が、いつ、どのくらいの頻度、どのくらいの期間に渡って監視するかがポイントです。
「データの処理」では収集した、先のKPIに関係するメトリクスを抜き出し、次のフェーズで分析しやすいように加工・整形します。
レビュー(=Check)
レビューでは、収集した情報を分析し、負荷の特性を掴み、有効な対策を検討します。
「情報の分析」では、前プロセスで加工した情報を分析し、負荷の特性を掴み、先の目標を阻む原因を絞り込みます。この辺りから、夜間の処理でレイテンシが悪化する、週末にアクセスが集中しサーバーに過負荷がかかる等、自社特有の傾向が見え始めます。
ボトルネックの特定は、クライアント側に近いレイヤーから原因を絞ることです。
ネットワークのトラフィックから調査を始め、サーバーのスループット、アプリケーションやデーターベースのレイテンシに至ります。ツリーレイヤーをイメージすると、上位から下位のレイヤーにいくほど、枝分かれしていくため、クライアント側に近いレイヤーから調べていくと、原因が複数あるときにも見落とすリスクを減らせます。
WEBの3層構造で表現すると、原因の特定順はこのイメージです。
1.WEB → 2.APP → 3.DB
ちなみに、チューニングの順序はこのイメージです。
1.APP → 2.DB → 3.WEB
例えば、SQLが根本原因なのにメモリだけ拡張しても一時凌ぎです。再びキャパ不足に陥るでしょう。しかし、SQLのチューニングだけで問題が解消できれば、コストを抑えることができます。
「対策の検討」では、AWSの豊富なサービスや機能から、自社の課題にフィットしたソリューションを探し、うまく組み合わせます。
クラウドでは単体のサービスを採用するだけではあまり効果を得られません。
例えば、あるプロダクトでは、レイテンシ向上のためにAWS RDSを採用しましたが、それだけではレイテンシを改善できませんでした。複数のAZ(アベイラビリティーゾーン)を跨ぐマスターDBとスレーブDB間の同期が頻発していたため、同期の度に書き込みのリクエストが待機していたからです。
Bulk Insertの機能を使い同期処理の回数を減らしたところ、書き込み処理は劇的に改善しました。その上、RDS Performance Insights(パフォーマンスインサイト)を使うと、待機イベント単位のKPIを可視化でき、ボトルネックを特定しやすくなります。チューニング目標も設定しやすくなり、運用負担を減らす事ができました。
このように、他の機能を組み合わせたり、アプローチを変えることで少しずつ改善の目途が立ちます。
マスターとスレーブのDB両方を同じAZ内に配置すれば、もっと同期処理が早くなりますが、単一のデータセンターで障害が起きると可用性が損なわれます。そのため、AZを分けながらも低レイテンシで運用するプラクティスを追及します。
この処理速度や耐障害性を合わせもつことは、先述したトレードオフの状態と言えます。低レイテンシと高可用性、相容れないものを両立させたいとしたら、トレードオフの溝をどう埋めるべきか。
選択(=Action)
AWSの設計原則には、以下の5つがあります。
- 最新の標準化
- レイテンシー
- サーバーレス
- 実験
- システムを深く理解
これらを一言でまとめると、「AWSの潜在能力を最大限に引き出すノウハウの最大化」です。
このノウハウの最大化こそが、トレードオフの溝を埋める方法です。
クラウドは初期コストが安価でキャパシティプラニングが不要と言われますが、システムの理解が不足していれば想定外の問題を引き起こします。運用コストが異常に高くなったり、CPUクレジットを超えたバーストインスタンスはパフォーマンスを劣化させます。
システムへの深い理解があってこそ、クラウドの強みを活かすことができます。
クラウドの大きなメリットは、低予算でスクラップ&ビルドができることです。そのテストと実験も含めたPDCAの繰り返しが、負荷特性やシステムの理解を助け、ノウハウの最大化を実現してくれます。
そして、ソリューション選択の結果に応じて、目標のベースラインを見直し、PDCAのサイクルに沿って、継続的な改善を繰り返します。このサイクルを適度に増やせば、日々変化する負荷のパターンを早期に発見し、日々更新されるサービスの中から最適なソリューションを利活用して、パフォーマンスの効率化を追求できます。
まとめ
ビジネスモデルがユニークであるのと同じように、システムが抱える負荷のパターンも特殊なものです。日々変動する負荷特性を早期発見し、自社なりのベストプラクティスを設定することが改善の近道です。そのためにもPDCAのフレームワークで変化に対応できる柔軟な仕組みづくりが必要となります。
昨今、カスタマーサクセスを謳いユーザーの要求変化を先読みした、能動的なサービスが主流となっています。
どこもリッツカールトンのような「WOWストーリー」を提供することに必死なのです。
ビジネスのスピードを加速させるために、企業は「守りのIT」から「攻めのIT」へ,「オンプレ」から「クラウド」へとシフトしています。そのような背景を鑑みれば、クラウドのパフォーマンスチューニングは非常に重要なスキルとなるはずです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
迷惑な買い占めはなぜ防止できないのか
新型コロナウィルスの影響で、マスクやティッシュペーパー、トイレットペーパー、子ども用オムツの品切れが続出しました。
迷惑な買い占めはなぜ防止できないのでしょうか。今回はこの点に迫ります。
制御不能な集団心理
私なりの視点は、「日本政府は適切な対応が遅かった」という一言に尽きます。
一度火が付いた消費者心理は制御が不能なため、そうなる前に、政府が法律や制度を設けるしかありません。
こちらは3.11の東日本大震災のときに、買いだめに走った理由をアンケートにしたグラフになります。
出典:買いだめ行動のきっかけ(出典:クロス・マーケティング、リサーチ・アンド・ディベロプメント
このグラフを見ると、商品が不足している情報を見たり聞いたりした不安や備えから、買い占めに走ったことが見て取れます。商品の不足は、中国人や転売屋の買い占めが原因とされていますが、正確には、その情報がTwitter(ツイッター)等で拡散され、一部の消費者が必要以上に買い込んでしまった事です。
なぜ必要以上に人は買い占めるのか。
経済学にあるゲーム理論からすれば、買い占めない人より、買い占める人の方がメリットが大きいという説があります。「買い占める」という行動を選択すれば、「買い占めない」という行動を取る人に比べ、購入量の差はあるものの、商品を手に入れる可能性が高くなるからです。
東日本大震災や石油危機(オイルショック)、新型コロナウィルスで起こった迷惑な買い占めを見ると、過去の歴史が物語っています。
一度火が付いた集団心理を収束させることは難しい。
性善説か性悪説かの議論ではなく、災害時のような事態に直面した時、日本人のみならず人間は、防衛本能として、買い占めに動いてしまうのです。これを民間レベルで制御することはできません。
だからこそ、買い占めの事態が悪化する前に、政府の適切かつ迅速な対応が不可欠になります。では適切な対応とは何でしょうか。
各国の水際対策
適切な対応とは、十分な水際対策です。国内へのウィルスの侵入をいかに防ぐかにあります。
ITのプロジェクト管理において、「V字モデル」という考え方があります。工程が進むに比例して、バグの発生時における手戻りコストが増えていくというものです。言い換えれば、最初の段階で、対策できていれば、それだけ費用対効果が高いと言えます。
「V字モデル」を図式化してみましたので、ご参考ください。
日本政府は、新型コロナウィルスの拡大防止に向け、2月から入国拒否を始めましたが、「湖北省に滞在していた外国人」と限定的でした。結果からすると、その水際対策は不十分でした。一方で、米国などは中国全土からの入国拒否を断行しています。
日本政府は新型コロナウイルスによる肺炎の拡大防止に向け、2月1日から湖北省に滞在していた外国人らの入国拒否を始めた。米国やシンガポール、オーストラリアなどが中国全土からの入国を拒否しているのに比べると対象は狭い。政府は感染者が湖北省に集中しているのに加え、過度な入国制限は日本経済への影響が大きいとみるためだ。
出典:2020年2月8日 日本経済新聞
また3月5日、日本政府は中国からの入国者について、2週間待機させる発表をしましたが、同じ対策を台湾政府は、約1ヵ月前に表明しています。
新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大の懸念が広がる中、外交部(日本の外務省に相当)は台湾に渡航する外国人について、中国滞在から2週間以内は入国を認めない方針を決めた。
出典:2020年2月5日 TAIWAN TODAY
この2つの対応を見ても「日本政府は適切な対応が遅かった」という印象を受けます。
マスクの買い占め防止
買い占め防止においても、政府が優先的に行うことは「水際対策」でした。先述の「V字モデル」のイラストで分かるよう、マスクの転売を禁止するよりも、初期工程である販売の時点で規制をかける方が、遥かに効果が高いからです。
台湾では早くにマスクの買い占めを防止する制度を導入し、マスクの安定供給に力を入れました。
その買い占め防止の制度とは、実名制と枚数制限による販売規制です。
まず保険証を利用した身分証明がないとマスクを購入できないため、外国人による買い占めを防止することができます。
次に、生産供給力から逆算して一人当たりの購入枚数を制限しておけば、生産量が低下しない限りは、ノンストップで全国民にマスクを届けることができます。
この制度の背景には、台湾政府が国内で生産された全てのマスクを買い上げて実現した、徹底的な販売管理があります。
なぜ、このような「適切で迅速な対応」を台湾政府はできたのか。
それはSARの教訓から得た、感染症対策の体制強化によるものでした。感染症対策チームはSARS発生の翌年から結成され、来るべき時に備え、入念に準備されていました。
台湾はかつてSARS(重症急性呼吸器症候群)のまん延によって悲惨な経験をした。これが、今回の新型コロナウイルスへの素早い対応につながった。台湾はSARS発生の翌年、国家衛生指揮中心(National Health Command Center, NHCC)を立ち上げ、中央流行疫情指揮中心(=中央感染症指揮センター)、生物病原災害中央災害応変中心、反生物恐怖攻撃指揮中心、中央緊急医療災難応変中心などの機能と補完することで、より全方位的な防災システムを構築した。
出典:TAIWAN TODAY
空港での徹底的な検疫はもちろんの事、過去のインフルエンザ陰性の患者データから追跡し、コロナの感染者を特定できたという事例もあります。また、過去の教訓から、新型コロナウィルスに対抗すべく、緊急条例を次々にスピード可決する、与野党の協力体制も評価されています。
新型コロナウィルス発症当初、過去の分析から、台湾は中国に次ぎ、感染者数ワースト2位になるだろうと予想されていました。中国と台湾の往来は多いからです。しかし、台湾の水際対策が功を奏し、台湾の感染者数は2月24日時点で10位に抑えられています。
政府の価値観
一方で、台湾と同じくSARSで苦しめられた韓国は、新型コロナウィルスの発生数が、中国に次ぐ第2位となっています。韓国も日本と同様、中国全土ではなく湖北省からの入国制限に留めていました。この事実を見ても、「水際対策」の力の入れ方が、被害の大きさに関係していることがよく分かります。
日本も韓国も、入国規制の対象を中国全土に指定できなかった理由は、中国との関係悪化を懸念していたからだと推測しています。しかし、中国の一部である台湾は、中国全土からの入国規制を早くに決めました。
「国交」か「人命」か、災害時のような最悪な時に、政府の価値観が問われます。
「適切で迅速な対応」ができなかった理由は、対策の誤りというよりは、何を最優先するかの価値観によるものかもしれません。この教訓を生かし、人命を優先して被害を最小限に留める今後の対応を期待したいものです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
SDGs(持続可能な開発目標)に取り組む企業の意図とは
こんにちは、Taikiです。
最近、「SDGs」のバッジをジャケットに着けている人を良く目にします。今回は、SDGsの目標に取り組む企業の意図に迫りたいと思います。
SDGsの読み方
まず、SDGs(エス・ディー・ジーズ)の読み方ですが、最後の"s"だけ小文字の理由は、Gs=Goals(ゴールズ)を意味しているからです。
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。そもそもどう発音するかというと、SDGs(エス・ディー・ジーズ)です。
最後はGoals(ゴールズ)の略です。
SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。
出典:イマココラボ
17の目標(ゴール)と169のターゲット
SGDsには、17の目標があります。
せめて関心があるのと仕事に関係する目標は言えるようにしたいですね。例えば、節電も「13.気候変動に具体的な対策を」に該当する立派な活動です。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人と国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
では、全部覚えたい方に、少しアドバイスを。
目標の順序でストーリーを組み立てると覚えやすくなりませんか?
なんとなく目標の対象が、少しずつ発展途上国から先進国にシフトしていますよね。貧困⇒飢餓⇒健康・福祉⇒教育.....。この流れがイメージできると覚えやすいかも。
そして、グループ化された17の目標を展開したのが、169の達成すべきターゲットになります。細かくなるので詳しくはこちらを。
環境未来都市
MDGs(ミレニアム開発目標)の時代から、自国の取り組みを対外的にアピールしたい日本は、2008年から、規模の大小に関わらず、23都市を選び、低炭素都市として支援してきました。
これが環境未来都市です。
2013年に、その環境をクリアできた環境未来都市の中から、環境に社会と経済を加えた、より高いレベルで持続可能な都市として、11都市・地域が選定されました。
これが環境モデル都市になります。
今後は、環境モデル都市の成功パターンを他の都市にも応用し、持続可能な成長維持の底上げを試みているものと思われます。
店舗ビジネスの多店舗展開に似た戦略ですね。
出典:内閣府
「環境モデル都市」の自治体名は、こちらで。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/pdf/kankyo_gaiyo.pdf
企業の取り組み例
小泉環境相のセクシー発言がまだ記憶に新しいですが、環境の取り組みについて、日本政府は国連にケツを叩かれています。では、企業は誰に叩かれているのでしょうか。
そのヒントを抜粋してご紹介します。
1つは、資本市場においてESG投資やTFCD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)などといった動きが加速化したことである。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2017年に投資原則を改訂し、全ての資産でESGの要素を考慮すると明言したことの影響も大きい。
もう1つは、消費者のエシカル商品への意識の高まりや、就職先の選択にあたって社会貢献度合いも重視するミレニアル世代の台頭が挙げられる。
出典:Harvard Business Review
個人・機関投資家、消費者、求職者など、企業は多方面からケツを叩かれています。
だからこそ企業はその取り組みを全力でアピールしないといけません。
では、企業の取組事例を一部紹介しましょう。
吉本興業
「空飛ぶレジ袋」
SDGs14「海の豊かさを守ろう」をテーマにした作品。 私たちが普段から使っているプラスチックのゴミが、海の生態系を壊している事実を伝えるために制作しました。 空を気持ちよさそうに飛んでいるレジ袋たちが、最後は海にたどり着き、生き物の生態系を壊していた。 作品の前半と後半で生まれるショッキングなギャップを描くことで、この事実をより印象的に伝えています。
吉本興業はSDGsのPVを制作していました。最後の 「レジ袋。いらない。お魚死んじゃうから。」が、エコバックの大切さを伝えていますね。
伊藤園
当社は、これまで企業の社会対応力向上、共有価値創造に向けて、国際標準であるISO26000をガイドラインとしたCSR体系を導入しています。加えて、SDGsの企業への導入では共有価値の創造の考え方が示され、これをビジネスチャンス面とリスク回避面の両面での活用が必要ですが、当社はマイケル・ポーター教授らの提唱するCSVを組み合わせてCSR/CSV経営を実践しています。
出典:伊藤園オフィシャルサイト
ちょっと分かりにくい点もあると思うのですが、CSRは社会的責任といわれ、奉仕する活動と位置付けられていました。言い方は良くないですが、必要経費だと。
しかし、このポーター教授らの提唱するCSVは、これまでの社会活動の概念を覆しました。
戦略的にCSRを位置づけ、むしろ戦略的に社会問題に取り組む事で、競争優位性と公共性の両方を実現するのが狙いです。「私的財と公共益のトレードオフ」を解消できれば、今後の大きなトレンドになります。
私もCSRは戦略の1つとして捉えているため、この記事は「ビジネス」カテに追加しています。
バッジやアイコン、ロゴ について
最近、ジャケットにバッジ、名刺にSDGsのアイコンやロゴ、シールなんかもよく見かけます。その背景は、SDGsが全ての個人や企業の取り組みを想定しているため、抽象的な努力目標にせざるを得ないからです。つまり、その大小に関わらず、取り組みに関わる人は誰でも着ける事が可能です。
少し長いですが、その経緯を一部抜粋します。
自社の事業をSDGsに簡単に紐づけられてしまうのは、SDGsの特徴そのものに起因する面がある。SDGsの前身であるMDGs (2000年から2015年のミレニアム開発目標)の8つの目標では、具体的な課題の解決に狙いを定め、測定可能なターゲットが設定された。極めて大胆な目標ではあったが、政府、NGO(非政府機関)、ならびに多国間組織のベクトルを合わせ一定の成果を上げることに成功した。
一方、SDGsは、全ての人々に関わる持続可能性の課題を含めることを企図し、企業をも巻き込むという、国連の活動では従来にないアプローチを採っている。
その結果、掲げられた目標は普遍性の高い表現となった。言い換えれば、抽象的な目標となり、さらにはアカウンタビリティが求められない仕組みであることから、企業にとっては「気軽に」コミットメントを表明しやすくなったのである。
出典:Harvard Business Review
SDGsのゲーム
SDGsの理念や目標を、社内に定着させることは少々大変かと思います。そこで、関心がなくても取っ付きやすく興味を持たせる方法があります。
それは多人数でのカードゲームです。
公認のファシリテータによる公開講座ですが、費用は、参加者1名につき3000円だそうです。
社員の意識改革や部門横断的なコミュニケーションの機会をつくるワークショップの場にもなると思います。ご興味のある方はご参考ください。
最後までお読み頂きありがとうございました。
【難易度別】ITインフラ入門資格のランキング一覧とその市場価値について
こんにちは、Taikiです。
LINEが新成人に行った調査の結果、最もなりたい職業は「公務員」、男性の次点は「エンジニア、プログラマー」だそうです。この回答結果から、将来に対する不安が見て取れます。
これからの日本の社会が「明るい」と思う新成人は少数派──LINEがLINEユーザーの新成人を対象にした調査で、こんな結果が出ました。今後の日本社会について「明るいと思う」「やや明るいと思う」と回答した新成人は、合計13%に過ぎなかったとのことです。なりたい職業は男女とも「公務員」がトップ。男性は「ITエンジニア/プログラマー」「ものづくりエンジニア」が続き、女性は「看護師」「主婦」という結果でした。
出典:excite
そこで、今回は、専門領域であるインフラ系のIT資格を難易度別に比較し、シナリオに応じて優先的に取得すべき資格を考察したいと思います。
目次です。
前提
難易度は、試験時間や合格ライン、出題パターン、経験則から独自に設定しました。あくまで個人の見解です。また取り上げている資格は入門レベルなのでご留意下さい。
資格一覧
今回は、マイナビが出してる「サーバーエンジニアのスキル証明に役立つ6つの資格」から一部抜粋し、難易度別にランキング付けしてみました。
ランキングの一覧はこちらになります。
概要説明
基本情報技術者試験(IPA認定)★★★★★
最も認知度が高い国家資格の1つです。幅広いITスキルとITリテラシーの高さを証明することができます。
CCNA (Cisco認定) ★★★★
世界的に見て認知度が最も高いネットワーク系のベンダー資格の1つです。Cisco製品や基本的なネットワークスキルを証明できます。
Lpic Level1 (LPI認定) ★★★
Linuxのニュートラルベンダー資格です。ディストリビューションに縛られず、Linux全般のシステム構築・運用・管理についての知識・スキルを証明できます。
Linucという資格もありますが、日本に最適化されたもので、国内でシェアの高いUbuntuやDebianを対象としたテスト内容になります。
ITIL Foundation(itSMF Japan認定)★★
ITサービスマネジメントの成功事例を体系化したベンダー資格です。ITサービスマネジメントについての知識を証明する世界共通の入門認定資格となります。
MTA(Microsoft認定)★
アメリカをはじめとした世界150カ国以上で試験が行われる世界共通のベンダー資格の1つです。Windowsサーバーに関わる基本的な知識・技術力を証明できます。
市場価値と資格を取る順序
基本技術者試験を優先して取得すべきケース
もしITエンジニアとして、業種や職種、キャリアパスが定かでない場合は、 基本情報技術者試験の受験をお勧めします。開発系、運用計、ネットワーク系、どの分野に進むにしても、基本技術者試験の知識が活きてくるからです。
つまり、基本技術者試験は全ての技術や知識の土台になります。
またIT業界は、元請けから下請けに仕事が流れていきます。元請けから多くの仕事を受注したい下請けSIは、資格保有者を多く抱え、受注競争に勝ちたいと考えています。中でも評価されやすい資格は、国家資格として認知度が高い基本技術者試験になります。
また、そこそこ難易度が高いため、不合格を嫌がる人は受験をしたがらない傾向にあると聞きます。その中で、基本技術者試験を保有していれば、勤勉かつ高いリテラシーを持った人材として一定の評価を得ることができます。
一部の日系企業、特に金融や保険、セキュリティなど同試験が必須の求人もあります。(保有していない場合は、期限内に取得を求められるところもあります。)
LPICを優先して取得すべきケース
例えば、Web業界に進もうとする人は多分Linuxに関わります。その理由は、世界中で一番多く使われているWebサーバーは「Linux」だからです。これからWeb業界に入ろうとしている人は、LPICを持っていればそこそこ有利だと思います。
試験内容が実務に即した内容のため、すぐに業務に活きてくるからです。
ちなみに、LinuxがWebサーバーによく使われる理由をご存知でしょうか。「信頼性が高い」、「OSの中身が公開されている」、「無償で入手可能」の3つが挙げられます。
Webサーバーのようにコンテンツを外部に公開する場合、信頼性が高くカスタマイズ性に優れ、コストを抑えることが重要になります。WindowsだとサーバOSやSQLにライセンス料が発生する上、更新プログラムで不具合を起こす印象も否めません。
CCNAを優先して取得すべきケース
CCNAを特にお勧めする理由ですが、
ネットワーク機器市場において、Ciscoのシェアが半数近くを占めている事です。
大手エンタープライズ向けならそのシェアは更に大きくなるでしょう。大手のインフラ系に進みたいならCCNAを取得すると良いと思います。
出典:IDC(国内ネットワーク機器市場 ベンダー別 支出額シェア実績、2018年)
第2の理由は、外資系で働く時に有利かなと思います。関係記事を抜粋します。
外資においてあまり重視されない、つまり“残念な”IT資格の代表格は、ITパスポートや基本・応用情報技術者などです。これら資格に共通しているのは、
(1)日本(が決めた)基準(2)汎用的(広く・浅く)
ということ。まず「(1)日本(が決めた)基準」ですが、残念ながら日本基準というのは、グローバル的には全く相手にされません。
出典:Daijob.com
最後の理由ですが、ネットワークは全てのシステムやアーキテクチャの根幹にあるものです。オンプレやクラウド、モビリティ、5G、カーコネクト、全てはネットワークに繋がるため、ネットワーク系資格の国際標準であるCCNAを取得する価値は十分にあります。
ITILを取得するケース
ITILでは体系的なサービスマネジメントを学ぶため、基本技術者試験で基本を押さえ、民間資格で専門性を高めた後に、マネジメントの観点から全体を俯瞰する目的で取得すると良いかなと思います。昨年ITIL4 ファンデーションが新たにリリースされましたので、その学習教材も少しずつ増えてくるでしょう。
MTAを取得するケース
個人的には社内で必要になって取得すれば良いと思います。ただし、合格すれば、Microsoftから最新のナレッジが定期的に配信されるみたいです。
まとめ
どの方面に行くにしても、基礎固めとして情報技術者試験を取得した方が良いと思います。取得して損する事は決してありません。
Webや外資など進路が決まっており、専門性の高い知識や技術が必要な場合は、CCNAやLPICを検討すると良いでしょう。
しかし、資格は必ずしも実力を証明するものではありません。
キャリアパスと資格が噛み合った時に、経歴書や自己PRで絶大な説得力を生みます。
また、ITエンジニアの場合、1つのスキルで解決できる事は殆どありません。サーバーやネットワーク、データベースやセキュリティなどのハードスキル、営業や資料作成などのソフトスキル、そういった複数のスキルを上手に使い分け、問題を解決していきます。
そのため、全体像を掴み、問題のボトルネックを常に意識する事が重要になります。
その全体把握に一躍を買ってくれる本をご紹介します。広く浅くインフラの全体構成を紹介している本です。とても読みやすいと思います。
インフラの業務プロセスを体系的に理解したい方はこちらがおすすめです。
インフラ設計のセオリー --要件定義から運用・保守まで全展開
- 作者:JIEC 基盤エンジニアリング事業部 インフラ設計研究チーム
- 出版社/メーカー: リックテレコム
- 発売日: 2019/01/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
詳しいインフラアーキテクチャの仕組みを理解したい方はこちらを。
最後までお読み頂きありがとうございました!
PCベンダーがBTOを、アパレルがSPAを採用する理由
こんにちは、Taikiです。
業界毎に主流のビジネスモデルがありますが、AppleやDellなどのPCベンダーがBTOを、ユニクロなどのアパレル(ファストファッション)がSPAを採用する理由は、ある共通した目的があるからです。今回はこの点に迫ります。
サクッと書いたのでサクッと読めるかと思います。
ビジネスモデルの違いと共通した狙い
両業界で利益を圧迫する最も大きい要因は何でしょうか。
それは過剰な在庫を抱える事です。
この過剰在庫を発生させないために、PCベンダーがBTOを、アパレル(ファストファッション)がSPAを採用してます。
PCベンダーのビジネスモデル
PCベンダーのビジネスモデルはBTOです。AppleやDellもこの方式を採用し、業界のデファクトスタンダードとなっています。
BTO(build to order)/ 受注加工組立
組立製造業において、顧客の注文を受けてから最終製品の生産を行う生産方式のこと。狭義には、部品や中間製品を見込みで在庫しておき、注文確定後に最終加工・最終組立を行う受注加工組立をいい、広義にはそれを含む受注生産一般をいう。
BTOの特徴は、注文を受けてから部品を組み立てて出荷することです。その部品は外部の部品メーカーに生産委託しています。在庫を発生させないために、なぜこの方式を採用するのか。
それはカスタム生産の対応が柔軟な事と部品の流動性が高いためです。
PCは同一モデルでもスペックの違いで、選択肢は多岐に渡ります。使い道も多様化しているため、スペック縛りのPCでは売れ残り在庫となります。
そこで、受注から組み立てる方式を採用し、カスタマイズ注文に対して、柔軟に対応しています。在庫として保有するのは、流動性の高い部品のみです。ちなみに、別会社にパーツを生産委託している理由は何か。
それは費用対効果の問題です。
PCの各パーツ、例えば、CPUやメモリ、SSDやHDDなどを高性能・低単価で、全てを一社で大量生産しようとすると、初期投資や研究開発費がバカになりません。しかも各部品の性能は日々進歩しているため、そこは専業メーカーに任せて分業した方が得なのです。
アパレルのビジネスモデル
ではアパレルのSPAを見ていきましょう。これはGAPやユニクロなどファストファッションで定番のモデルです。
SPAとはpecialty store retailer of private label apparelの略で製造小売ともいう。企画から製造、小売までを一貫して行うアパレルのビジネスモデルを指す。消費者の嗜好の移り変わりを迅速に製品に反映させ在庫のコントロールが行いやすいなどのメリットがある。
出典:コトバンク
SPAでは、材料調達⇒生産⇒物流⇒販売までの一連のサプライチェーンを自社で完結させる方式です。では在庫を発生させないために、なぜこのモデルを採用するのか。
それが工場、倉庫、店舗間のリアルタイム連携において最も優れているからです。
もし工場、倉庫、店舗がバラバラの会社で運営されていたら、システムの違い、意思決定の違い、勤務体系の違いなど様々な弊害が発生し、連携が遅れてしまいます。
ちなみにファーストリテイリングでは、中国や東南アジアでの生産を背景に、グローバルなリアルタイム連携を実現するため、AWSに物流管理システムを移行しました。更に需要予測のためSAPを採用しつつあります。
事業拡大やグローバル化に合わせてIT関連のリソースを柔軟に拡張しやすい点などを評価して、AWSなどのクラウド活用を進めてきた。クラウドへの移行が順調に進んでいることから、ビッグデータ分析による需要予測やEC(電子商取引)といったデジタル戦略を一段と強化する目的で、SAP製品の採用を決めたもよう。
出典:日経コンピュータ
両者のビジネスモデルが違う理由
両者のビジネスモデルが違う理由は、一言でいうと期間です。つまりリードタイム(発注から納品までの期間)と販売できる期間に大きな縛りがあるかどうかです。
まだカスタムPCの納期が遅いのは許せるかもしれません。しかし、季節物の服が欠品している、または納品に時間がかかる、というのはいかがですか。
ファストファッションのコアコンピタンスは、欠品がない事です。
欠品が続けば、直ぐに他店に乗り換えられます。欠品をなくしつつ、在庫を減らす事がファストファッションの至上命題です。そのためにファストファッション系のアパレルは、SPAを採用しているのです。
まとめ
なぜ在庫を減らすことが重要なのか。会計上では、在庫は資産となるため、急いで処分しなくても、という錯覚に陥ります。
しかし、在庫とは投入したお金が形を変えたものです。
そこには原材料費ではなく社員の給料などの労務費も注ぎ込まれています。在庫を廃棄するとは、お金をどぶに捨てる事に等しい行為です。アパレルではシーズンや流行が終わればもう売れません。だから一円でも多く換金するためにセールによる在庫処分があるのです。ドライな言い方がですが、換金性のないモノに価値はありません。
そう考えると、特に食品ロスは環境にとっても経済にとっても由々しき問題だと感じています。お読みいただきありがとうございました。
ある農薬が世界で規制され、日本で緩和される理由
こんにちは、Taikiです。
発がん性の疑いから、売上No.1の農薬が世界各国で規制される一方、日本では緩和されました。
安全な農薬と考えられてきたグリホサート(ネオニコチノイド系農薬)だが、2015年にWHOの専門機関(IARC 国際がん研究機関)によって発がん性物質に分類されて以降、
世界各国はグリホサートの使用削減・禁止に動いている。
そんな中で日本は何の対策もとらないばかりではなく、食品残留基準値を緩和しているのだ。
出典:msn
2017年12月に厚労省が緩和した残留基準値を一部抜粋します。緩和後の残留基準値ですが、ライ麦は150倍にもなります。
出典:厚生労働省
では、グリホサートは本当に危険なのでしょうか。また世界が規制強化する一方で、なぜ日本は緩和したのでしょうか。今回はこの点に迫ります。
グリホサートは本当に危険か
グリホサートは有害か、各国における調査機関の調べでは、「発がん性の証拠はない」、または「因果関係は否定できない」と議論が分かれます。
では、なぜこうも騒ぎ立てるのか。
それは、この農薬を使用している地域で以下のような問題が実際に発生しているからです。
日本が農薬を規制緩和する理由
農薬に対する姿勢が、世界各国と日本とで異なる理由は、「価値判断の違い」ではないでしょうか。
言い換えると、不明確でも事前に対応するか、事実関係が解明された後に対応するかの違いです。
予防原則と事後対応
世界各国が農薬を規制強化する姿勢、それは「予防原則」に基づくものです。
予防原則とは、欧米を中心に取り入れられている概念で、化学物質や遺伝子組換えなどの新技術などに対して、人の健康や環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、規制措置を可能にする制度や考え方のこと。
出典:環境用語集
予防原則とは、「農薬と健康被害」それを裏付ける明確な証拠がなかったとしても、状況から判断し、最悪な事態を回避するための予防的措置を講じる、といったところでしょうか。世界各国が農薬を禁止する根本思想になっています。
しかし、日本の思想は逆です。
因果関係が判明するまでは行動しない、それを裏付ける国会の答弁を一部抜粋します。
政府として、ネオニコチノイド系農薬の使用と蜜蜂の大量死等との因果関係が科学的に確認されているとまでは認識していない。
出典:内閣衆質一九八第二一号
つまり、日本の現内閣では、因果関係が科学的に確認されるまでは、規制強化に踏み出すことはありません。水俣病やイタイイタイ病、四日市ぜんそくなど四大公害を調べました。
いずれも発症から公認まで10年以上経過しています。
入念に調査し解明後に対応する、昔からの価値観は今も色濃く残っています。
米国ファースト
日本が規制を緩和した大きな理由は、おそらく日米関係です。規制緩和のタイミングと対象の農作物をみれば明らかになります。
残留基準値を緩和したタイミング
2014年7月、オバマ政権は、国立野生生物保護区での農作物栽培における使用禁止など、ネオニコチノイドの段階的な使用禁止に舵を切っていました。
しかし、米国はここから方向転換します。
2017年1月、トランプ政権の発足以後、その決定は破棄され、ネオニコチノイド農薬の規制緩和が推進されました。同年12月、日本でもグリホサート残留基準値の緩和に至ります。米国政府の方針に日本政府は追随しています。
残留基準値を緩和した農作物
残留基準値を大幅に緩和した「とうもろこし」「小麦」の主要な輸入国は、言わずもがなアメリカです。
出所:2018年財務省統計
当初、国内で農薬を使用する正統性は理解できていたのですが、更に基準値を緩める意図が分かりませんでした。
「食の安全」「農作物の輸出拡大」を狙うなら、むしろマイナス効果では?
しかし、調べてみると、日米関係が深く関与していました。下記のグラフから、なぜ日本が農薬基準値を緩和し米国に忖度しないといけないのか、垣間見ることができます。
出所:2018年財務省統計
日本の「食料品」の輸入額と「輸送用機器」の輸出額を比較してみてください。輸送用機器の額が圧倒的に大きいですね。その主要な輸出先は米国です。
そう、日本は儲けの多い自動車輸出に報復措置を取られたくありません。
なので、日本としては、農薬基準値を緩和し、滞りなく食料品や農薬を米国から輸入し、貿易摩擦を避けないといけません。規制緩和の背景には、貿易収支の事情が多分にあると見ています。
「だから、皆さん大目に見ましょう」と言って納得できる人が何人いるかは不明ですが。
もし日本が農薬を禁止したら
もしそんな日本が農薬を禁止したら、どうなると思いますか。おそらく、その経済的損失は膨大な額に上り、国内の農家も大打撃を受けるでしょう。その理由は以下にまとめてみました。
収穫量
農薬を使用しない場合の影響について抜粋します。
農薬を使用しない場合の病害虫の影響については、(社)日本植物防疫協会において1991年、1992年および2004~2006年に試験を実施しており、それによると、ある程度収穫できる作物もありましたが、
収穫が皆無になる作物もありました。
さらに、(財)日本植物調節剤研究協会では、1983~1986年に野菜における雑草の被害についての解析を行っており、収量が大幅に減少することを示しました。
出典:農薬工業会
日米関係
タイの事例を抜粋します。
米通商代表部(USTR)は25日、タイ政府による労働者保護が不十分だとして、現在特恵関税(GSP)を適用しているタイからの
輸入品の約3分の1、13億ドル相当を6カ月後から適用外
とすると発表した。GSPの適用外となるのはすべての水産食品など。タイ国内には、米政府の今回の措置が、タイ政府が米側の反対を押し切り、3種類の農薬の使用を禁止したことへの報復という見方がある。
出典:newsclip
このタイのケースでは労働者保護という建前はありますが、私はこう思います。
農薬の使用禁止が引き金になったのでは。
日本に置き換えると、自動車などの主要な輸出品に報復措置が取られることは容易に想像できます。
貿易摩擦については以前も記事にしたのでご参考まで。
生産コスト高
フランスの事例を抜粋します。
BIO大国のフランスではありますが、BIOを掲げるには、
農薬に(できれば一度も)汚染されていない安全な土地が必要です。
かつて農薬が使われていた土地なら、転換までに何年も要し、農薬などの汚染から土を回復させるところから始めなくてはなりません。
また農薬を使っている近隣の農地から、土壌を伝って影響を受けることも考えられます。さらに有機農法は栽培に手間がかかります。
一度BIOと認証された農作物や商品でも、定期検査でわずかでも基準をクリアできないとそのラベルを剥奪されてしまう上、再びBIOと認証されるまでには、かなりの時間がかかるのだそうです。
出典:家庭画報.com
米国の大統領選において、トランプ氏が農家から高い支持を受けた背景にも、オバマ政権下において環境規制による生産コスト増があったためです。
消費者が受ける印象
無農薬の農産物について、消費者が受ける印象を抜粋します。
化学物質を減らすと農産物は虫食いだらけ、形がいびつになり、虫の害による劣化、品質低下につながります。
つるつるに輝き、同じ形、同じ大きさの農産物に慣れ、虫などが付着していると受け入れがたい。
そう考えている都会の消費者は決して少なくありません。
出典:食と農をテーマに
農薬に代わる有機農法の一例
農薬を使った従来の農法は、環境の汚染、薬剤耐性を持った病原菌や害虫への果てしない対応、薬剤購入のための費用負担など沢山の課題を抱えています。田畑には、益虫と害虫が共生していますが、農薬は無差別にこれらの生物を排除します。
しかし、この生物の共生を活かした有機農法(以下、共生農法)が存在します。
例えば、お米はカメムシに食べられると、斑点米とされ、お米の価格が極端に下がります。その抑止のために農薬が使用されますが、共生農法を採用すると、下記のロジックで元凶とされる害虫のみを排除可能です。
この農法を推進する民間稲作研究所の指導により、千葉県いずみ市では学校給食に無農薬米を採用しました。またブータン王国では国家プロジェクトとして農薬を使わない米作りをするために、3年間にわたり同研究所でこの農法を教えてもらったそうです。
同研究所の有機農法が紹介されたサイトを掲載します。
まとめ
農薬について調べると、必ず環境と経済のトレードオフ問題にぶつかります。毎度思う事は、経済主義者は環境対策を曖昧にし、環境主義者は経済損失を軽視するため、あまり議論が噛み合いません。
しかし、大原則は、利益は私的財 自然環境は公共財です。
利潤追求は民間主導でも良いですが、環境保護は政府主導でないと絶対に無理です。長い歴史がそれを物語っています。自然環境は有限です。もしその農薬が有害だとしたら、手遅れになる前に政府の対策が急務になるでしょう。
最後にサン・テグジュペリの言葉を紹介します。お読み頂きありがとうございました。
「地球は先祖から受け継いでいるのではない、子どもたちから借りたものだ。」
宇宙開発と次世代自動車が注目される理由とその共通点
こんにちは、Taikiです。
孫正義、ビルゲイツ、アマゾンやグーグルなど各界から、「宇宙開発」や「次世代自動車」への資本投入が盛んに行われています。この2つの業界が注目される理由と両者に共通して言える事は何でしょうか。今回は、この点に迫ります。
宇宙開発でやりたいこと
まずは宇宙開発でやりたいことをまとめてみます。
地球外の惑星移住
注目を集めるのは、テスラ創業者のイーロン・マスク氏が設立したスペースXとアマゾン創業者のジェフ・ベゾスが立ち上げたブルーオリジンです。両社ともに地球外の惑星移住を最終目標に掲げています。
人工衛星と宇宙データ
堀江貴文氏が出資する、インターステラテクノジズは、衛星打ち上げ用のロケットを開発していますが、その背景にあるのは、小型人工衛星の需要が高まっている事です。
人工衛星は宇宙データ(衛星データ)の収集や活用を目的としてますが、これまでは、国家主導で行われ、その宇宙データも高額でした。
しかし、小型人工衛星の技術が民間に公開され、民間企業から小型人工衛星の打ち上げが相次ぎ、2027年までには世界で累計7000機の衛星が飛び交う事が予測されます。今後は、そのデータがオープン化されるため、データだけでなくデータ分析サービスへの需要も高まりそうです。
出所:東洋経済
ユニークな宇宙ビジネス
惑星移住や衛星打ち上げだけでなく、宇宙旅行や宇宙エンタメ、宇宙ゴミ回収などユニークなビジネスも出てきています。ANAホールディングスやHISから出資を受ける、PDエアロスペースは、2023年に有人宇宙飛行を目指していますが、その先にあるのは宇宙旅行です。
他にも「人工流れ星」の開発を進めるALEや宇宙ゴミ掃除の事業化を目指すベンチャー企業もでてきています。
次世代自動車に期待されること
話は変わりますが、次世代自動車に期待されること、それは「CASE」と呼ばれるものです。順に解説します。
コネクティッド(C)
コネクティッドは、自動車をインターネットに接続し、車の情報を収集・分析するものです。具体例は、車にセンサーを搭載し、インターネット経由で車を点検する事で、安全性を高めます。
また、走行距離や走行ルートを分析する事で、車の買い替えや車種の選定、台数の調整ができ、業務改善やコスト削減につなげることもできます。カーコネクトサービスは、ドコモを初めとする企業が提供しています。5Gの普及も追い風になるはずです。
自動運転(A)
自動運転の定義はレベル分けされており、レベル2までが「人を主体」、レベル3以降は「車が主体」となります。国内では、2020年に、自動運転レベル3を念頭に、法律が施行される予定です。
出典:日本経済新聞
グーグル系のウェイモは自動運転車の製造に乗り出すことを表明し、日産自動車と提携し、無人ライドシェアサービス展開を狙っています。
シェアリング(S)
シェアリングには、ライドシェアとカーシェアリングの2種類があります。
ライドシェア
一般的には「相乗り」や「配車サービス」を指します。ライドシェア大手のウーバー・テクノロジーが有名ですね。
カーシェアリング
自動車を会員間で共有(シェア)して利用するサービスです。レンタカー業者が車を貸し出すBtoCが主流ですが、最近は、個人間で車を貸し借りする、CtoCを提供するプラットフォームが現われました。
電動化(E)
電気自動車(EV)ですが、世界中にガソリン車の規制が強まる中、各メーカーは対応を急いでいます。トヨタ、日産・ルノー・三菱の連合、ホンダ、GM、FW、ダイムラー、BMWは、既にEVの拡販を進めています。
宇宙開発と次世代自動車の共通点
それでは宇宙開発と次世代自動車の共通点を見てみましょう。
業界の力学が「官民」であること
どちらの業界も公的機関が主導し民間が推進しています。宇宙開発でいうと、JAXAが宇宙開発政策を打ち出し、民間の宇宙開発を支援しています。
次世代自動車だと、環境省が電気自動車を普及促進したり、国交省が自動運転レベルの引き上げをを行う法改正を進めています。
どちらも国家プロジェクトのため、民間は補助金や法整備の追い風を受け、気兼ねなく資本や技術を投入できます。
業界規模が大きい
宇宙ロケットも自動車も多くの部品で構成されているため、関連会社も多岐にわたり業界規模も大きくなります。またハードウェア部品だけでなく、IoTや5G、ビックデータやAIとも深く関係しているため、その波及効果も大きく、今後の産業を支える収入源となり得ます。
熾烈な競争とオープンイノベーション
競争相手は、同業他社だけでなく、新規参入・代替サービスの企業もいます。例えば、次世代自動車では、中国(バイドゥ)やGoogleなどIT企業が新規参入し、ウーバー・テクノロジーが自動車販売に代わるライドシェアサービスを展開しています。宇宙開発にもトヨタ自動車やアマゾンが参入し、熾烈な競争が進んでいます。
一方で、企業や国を越えて、出資や協業、共同開発などが行われ、どの業界よりもオープンイノベーションが活発化しています。
まとめ
惑星移住や自動運転、今まで映画やアニメで描かれたテーマが現実のものになろうとしています。ますます競争の激化や協業化が予想されますが、どちらの業界においても収益モデルの確立が今後の課題となりでしょう。
メルカリがヤフオクを、アマゾンが楽天を負かした戦略
出典:両社公式ロゴ
こんにちは、Taikiです。
eコマースの世界では、後発組が先行者を食らう、なんて事例がよくあります。最たる例は、メルカリやアマゾンではないでしょうか。
では後発のメルカリが、大手のヤフオクにどう対抗したのでしょうか。またAmazonはどうやって楽天を負かしたのでしょうか。両社のポジション戦略には、ある共通点があります。今回はこの点に迫ります。
メルカリとヤフオクの違い
メルカリとヤフオクの違いは、男女比をみると明らかです。メルカリは、女性を中心とした若手層が、ヤフオクは男性を中心とした中年層が多くの割合を占めています。
出典:稼グッド
なぜ男女比や年齢層がこうも違うのでしょう。その理由は、月額利用料と手数料を見ると分かります。諸々計算すると、出品の販売額が約3万円未満ならメルカリの費用が安いのですが、約3万円を超えるとヤフオクが安くなります。
月3万円以上となると、出品の単価が高めのセドリが主流になります。セドリを目的する層は、その道に詳しい中高年の男性が多めです。
逆に単価の安い商品ならメルカリがお得なため、女性や若年層が多く利用します。
色々なジャンルの出品が雑然と並んでいる光景は、「蚤の市」のそれとも重ねり、女性の好奇心や購買意欲も高める効果があります。
若い女性層から支持を受けるメルカリは、一気に知名度が上がり、ダウンロード数ではヤフオクを追い抜きました。
アマゾンと楽天の違い
次にアマゾンと楽天ですが、両者の違いは販売形態です。アマゾンは自社で商品を仕入れ販売する直販型、楽天は売り場を提供するモール型を主体にしています。アマゾンは売買差益で、楽天は出店料や販売手数料で稼いでいます。
この販売形態の違いが勝敗の決め手となりました。
当初、楽天はネット上で売り場を提供するだけでした。在庫や倉庫を持たないため、物流コストを抱えずにすみ利益も出やすいです。
一方、Amazonは直販のため、仕入れた商品を保管し、梱包して発送します。当然アマゾンの方が倉庫代や物流コストも嵩みます。
しかし、次第にアマゾンが優勢になります。
物流システムを一極化したため、大量仕入が可能となり、ボリュームディスカウントを生むことができました。また、異なる商品も同じ倉庫にあるため、靴や洋服、携帯グッズなど違った商品を合わせて発送したりと配送スピードも向上しました。
一方、楽天は、店舗毎で管理するため、仕入や在庫、発送もバラバラです。当然コストやスピードで差を付けられます。序盤はコスト重視の楽天でした。
しかし、後半戦は物流を制したアマゾンにまかれる結果となりました。
現在は、楽天も物流網の形成を急いでいますが、もはやアマゾンに追いつくことはできないでしょう。
メルカリとアマゾンの共通した戦略
メルカリとアマゾンの置かれた状況はよく似ていました。いずれも後発組だった事、そして強力な先行者がいたという事。しかし両者には共通したポジション戦略がありました。
それは、「先行者の欠点を補う」「敢えて対立構造をつくる」の2点です。
先発者の欠点を補う、それをニッチ戦略ともいいます。楽天の弱点を補完したのが、アマゾンの物流戦略でした。
またヤフオクがセドリ層をターゲットにしていた事に対し、メルカリはシェアリングエコノミー層をターゲットにする、そうやって、対立構造を作ることで、違いが際立ち、その分知名度も高くなります。
まとめ
ライバルの知名度が高いほど、対立構造をつくると、その違いはより明らかになります。相手の力を利用して攻撃力を強める。それは、格闘技でいうところのカウンター技にも似ていますね。
SEO対策の前に全体を俯瞰すべき理由
こんにちは、Taikiです。
ブログやWEBサイトの運営において重要視されるSEO対策ですが、問題の全体像が分からずに色々試しても時間だけが奪われます。偶然成功しても、その理由を解明できなければ応用が利かず次に生かすこともできません。今回は、アクセス数アップのために重要な、SEOの裏にある全体像に迫りたいと思います。
目次はこちらです。
SEOの裏にある全体像を掴むために
いくつかSEO対策の解説書を見て感じた事は、少し分かりにくいという事です。その理由は、SEOの背景にある全体像が見えてこないからです。
タグの記述や被リンクの構築など、アクセス数アップのためにテクニカルな方法は多数紹介されていますが、それが全体の中のどれを指しているかが掴めないため、中々腑に落ちません。
では、全体像を把握するためにはどうしたらいいでしょうか。然るべき目標(コンバージョン)を決め、MECE(ミッシー)を意識し、目標達成に至るまでのプロセスを因数分解します。
試しに、セッション数当りのPV数アップを目標とした基本式を組み、その全貌を掴んでみましょう。ポイントは、漏れなくダブりなく基本式を構成することです。
PV数/セッション数 = 表示回数 x クリック率 x 回遊率
マーケティングのフレームワークにAIDA(アイダ)というものがあります。このAIDAにユーザーの行動パターンを当て込んでみると更に分かりやすくなります。
- Attention(認知)⇒ 検索結果がユーザーの目にとまる(≒表示回数)
- Interest(興味)⇒ タイトルと説明分を読んで興味が湧き、ホームページをクリックする(≒クリック率)
- Desire(欲求)⇒ 記事を読んで他の記事も読んで見たいと思う (≒回遊率)
- Action(行動)⇒ ホームページ内の他の記事をクリックする (≒回遊率)
表示回数
「表示回数」とは、あるキーワードを検索した時に検索画面に表示される回数のことを指します。この表示回数から何を読み取ることができるのでしょうか。
- この表示回数がどの検索クエリを想定したものか
- 目標とするPV数から逆算すると表示回数が十分かどうか
検索クエリとは、検索キーワードの組み合わせの事です。検索は単一のキーワードだけでなく、様々なキーワードを組み合わせます。例えば、下記は以前書いた東京オリンピックの記事に対する、検索クエリと表示回数の表です。
こちらがその記事です。
東京オリンピックといっても検索クエリの数は膨大です。要は、どんな記事を書きたいのか、その記事はどの検索クエリを想定しているか、その検索クエリに目標とするPV数を達成できるだけの潜在的なアクセス数があるか、を考えないといけません。下記は、このフェーズで注意する点です。
- 想定した検索クエリの潜在的なアクセス数が少ない
- 書きたい記事があっても読みたいユーザーが少ない
この「表示回数」は、最上位のフェーズです。上記の理由でこのフェーズがボトルネックになれば、次工程の「クリック率」や「回遊率」を高めたところで、アクセス数アップには限界があります。重要度を文字の大きさで表現すると、こんな感じです。
PV数/セッション数 = 表示回数 x クリック率 x 回遊率
クリック率
クリック率は、表示回数のうち何回クリックしてもらえたかを指します。こちらは私のブログに対する、検索クエリとクリック率の表です。
ちなみに、右の平均検索順位は、特定の検索クエリに対する表示順位です。試しに、Googleで「Windows10 今後」と検索してみてください。おそらく私のブログが最上位にヒットするかと思います。では、この「クリック率」から何を読み取ることができるのでしょうか。
- どれだけ集客漏れがあるかどうか
- 集客漏れの原因は何か
上記の「Windows10 今後」と「ヤクルト 海外」という検索クエリを例に説明します。「Windows10 今後」はクリック率が50%です。つまり、「Windows10 今後」と検索すると2人に1人はこのブログをクリックしています。次に「ヤクルト 海外」のクリック率は約10%です。「ヤクルト 海外」と検索すると、10人のうち9人はクリックしないので、「Windows10 今後」と比較すると集客漏れが多いといえます。なぜでしょうか。
その原因の1つは、「ヤクルト 海外」に対する平均掲載順位が約5位だからです。私のPC環境だとGoogleで検索して表示されるサイト数は4件です。スマホだと2件です。つまり一目でユーザーの目に入らない事が集客漏れの原因と言えます。
この点も含め、このフェーズで注意するポイントはこちらです。
- 平均検索順位が低い
- ヒットする検索クエリが想定のものと違う
- タイトルの訴求力が弱い(他と差別化できていない)
- 説明文から書き手の意図が読み取れない
回遊率
回遊率は、一人のユーザーがホームページ内の記事をどれだけ閲覧したかを表す指標です。 回遊率は、ホームページ内の複数ページに興味を抱いてもらえているか、もしくは、うまく誘導できているかを判断する重要な指標です。コンテンツありきですが回遊率が高いと、ホームページ内の情報とユーザーとの接触数も増え被リンクを受けたり読書になってもらえたりもします。この反対の指標は直帰率になります。直帰率とはクリックした初回のページを見て回遊せずに他のホームページに移動した割合を指します。
この「回遊率」から何を読み取ることができるのでしょうか。
- 次に読みたいと思う記事への導線が確保できているか
- 別の記事にうまく誘導できているか
では質問ですが、ユーザーが最初の記事を読み終えた後、同じホームページ内で、次に読みたいと思う記事は何でしょうか。
- 最初に読んだ記事と同じカテゴリーの記事
- 同じホームページ内で人気のある記事
私のブログにおけるユーザーの行動フローをみると、恐らくこの2点かなと思います。「次に読みたいと思う記事」をどう配置するかが、回遊率を向上させる誘導の決め手になるでしょう。
まとめ
では、もう一度基本式を見てみましょう。
PV数/セッション数 = 表示回数 x クリック率 x 回遊率
いかがでしょうか。問題の全体像が分かると、ボトルネックを特定しやすくなりませんか。表示回数が少ないのか、クリック率が低いのか、回遊率が低いのか。もしクリック率が低いとしたら原因は何か。その原因を特定する手段は何か。
その原因特定のために、Googleアナリティクスなどの分析ツールを活用します。そこで原因が見え始めてから対策の立案に入ると手戻りが少なくなります。問題のメカニズムが分からないまま解決手段を急ぐと時間と労力を無駄にします。選択と集中、最小努力で最大効果が発揮できるよう、まずは問題の全貌を明らかにしましょう。
今回ボトルネックの解消方法は記載していませんが、ボトルネックに当りを付けることができれば、原因特定や解決方法を調べる手立てはいくらでもあります。運営しているブログやサイトのあるべき姿を阻む問題、それを特定することが最重要かと思います。
おかげ様で当ブログも少しずつアクセス数が増えてきたため、この度独自ドメインに切り替えました。今後も良質な情報が提供できるよう邁進してまいります。
【Azure】オンプレADをクラウドに移行してみた。その結果、高い授業料に。。
こんにちは、Taikiです。
今回は、個人的な勉強として、自宅(以下オンプレ)でVirtualbox内にActive Directoryを構築しAzureに移行してみました。その検証を通して、Azureの仕組みと躓きやすいポイントをまとめてみました。高い授業料を払う羽目になりましたが、目次はこちらです。
- システム構成と作業手順
- Azureを契約する
- 仮想ネットワークを作成する
- Site-to-Site (サイト間) 接続
- Azureで仮想マシンを作成する
- ドメコンをハイブリッド構成にする
- プライマリドメコン(FSMO)の役割を委任する
- オンプレサーバーを停止しクラウドのシングル構成を確立
- まとめ
オンプレのADをクラウドに移行する理由は、BCP対策、管理コストの削減などがありますが、基本的にはドメコンは2台以上あった方がいいので、1台はオンプレ、もう1台はクラウドのような構成がおすすめですが、今回クラウドのみの構成にしています。
システム構成と作業手順
【システム構成】
- Windows Server 2008 STD (オンプレサーバー)
- YAMAHAのRTX810
- Windows Server 2019 DataCenter(クラウドサーバー)
【作業手順】
- VirtualBoxに評価版のWindows Server 2008 STDをインストールする
- Azureを契約する
- Azureで仮想ネットワークを作成し、仮想サブネット・仮想ゲートウェイ・ローカルネットワークゲートウェイを追加する
- 作成した仮想ゲートウェイ・ローカルネットワークゲートウェイで接続を作成し共有キーをセットしてオンプレ側からのVPN通信をスタンバイする
- 中古で購入したYAMAHA RTX810で、ルーティング、IPSec、NATの設定を行う
- VPNの通信確立を確認する
- B4MSのサイズでWindows Server 2019 DataCenterの仮想マシンを作成する
- オンプレAD上で既存のドメインにクラウドサーバーを追加し、ドメコンをハイブリッド構成にする
- FSMOでオンプレのプライマリドメイン機能をクラウドのセカンダリードメコンに委任して、クラウドドメコンをプライマリに昇格させる
- オンプレのドメコンを死亡させても、クラウドのドメコンでドメイン参加できることを確認する
Azureを契約する
まずはAzureを契約します。契約に必要なのはこの情報です。
AWSの場合だと、AWS側が秘密鍵・公開鍵を生成しますが、Azureは自分で作成した鍵を保存しないといけません。少し面倒ですが、PuTTgen等で作成できます。
仮想ネットワークを作成する
次にAzureに仮想ネットワークを作成します。
- 仮想ネットワークアドレス空間:172.16.0.0/16
- 仮想ネットワークサブネット:172.16.2.0/24
- 仮想ネットワークゲートウェイサブネット:172.16.1.0/29
- ローカルネットワークゲートウェイサブネット:192.168.100.0/24
仮想ネットワークでクラウド全体のアドレス空間、ゲートウェイサブネット、サーバーサブネットを切ります。ローカルネットワークで、オンプレのローカルサブネットを定義し、オンプレ・クラウド間でNAT越えができるようにします。
一通りネットワークを作成したら、仮想ゲートウェイ・ローカルネットワークゲートウェイを組み合わせ、「接続」という状態を作成してあげます。その際に、オンプレとのIPSec接続で使う共通キー(PSK)を設定します。
Site-to-Site (サイト間) 接続
オンプレとAzureとのハイブリッド通信方法は3種類あります。
- Point-to-Site (ポイント対サイト) 接続
- Site-to-Site (サイト間) 接続
- ExpressRoute
Point-to-Siteですが、MSからVPNポリシーをダウンロードしWindowsのPCにあるVPNクライアントを使ってクラウドに接続します。ユーザー数が少ない場合は、この方法がいいです。
ユーザーが多い場合は、Site-to-Site(サイト間)がいいですね。
ExpressRouteは、信頼性が高い、速度が速い、待機時間 (レイテンシ) が短い、安全性が高いという特長があります。ネットワークサービスプロバイダーが提供するMPLS回線を経由しての接続となるため、費用が高くなります。
Site-to-Site(サイト間)のVPN通信を抑えるポイントはこの3点です。
・IPSecでAzureと認証を取る
・NATトラバーサルを設定する
あとはフィルターの設定を行い不正な通信を遮断すればOKです。実際のYAMAHAのコンフィグに設定した情報はこちらです。
# ゲートウェイの設定
ip route 172.16.0.0/16 gateway tunnel 1# VPN(IPsec)の設定
tunnel select 1
ipsec tunnel 1
ipsec sa policy 1 1 esp aes256-cbc sha256-hmac anti-replay-check=off
ipsec ike version 1 2
ipsec ike duration child-sa 1 27000
ipsec ike duration ike-sa 1 28800
ipsec ike group 1 modp1024
ipsec ike keepalive log 1 off
ipsec ike keepalive use 1 on rfc4306
ipsec ike local address 1 192.168.100.1
ipsec ike local name 1 [オンプレ側のグローバルアドレス] ipv4-addr
ipsec ike nat-traversal 1 on
ipsec ike message-id-control 1 on
ipsec ike child-exchange type 1 2
ipsec ike pre-shared-key 1 text 1234567890
ipsec ike remote address 1 [Azure側のグローバルアドレス]
ipsec ike remote name 1 [Azure側のグローバルアドレス] ipv4-addr
ipsec ike negotiation receive 1 off
ip tunnel tcp mss limit auto
tunnel enable 1
ipsec auto refresh on# NATの設定
nat descriptor type 1000 masquerade
nat descriptor address outer 1000 [オンプレ側のグローバルアドレス]
nat descriptor masquerade static 1000 1 192.168.100.1 udp 500
nat descriptor masquerade static 1000 2 192.168.100.1 esp
nat descriptor masquerade static 1000 3 192.168.100.1 udp 4500
Yamahaのサイトに設定手順が掲載されていますのでご参考ください。
Azureで仮想マシンを作成する
仮想マシンを作成する上で失敗したことが何個かあります。
上記1ですが、B1の最小サイズの仮想マシンで2019サーバーを立てようとしたらスタックオーバーで起動不良を起こしました。リモート接続もできず何もできずです。仕方なくサイズを変え作り直しました。個人検証とはいえケチるとだめですね。
上記2ですが、仮想マシンを作成するときに、仮想ネットワークを選択するオプションがあるのですが、仮想ネットワークを新規に作成してしまいました。先で作成した仮想ネットワークでローカルネットワークゲートウェイと対応付けしているため、新規のネットワークだとVPN通信ができません。失敗でした。
最後の3ですが、これは単純に無知でした。オンプレ同様にWindows Server上のネットワークアダプタで固定IPを設定したのですが、ネットワークエラーを起こし、通信が取れなくなりました。調べてみると、IPやDNS指定などネットワーク設定はAzure Portalのサービス側で設定しないといけなかったのです。
こちらがAzure Portalの固定IP設定画面です。
DNSはこちらで指定します。
ドメコンをハイブリッド構成にする
ADのサイトとサービスで、新しいサイトとクラウドのローカルサブネットを追加し、ドメコンをハイブリッド構成にします。ここはオンプレと同じ要領です。
ここでは、仮想マシン上にをADを作成していますが、AzureにはActive Directoryのドメインの機能をPaaSで提供する、Azure Active Directory Domain Services(以下、AADDS)があります。ではオンプレのADをAADDSに移行できるのでしょうか。
正解は一部移行できますが、完全にはできません。オンプレADをAADDSに移行する場合、幾つかの手順を踏みます。
- Azure側のAADDSでドメインを作成する
- オンプレ側でAzure AD Connectサーバーを構築する(ドメコンと共存できない)
- Azure AD ConnectサーバーとAzure ADを同期させる
- Azure ADに同期されたユーザーをAzure AD Domain Servicesでドメインユーザーとして利用する
しかし、Azure AD Connectから同期できるオブジェクトに制約があります。下記のオブジェクトは同期することができません。
- GPO
- コンピューターオブジェクト
- OU
なので、オンプレADをAADDSに移行後は、足りない分を手動でカスタマイズしないといけません。もちろんAzure AD ConnecとAzure ADでは信頼関係が結べないため、並行期間という選択肢はありません。完全に独立した別個のドメインとなるため、エイヤで一気に移行となります。もし同一ドメインを継続利用したい場合、DNSレコードの書き換え等、ドメイン移行業務も発生します。
つまり、AADDSのPaaSサービスは、オンプレからのドメコン移行には向かないという事です。サーバーレスでクラウド完結型のドメコンを新規に立てたい場合は重宝するでしょう。
プライマリドメコン(FSMO)の役割を委任する
プライマリのドメコンにはセカンダリにはない、特別な役割があります。
- スキーママスター
- ドメイン名前付けマスター
- PDC
- RIDプールマネージャー
- インフラストラクチャー マスター
なぜこれがプライマリにあるのか。ドメコンが沢山ある環境では、直ぐには同期が行き渡らず不整合を起こし、サーバーやコンピュータで通信や認証のエラーを引き起こす恐れがあります。それを防ぐため、最新の情報は常にプライマリが保有し、何かあればプライマリドメインを参照する約束になっています。プライマリドメインはFSMO(操作マスター)と呼ばれる理由です。
従って、この役割を委任すればセカンダリがプライマリに昇格します。
具体的には、CMDでコマンドを打ち、各役割をセカンダリに転送しますが、時刻同期をしていなかったため、オンプレとクラウド間に時差が生じ何度か失敗しました。操作手順はこちらのブログを参考にさせて頂きました。
役割委任の前は、オンプレの2008サーバーにFSMO(操作マスター)でした。
委任後はクラウドの2019サーバーにFSMO(操作マスター)が移行されました。
オンプレサーバーを停止しクラウドのシングル構成を確立
FSMOの委任が完了したら、オンプレにあるPCのDNSをクラウドADのみに向け、オンプレADをシャットダウンします。シャットダウン後も内外のネットワークに接続できれば成功です。お疲れ様でした。
まとめ
今回は完全自費で検証してみましたが。発生した費用は約30,000円と高い授業料になりました(YamahaのVPNルーターが約15,000円、Azureのサブスクリプションが約15,000円)。。
Azure料金内訳をみると、興味本位で作成したAzure AD Domain Service、大容量のプレミアムSSDが料金を圧迫し、無料枠の¥22,500を超過してしまいました。皆様もクラウド利用の際はご注意ください。